ロジスティクス・レビュー

第294号 配送運賃の削減(2014年6月17日発行)

執筆者 平野 太三
(有限会社SANTA物流コンサルティング 代表取締役社長)
 -物流改革コンサルタント Dr.SANTA-
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 昭和61年 甲南大学法学部卒業
    • 同年   ユーザックシステム株式会社入社
      物流担当システム営業として100社を超える物流現場分析に携わる。
    • 平成12年 Dr.SANTAのネーミングで物流コンサルティング(物流コスト削減、物流指標の作成、物流サービス向上、物流プロジェクトの運営)を開始。
    • 平成15年にユーザックシステム株式会社を退社後、有限会社SANTA物流コンサルティングを創業。
    • 講演回数年間50回。(講演受講者数10000人突破)
    所属団体
    • 日本物流学会正会員
    主な論文、著作
    • 「3ヶ月で効果が見え始める物流改善【現状把握編】」(㈱プロスパー企画)等
    • 包装タイムス、物流ニッポン、マテリアルフロー等で「Dr.SANTAの物流講座」の連載を行う。

目次

1.運送会社の判断基準

  配送運賃(お客様に納品する運賃)は物流コスト(物流人件費、保管費、輸送費、包装資材費、物流に関連する情報システム費、水道光熱費等)の約半分を占めている場合が多いが、その大きな物流費である配送運賃削減の取り組みが不充分の企業が多い。配送(お客様へ納品)は大多数の企業が自社便を使用するのでなく、運送会社に委託をしている。今までの配送運賃削減は運送会社に値下げ要求をすることが多く、抜本的な改善が出来ていない場合が多かった様に思われる。配送運賃の削減はこの単価交渉だけではうまくいかない。昔はともかくとして、最近の傾向としては燃料の値上げ、及び、ドライバー不足による人件費の高騰により、配送運賃の値下げどころか値上げの傾向が強いからである。
  配送運賃の削減の話に入る前に、配送担当者の運送会社の選定方法から整理をしておきたい。判断基準は4つある。

図1 出荷時の運送会社判断基準

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  第一の選定条件は、お客様からの運送会社指定(指定便)である。指定便の理由は色々とあるが、「納品時間(時間指定)」「荷扱い」「共同配送」により運送会社を指定している傾向が多い。
  第二の選定条件は、運送会社の集荷時間(運送会社荷渡し時間)である。お客様からの受注は色々な時間帯に入るから、緊急受注(当日出荷の受注締め時間を超えた受注)の場合は夕方から出荷を開始することもある。早い時間に出荷梱包を完了できれば複数の運送会社の中から選択できるが、出荷梱包が遅くなれば運送会社の集荷が既に終わり、選択肢が無くなる。
  第三・四の選定条件は、出荷方面と物量である。一般的に運送会社は得意な方面、得意な物量がある。個建便(1個当りの運賃契約)はBtoC(企業→一般消費者)の仕組みからスタートしているため、近代的な物流センターで自動仕訳等の設備が充実しているため、結果として1個・2個の荷物を低価格で扱うことが可能である。また、物流センターの立地場所よって変わるが、集荷時間も遅くまで対応している場合が多い。一方、路線便は容積(才数)や重量の契約になり、物量が多ければ1個当りの運賃は低価格で抑えることができる。企業の得意先の納品条件や物量により、企業はこの運送会社の組合せを有効に活用しているのである。

2.配送運賃の把握

  配送担当者は運送会社を得意先サービスと配送運賃で選定する必要がある。配送担当者としては現在使用している運送会社を変更する事は、遅納が原因でお客様からのクレームが発生する可能性があるため非常に勇気がいる。しかし、物流プロジェクトが営業部門も参加する全社プロジェクトであれば、運賃の削減という視点では運送会社の変更も可能である。1個当り数十円の運賃削減であったとしても年間100万円を超える可能性もある。
  配送改革は現在の運賃の把握からスタートする。図2の様に運送会社別に地域別物量別に比較表を作成する。

図2 運送会社別地域別運賃比較

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  この表の目的は、運送会社を変更した時に配送運賃がどの程度下がるかを検証するためのものである。配送運賃体系を熟知されている方でこの表を作成しても意味が無いと思われる方もおられるだろう。その理由は、個建便と路線便は運賃体系が違うからである。路線便は軽量商品を取り扱う場合は容積(才数計算。1才=1立法尺=0.027818㎥)、重量商品を取り扱う場合は重量で運賃が決定するからである。この表は1個当りの表になっている点を注目して欲しい。この比較表を作成する時、出荷ケースの1個当りの物量(サイズ、重量)はさまざまであるため、多く使用する箱サイズ(もしくは重量)をいくつか選定し、サイズ(もしくは重量)別にこの表を複数作成するのである。
  次に地域別物量別で運送会社の運賃を比較すると、どの運送会社が一番安いか判明する。この表をもとに、実際の運送会社の選定が正しいかどうかを検証する。

3.配送運賃削減の手順

  運送会社の選定間違いの判断は、運送会社の請求書で検証する。通常は市区町村単位で納品先と物量が記入されているので、簡単に判断できる。結果として高い運送会社を選んだ理由としては、「①運送会社選定基準が無かった」「②得意先指定便」「③緊急出荷」「④追加受注」等が考えられる。

①運送会社選定基準
  安い運送会社が判明した場合、次に得意先納品条件の有無の確認が必要である。時間指定、午前納品がその例である。安い運賃の運送会社で得意先納品条件が満足できるのであれば問題は無いが、駄目な場合は検討が必要となる。運送会社に「納品時間は大丈夫ですか?」という聞き方をするのではなく、「過去のデータでどの程度の納品率ですか?」と聞けばよい。あとは実行して駄目な場合は元に戻せば良いという考えでやって欲しい。また運送会社の変更は、主要得意先から検討を開始して欲しい。トラブルが起こると大変なため事前準備は必要であるが、物量が多ければ配送運賃の削減金額も高いからである。

②得意先指定便
  得意先から運送会社を指定してくるので、運送会社変更の余地が無いと思っている配送担当者が意外と多い。私が「その得意先はどうしてその運送会社を指定しているのですか?理由を教えてください。」と質問すると「わからない」という答えが返ってくる。通常の指定便の理由は、「共同配送」「受入れ時間(午前中に受入れ作業をしたい)」「荷扱い」の3つのパターンが多い。共同配送は運賃が安い事が多いため運送会社の見直しを検討する必要が無いが、受入れ時間は検討する価値は充分にある。仮にお客様から指定便を3年前に依頼されたのであれば、その当時は午前納品ができる運送会社は限られていたかもしれないが、運送会社も営業所の見直しにより年々物流サービスは変わっている。ただ、企業が毎年この様な配送方法の検討を行っていないのであれば、他の運送会社ができる様になったかもしれない。また、現在使用していない運送会社でこの条件をクリアできる運送会社があるかもしれない。一番早いのは得意先の物流担当者に「入荷時にどの運送会社が来ていますか?」と質問をすれば良い。得意先に教えてもらった運送会社で運賃比較をすれば可能性が一挙に見えてくる。あと荷扱いも「昔は荷扱いが悪かったが、今はどうだろう」という視点で考えて検討して欲しい。

③緊急出荷
  緊急出荷とは、当日出荷の受注締め時間を大幅に超えて受注し、当日出荷をする物流サービスである。この緊急出荷はあるお客様が1年に1回あるかどうかというものであれば、勿論出来る限り対応しなければならない。ただ受注時間に関してあまり無関心でいると、毎日緊急出荷の得意先が増えてくる。運送会社の荷渡し時間の制約があるため、緊急出荷が運賃増加の原因のひとつであると言える。

図3 緊急出荷運賃分析表

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  緊急出荷状況の可視化が必要である。どの様な原因で緊急出荷になったのか、運賃がどの程度高くなったのかを把握する事から始める。原因が社内にあれば改善により緊急出荷が減少できる。特定の得意先で緊急出荷が頻繁に発生するのであれば、ねばり強くお客様に交渉を続ける必要がある。過剰サービスを継続すると、結果としてお客様の納入価格を上げることになる。但し、業界が必要とする物流サービスはこの限りでない。

④追加受注
  追加受注とはお客様から受注を頂き、何時間後に追加で受注が入ることをいう。追加受注分をまとめて出荷しなければ運賃が高くなる事もある。追加受注のお客様は大体決まっているため仮置き場を設置し対応すれば良い。

  この様に運用ルールを見直すことで配送運賃が削減できる。また、物流システムを導入し、出荷スピードが早くなることで運賃が削減できることも多々ある。この視点でも検討して頂きたい。

以上



(C)2014 Taizo Hirano & Sakata Warehouse, Inc.


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