ロジスティクス・レビュー

第317号 買い物弱者のための宅配サービスと物流-下:事例編(買い物バス、ネットスーパーなど) (2015年6月11日発行)

執筆者  浜崎 章洋
(大阪産業大学 経営学部商学科 教授)
    執筆者略歴 ▼

  • (略歴)
    • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
    • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
    • 日本物流学会理事。大阪市立大学、立命館大学、龍谷大学の非常勤講師。
    • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
    (著書)
    • 「ロジスティクスの基礎知識」(海事プレス社)
    • 「ロジスティクス・オペレーション2級」(共著、社会保険研究所)
    • 「Logistics Now 2005」(共著、輸送経済新聞社)など

目次

前号(2015年05月26日発行 第316号)より

  前号の移動販売車と買い物代行に続き、本稿では買い物弱者対策の事例を紹介する。日常の買い物が不便な「買い物弱者」の対策には、さまざま方法がある。例えば、生協等による共同購買・個配のサービス、移動販売、買い物代行などである。また最近では大手スーパーや地域の食品スーパーなどが参入しているネットスーパーなどがあげられる。本稿では、買い物バスとネットスーパーなどの事例について紹介する。

【買い物バスとは】

  買い物バスとは、小売業や商店街などが、地域を巡回するバスを運行し、買い物客を送迎するというものである。28名程度が乗車できるマイクロバスもあれば、7~8名が乗車できるワンボックス車の場合もある。巡回するルートや時間は予め決まっているが、路線バスのようなバス停はなく、利用者はバスの運転士に合図して乗せてもらう。また、降りる際は車内で、「どこどこで降ろして」という風に声をかける。常連さんになると、わざわざ降ろす場所を言わなくても、運転士さんがいつもの場所で停車してくれる。余談ながら、筆者が幼稚園児のころ、少し離れた市場が買い物バスを運行しており、我が家の近くの道を巡回していた。夏休みなどに祖母と一緒に買い物バスに乗り、市場で買い物をしたことを今でも鮮明に覚えている。
  さて、買い物バスを利用する際は、乗車のときに買い物をしたレシート、あるいは当該店の会員カードやポイントカードを見せる。利用料は筆者の知る限り無料である(有償にすると旅客自動車運送事業となり、事業申請や許可が必要となる)。買い物バスをマイクロバスにするかワンボックス車にするかは、利用者数と経費の兼ね合いである。
  高知に本社がある中堅スーパーB社の買い物バスの事例を紹介する。65歳以上の人口の比率を高齢化率と呼び、厚生労働省は毎年調査を実施している。直近の平成25年の日本の高齢化率は25.1%と過去最高で、国民4人に一人が高齢者ということになった。そのなかで、高知県の高齢化率は31.1%と秋田県の31.8%に次いで、全国2位である。
  B社のB店舗は買い物バスを運行し買い物弱者対策を実施している。きっかけは、B店の商圏にある別の地元スーパーが撤退したことにより、買い物が不便になった地域の顧客からの要望であった。買い物バスがスタートするまで、買い物が不便になったその地域の高齢者たちはタクシーを利用してB店まで往復していたが、年金生活者には金銭的な負担が大きく、B店に対して日増しに買い物バスの要望が高くなり運行を決断したという。
  実際に運行を開始するまでには、買い物バスのルート、停車スポット、時刻表を決めるため、関係者で何度もミーティングを重ねた。そして決定した後は当該地域の町内会の回覧板で住民に告知した。現在、買い物バスは、9人乗りのワゴン車で地元のタクシー会社に業務委託している。月・水・土の週3日、3台が3コース、一日10~12便運行している。1コースの所用時間は、20~30分程度で、コースのルート上であれば、手を挙げて運転士に合図をするとバスは停車して乗車できる。また、いくつかの停車スポットも設け、時間を決めてそのスポットで一時的に停車し、乗降できるようにしている。利用者の95%が60歳以上、週3回とも利用しているのは75%、月間で延べ約1700名が利用している(年間約2万人)。来店時に利用されるのが月間約800名、退店時に利用されるのが月間約900名である。退店時のみ利用される方は、往路は家族の車やタクシーで病院に通院したあとに店舗に立ちよる、あるいは家族が自家用車で出勤する際に同乗して来店しているなどである。利用者のうち、95%が女性という。また、買い物バス利用者の80%が、一回あたりの購入金額が3,000円以上という。一般的なスーパーの客単価が2,000円弱ということと比較して50%以上高い。買い物バスの運転士の方々は、利用者と気さくにお話しをされているようであるが、「タクシー代の分も買っているよ」という声を聞くことが多いそうだ。

【買い物バス運行のメリット】

  買い物バス3台分の月間運行費より、利用者数と客単価と利益率から算定した利益額を引くと、計算上は赤字とのことである。赤字額がさほど大きくないのは、買い物バスを運行しているタクシー会社の請求金額が格安であるということも触れておきたい(金額はお伝えできないが、一台あたりの一日のチャーター料はかなり安い)。いまのところ、買い物バスの運行に対して、県や市町村からの補助金はないが、赤字でも継続できているのは、B社およびタクシー会社の地元に貢献したいという熱い思いであると思われる。収支的には赤字であるが、買い物バスは今後も継続する予定であるという。
  さて、B店にとって、買い物バス運行のメリットは、①天候や気温による来店者数や売上の影響が小さくなった ②お客様同士、あるいはお客様と従業員のコミュニケーションが高まった ③買い物がお客様の運動やリハビリになり、お客様が元気になった ④お客様が自分の目で商品を選べ、買い物を楽しめる などが挙げられる。
  ただし、現行の買い物バスは曜日が限定され時間の制約も大きいため利便性は高くないかもしれない。また、あくまでも外出できる健康な方のみが利用対象となっている点も懸念事項である。よって、B社では、今後は買い物バスに乗れなくなったお客様を対象に、買い物代行や家事手伝いなど生活支援のサービスを検討しているという。

【ネットスーパー】

  ネットスーパーは、インターネット等を活用して受発注、自宅に届けるサービスのことである。日本では、西友が2000年にサービスを開始した。いまでは、イトーヨーカ堂、イオンなどの大手小売業だけでなく、地元の食品スーパーも参入し日本全国で100社程度がサービスを提供している。市場規模は約1000億円で、競争が厳しい小売業界のなかでは利用者が増え成長している分野である。ネットスーパーの主な利用者は、30~40代の有職の主婦で、インターネットやスマホから発注することが多い。午前中の発注分は当日の夕方に配達、午後以降に発注したものは、翌日の午前中以降の配達というのが一般的なリードタイムである。生協の共同購買や個配は、前週発注したものが今週配達という一週間のリードタイムと比較すると、利用者の利便性は高いと言えよう。
  ネットスーパーの配送料は一回あたり300~500円程度であるが、一回の注文で3000円以上購入の場合は送料無料という場合が多い。筆者もネットスーパーを何度も利用しているが、雨の日や、米や飲料など重量物を購入するときは、とても便利である。
  高齢者等の買い物弱者にとっても便利なサービスであるが、インターネット等による発注方法が、パソコンを使い慣れていない方々には利用の妨げになっている。高齢者向けなどに電話受注を受けているネットスーパーもあるが、受注担当者の人件費負担が大きくコストアップになってしまう。注目されているネットスーパーではあるが、この事業は、ほとんどの企業で赤字と言われている。実質的に無料になっている送料、受注処理や店舗内での集品作業の人件費の負担を考えると赤字の理由が理解いただけるだろう。

【高齢者にも優しいC社の買い物支援】

  愛媛に本社があり中四国を中心に展開しているスーパーC社では、高齢者にも優しい買い物支援を行っている。ひとつは、C社の電話オペレーターが顧客の選んだ日時に毎週電話して受注し商品を宅配するサービスである。利用者はカタログ等を見ながら電話で発注し、翌日に商品を配達するというサービスである。現在、中四国4県9店舗で実施している。受注を待つのではなく、C社から電話をかけることにより、オペレーターの待ち時間が削減され効率化が図れる。また、毎週、決まった日時に電話をかけ、もし、3回電話しても電話にでない場合は親族に連絡し安否確認いただくという。また、日本郵便(JP)と連携し、カタログ送付から注文書の回収(ネットでの発注も可)、商品の配達をJPが行うというサービスもある。ネットスーパーではパソコンやスマホで注文しなければならないが、C社のこれらのサービスは、パソコンやスマホが苦手な高齢者でも電話や注文書での注文が可能なので喜ばれているという。どちらのサービスも買い物代行料が一回200円程度、配送料が100円程度である。

【むすび】

  これまで、移動販売、買い物代行、買い物バス、ネットスーパーなど、小売業や行政が取り組んでいる買い物弱者対策の調査をさまざまな地域で行ってきた。採算面では厳しいが、各社、各団体のご担当者は一生懸命取り組んでおられ、住民の方々が喜ばれている姿を見て、何度も胸が熱くなった。
  ご多忙のなか、調査に協力いただいた関係各位、ならびに一緒に研究をしている「物流まちづくり共同研究会」のメンバー各位に御礼申し上げます。

(本稿は、日本ボランタリーチェーン協会機関誌『ボランタリーチェーン』に連載中の「高齢化社会を迎え、流通業は買い物弱者対策にどう取り組むべきか!」の原稿を加筆修正、再構成したものである)

以上


(C)2015 Akihiro Hamasaki & Sakata Warehouse, Inc.


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