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マーケティング

第291号 通販物流-ビジネス成功への必要条件-(前篇)(2014年5月8日発行)

執筆者  浜崎 章洋
(大阪産業大学 経営学部商学科 特任教授)

 執筆者略歴 ▼
  • (略歴)
    • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
    • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
    • 日本物流学会理事。大阪市立大学、近畿大学、東海大学、龍谷大学の非常勤講師。
    • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
    (著書)
    • 「ロジスティクスの基礎知識」(海事プレス社)
    • 「ロジスティクス・オペレーション2級」(共著、社会保険研究所)
    • 「Logistics Now 2005」(共著、輸送経済新聞社)など

 

目次

【はじめに】

  高齢化に伴う「買い物弱者」の増加、インターネットやスマートフォンの利用者の拡大などにより、宅配ビジネスや通販が注目されている。店舗に行かず自宅等から発注し、商品を自宅等に届けてくれる通販は、今後ますます拡大していくことが予想される。多くの企業が、その波に乗って通販ビジネスの事業展開を検討していることだろう。
  通販を成功されるには、魅力ある品揃え、効率的かつ効果的な宣伝・広告媒体などのプロモーションも重要だが、お届けする「物流」のことも忘れてはならない。ローコストで高レベルの物流を構築することが通販ビジネス成功のための1つのキーファクターになることは間違いない。
  とはいえ、これまで通販企業は、ヤマト運輸や佐川急便などの宅配会社に貨物を渡せば、あとは彼らがなんとかしてくれると考えていたかもしれない。しかし、今は通販企業が「通販物流」について、再度、考える時期にきたのではないだろうか。
  それは少子高齢化による労働人口の減少に関係する。トラックのドライバーは、2015年に14万人、2020年には20万人不足する(全日本トラック協会調査)と予想されている。また、物流センターの主戦力である優秀で安価なパート社員も、今後は確保が難しくなると思われる。その理由は、配偶者控除の廃止、いわゆる「103万円の壁」が65万円まで低くなることで、パート社員がフルタイムの仕事にシフトし、物流センターで女性パート社員を確保することが難しくなることが予想される。
  通販ビジネスが拡大するにも関らず、宅配便のドライバー、物流センターの作業者を確保することが難しくなるのだ。つまり、今後は、通販ビジネスの拡大や参入を検討する場合、「物流をどうするか!」ということが大きな課題になってくる。

【通販ビジネスの市場規模】

  通販は毎年市場規模が拡大している成長産業である。日本通信販売協会の調査によると、平成23年度(2011年度)の市場全体の売上高は推計5兆9000億円で前年比9.0%増である。平成13年度(2001年度)の売上高が約2兆4900億円であるから、この十年間で市場規模が二倍になっている。
  そのなかでも、アマゾンの成長は群を抜いている。日本には2000年に進出、当時の売上高は約30億円であったが、2012年には7300億円と約十年で売上がなんと約250倍になっている。余談ながら、通販の一オーダーの平均単価(約1.1万円)、アマゾンの売上7300億円、受注や物流センターは、365日24時間フル稼働していると仮定して一秒あたりの受注数を計算してみよう。
<1日あたり、1時間あたり、1分あたりの売上と受注件数>
7300億円÷365日 = 20億0000万0000円/日…①
① ÷ 24時間 =   8333万3333円/時間…②
② ÷ 60分 =    138万8889円/分…③
③ ÷ 60秒 =     2万3148円/秒
  毎秒、2万3千円の注文がある計算となる。通販の一件の平均受注金額約1.1万円とすると、一秒あたり約2件のオーダーが入っていることになる。あるいは平均受注金額を5千円とした場合、一秒あたり約5件の受注ということになる。
  毎秒2~5件のオーダーを受注し、在庫を引当て、受注件数と作業進捗から出荷日を特定するということに必要な作業量や処理量を想像できるだろうか。筆者の個人的な見解であるが、アマゾンは、通販会社というよりも、「物流&IT」の会社と思っている。

【通販への不満】

  筆者は通販のヘビーユーザーである。職業柄、本をたくさん購入するが、そのほとんどはネット通販を利用している。また、出張の際の飛行機、新幹線、ホテルの予約も、パソコンやスマホを利用している。東京に単身赴任していたときは、買い物に行く時間がなく、通販をよく利用していたが、なかなか荷物を受け取ることができずに困っていた。単身者用のマンションの宅配ボックスはいつもいっぱいで荷物を受け取ることができず、不在者票に電話して、宅配便の方に迷惑をかけて夜遅くに再配達をしてもらっていた。不便に感じていたのは筆者だけではなかったようで、一部の通販企業の荷物がコンビニで受け取ることができるようになった。このときは本当に嬉しかった。このサービスを開発し、運営してくれている通販企業、宅配会社、コンビニに感謝している人は多いのではないだろうか。リアル店舗へわざわざ買い物に行かなくても、自宅や事務所にいながら買い物ができ、また希望する場所まで届けてくれる通販は本当に便利である。ただひとつ、便利でないのは、その場で商品を受け取れないことだ。リアル店舗での買い物であれば、ほとんどの場合、その場で商品を受け取ることが出来るが、通販の場合は、早くて翌日、あるいは2~3日後ということが多い。リアル店舗と違い、その場で商品を受け取れないことが、通販の一番の弱点である。
  通販に対する不満で、いつも上位にくるのが、「いつ届くかわからない」というものだ。多くの通販会社は配送に宅配便を利用しているが、一般的な通販ユーザーにとっては、平日の昼間は会社や学校に行っているし、土日は友人や家族と外出する予定があるだろう。いつ来るかわからない宅配便を待つのは、本当に苦痛である。
  社団法人日本通信販売協会のこれまでの調査結果からも、消費者の通信販売への不満に、①品切れ ②納期遅れ ③誤配送や配送中の破損などが上位に上がっている。
  さて、本稿をお読みいただいている通販会社の経営者や社員、あるいは通販物流を担っている物流会社の方々は、「いつ届くのか分からないのは、宅配便会社のせい」だと思っていたら、それこそ、大きな間違いである。
  納期確約や注文充足率向上など、一般的な小売業では当たり前になっていることが、なぜ、通販ではできないのであろうか?
  それは多くの通販会社が、物流やロジスティクスの重要性を理解していないことが原因と筆者は考えている。通販物流の課題を物流とロジスティクスの視点から問題提起したい。

※中篇(次号)へつづく



(C)2014 Akihiro Hamasaki & Sakata Warehouse, Inc.

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