ロジスティクス・レビュー

第295号 メコン地域の国際陸送協定の現状(2014年7月3日発行)

執筆者  吉本 隆一
(オフイス・ロン代表)
    執筆者略歴 ▼

  • 略 歴
    • 1980年法政大学大学院博士課程経済学単位終了。経済理論・財政論
    • 1983年から2005年まで(財)日本システム開発研究所。
    • 2005年から2013年2月定年退職まで日本ロジスティクスシステム協会、主幹研究員
    主な研究開発実績
    • 国際輸送システムの調査研究(基盤整備、パフォーマンス分析、国際陸送制度)
    • 物流情報システムの標準化・調査研究・技術開発(ITS、AIDC、輸配送システム等)
    • 公共事業整備に伴う社会経済的影響評価
    • 立体道路整備、道路一体型物流施設整備等の複合的事業手法開発
    • 物流拠点整備・共同配送等、物流効率化・高度化事業手法の調査研究等

目次

はじめに

  タイとラオスを接続する第2メコン橋が2006年12月に完成し東西回廊による陸送(バンコク・ハノイ間1,575km)が期待されてから早くも7年以上が経過している。その間に、第2メコン橋の北側に、タイ・ナコンパノムとラオス・ターケーク間の第3メコン友好橋がタイの援助で2011 年11 月に開通(バンコク・ハノイ間1,429km)した。また、第1友好橋(1994年完成)であるビエンチャン・ノンカイの北側、南北回廊に沿ってタイ・中国の援助で第4メコン友好橋(タイ・チェンコン)が2013年12月11日に開通した。
  1992 年に、メコン地域の統合と経済発展の促進を目的としたアジア開発銀行(ADB)のイニシアティブにより、大メコン圏(GMS)経済協力プログラムが発足し、国際陸送協定(CBTA)の整備も進められた。ここではその現状を紹介する。

GMS/CBTA

  メコン地域における国際陸送は、従前から二国間協定をもとに行われており、現在でも多くの陸送は二国間協定の枠組みで行われている。GMS/CBTAは、メコン地域における包括的な国際陸送の枠組みを定めており、運送業者の相互乗り入れに関わる交通権から、基盤整備、交通標識、交通規則、車検制度にわたる整合性の確保を求めている(図1)。

図1 CBTAの枠組み

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  CBTAは、1999年のベトナム・ラオス・タイの3カ国間の協定に始まり、2001年にカンボジア、2002年に中国雲南省、2003年にミャンマーが加わって今日のGMS/CBTAの枠組みとなった。協定本文は9部、44条からなり、関連する付則17条、適用ルート等を定めたプロトコル3条の構成となっている。
  その署名と批准の経緯は、図2の通りであり、本文は批准されたものの、タイとミャンマーでは付則・プトロコルに未批准の箇所が残されている。

図2 CBTAの署名・批准状況

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  CBTAの全面適用には基盤整備も含めて時間がかかるため、CBTAの先行的適用を図るための二国間の覚書(MOU)が作成されている。CBTAのプロトコルでは、11ルート15国境(両側の都市は30都市)が適用対象であるが、MOUでの先行的適用は、5国境(10都市)である。

CBTAによる改善目標

  現状の国際陸送では、図3のように、一方の国の車両(空車)が相手国のバッファーゾーンまで入って、相手国からの貨物を積み替え、自国に戻るという方式が一般的であり、陸路で国境施設が隣接する地域で、出国・入国及び通関や検疫の手続きが連続し、従前から国際陸送の円滑性・迅速性を阻害しているとの指摘が行われていた。

図3 現状の国際陸送における積み替え

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  CBTAでは、隣接地域の一方に共同管理区域を設け、一箇所で輸出入手続きを処理するシングル・ストップ・インスペクション(SSI)や複数の行政窓口を集約するシングル・ウインドウ・インスペクション(SWI:このシングル・ウインドウは、必ずしも電子化を意味していない)の制度を提案しており、先行的適用に関するMOUでは、段階的整備の最終系として図4のような仕組みを予定している。

図4 SSI及びSWIの例

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その後の進捗状況

  CBTAの優先的適用に加えて、中継通関制度CTSが2009年6月に試行され、この枠組みのもとで第2メコン橋を利用した東西回廊において、ベトナムとタイの車両による積み替えなしでの車両の相互運行も試みられている。適用されている国境は限定的であるが、以下のような改善がみられる。
  なお、2011年には東西回廊の範囲を拡大し、3ヶ国の首都とベトナムのハイフォン港、タイのレムチャバン港を含めることが合意された。
  シングル・ストップ・インスペクションは、同じく第2メコン橋利用の東西回廊のベトナム側国境、ラオバオで実施され、ベトナムとラオスの通関スタッフが共同で車両・貨物検査を行った。

図5 ベトナム国境ラオバオでの共同検査風景

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  また、カンボジアとベトナム、カンボジアとタイの間で商業的交通権の相互承認が行われ、カンボジアとベトナムの間では貨物・旅客合わせて台数制限が300台まで拡大され7箇所の国境で相互乗り入れが可能となり、カンボジアとタイの間では両国各40台の枠内での相互乗り入れが可能となり、2012年6月にはポイペト国境で開通式典が行われた。
  中国とベトナムの間では、走行区域・台数に制限があるものの、相互乗り入れに関する道路協定が締結され、ハイフォン・ハノイ・昆明間とハノイ・南寧・シンセン間の3省にわたる輸送が可能となり、2012年8月にはその開通式典が行われた。
  実際の包括的適用には、数多くの課題が残されているものの、ゆっくりと改善が進められている。また、長距離の国際陸送需要の伸びは、海運条件の改善も見られるため、不明確であるが、国境の経済特区への企業立地の展開等、国際ルート沿道での経済開発が進んでおり、短・中距離帯での輸送需要は増加しており、国際空港や国際港湾周辺の開発から、ようやく内陸への経済波及効果が見られるようになり、今後の進展が期待されている。

以上



(C)2014 Ryuichi Yoshimoto & Sakata Warehouse, Inc.


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