ロジスティクス・レビュー

第290号 東アジアや東南アジアをひとつの物流エリアとして考えよう(2014年4月15日発行)

執筆者  坂 直登
(坂技術士事務所 代表)
    執筆者略歴 ▼

  • 会社名
    所属/役職
    • 代表
    略歴/専門分野
    • 1973年 武蔵工業大学工学部経営工学科卒業(現東京都市大学)
    • 1973年 センコー入社 物流コンサルティング担当
    • 1985年 技術士(経営工学部門 専門ロジスティクス)
    • 1989年 流通システム研究所 課長
    • 1991年 旭化成㈱経営計画部出向
    • 1996年 経営戦略推進室 部長
    • 1997年 情報推進部 部長
    • 2001年 第一営業本部 システム担当部長
    • 2003年 東日本営業本部 3PL担当/教育担当部長
    • 2005年 事業開発本部 副本部長
    • 2006年 ロジスティクスソリューション事業部 副事業部長
    • 2008年 ロジ・ソリューション株式会社 取締役
    • 2010年 ロジ・ソリューション株式会社 常務取締役
    • 2011年 坂技術士事務所 代表
               技術士包装物流会理事
               日本物流学会会員
               ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト
               「ロジスティクス・オペレーション2級及び3級」共同監修、執筆

目次

(1)はじめに

  東日本大震災から間もなく3年になる。私事で恐縮だが、私の故郷は福島の会津であったので辛うじて放射能の被害は最小限で済んだものの風評被害は裏磐梯の五色沼、表磐梯の野口記念館から各温泉や会津若松にまで及んでいる。津波や原発事故に関するTV放送はほとんど見て、全てビデオに残してある。その一つにGEの福島第一原発設計者がそこに重大な欠陥があることを内部告発し、退職後に日本に告発内容を送っていたが結果的には黙殺されたという話があった。大津波の可能性にしても、予備電源の配置問題についても事故以前から指摘していた者は存在していた。メルトダウンが既に起こっていると米国が把握していたのにも拘わらず当事者の日本政府はその後も呑気な発表を続けて国民を危機に陥れた。SPEEDIの発表遅れも然りである。それによって国民の被害は拡大した。しかし予期するのは当時、不可能だったとして責任を免罪し、今日までずっと同様なことが繰り返されてきている。

  1984年に出版された「失敗の本質」や1993年に出版された「頭脳なき国家の悲劇」を思い出した。特許取得などの個別技術的なものは日本が世界をリードしているのに拘わらずマネジメントにおいては、先進国で大きく遅れを取っている。それは国民利益のための合理性追求より、官僚的組織原理や自己組織の空気を読んだ属人的関係性によって意思決定がなされてしまうというものだ。
  今年のJILSの賀詞交歓会でトヨタ自動車株式会社の張名誉会長の新春講演会の話を聞かれた方も多いと思う。ドラッカーの来日講演(1996年か)で、日本企業の中でグローバル企業と言える企業はどこかという質問があり、気になって米国までドラッカーを訪ねてトヨタについて意見を聞きに行った時の話があった。トヨタをどう思うかという質問にドラッカーは「トヨタはグローバル企業どころか、日本の企業でさえなく、愛知の会社だ」と言われてショックを受けたという。それは欧米の一流大学に社員を派遣してMBAや博士号を取って戻ってきた優秀な社員の多くを辞めさせてしまう。そのような会社はローカルな会社ではないかというものだった。
(補足)現在のトヨタはそのようなことはないとのことであった。

(2)国内物流データを見ていてもロジスティクス戦略は立てられない

  日本国内の物流関連データの推移を分析してみると1991年のバブル崩壊以降、悲観的な数値がほとんどである。それを端的に示している数値が国内貨物輸送量推移であり、そして国際海上コンテナの取扱量推移であろう。前者は輸送トン数で20%以上も減少し、後者も東京港・横浜港・大阪港・神戸港、四港のコンテナ取扱数を合計しても、上海港の半分にも達しないし、釜山港一港にも満たない。1980年には神戸港4位、横浜港13位、東京港18位で釜山港は16位であった。現在では順に49位、40位、27位と大きく凋落し、それに対して釜山港は5位に躍進し20位以下であった上海港は1位になった。

  例外として明るい数値はネット通販などの急速な伸長がある。実店舗の販売は低迷しているが、ネット通販やネットスーパーの売上の伸びは著しい。しかし絶対量はまだ少なく国内物流業界に与えるプラスのインパクトはそれほど大きくはない。ネット通販の配送料の低料金化・無料化が進み、その物流コスト負担が配送事業者にしわ寄せされていると思われる。

図1 国内貨物輸送量推移
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図2 国際海上コンテナ港別取扱量(TEU:20ftコンテナ換算)
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  国内物流データを眺めてみてもロジスティクス戦略は発想の参考にはならない。

(3)韓国や中国の物流戦略

  それでは国際海上コンテナの取扱量を国別に分析してみよう。

図3 国別国際海上コンテナ取扱量
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図4 世界3極間の国際海上コンテナ取扱量
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  東アジアの国が上位を占めており、国際海上コンテナ輸送は今や東アジアを中心として動いているのがわかる。物流を日本一国として捉えるのではなく、東アジアや東南アジアや極東として捉える必要がある。ボーダーレスからグローバルに使われる言葉が変わったが、国内と海外という2区分ではなく、もっと広域にデータを捉える必要がある。工場立地や物流センター立地も同様で、もっと高所から眺めてボーダーレスに立地を検討する必要がある。欧州連合(EU)では28ケ国(2013年7月現在)と加盟国の拡大に伴い、物流拠点がオランダやベルギーから、より東側のドイツに立地が変化している。

  韓国は16年前から自由貿易協定に基づく物流立国を目指して、11の国際港から釜山1港を選択して、1兆3千億円を集中投資した。そして海外の港湾業者に門戸を開放し、関税ゼロ、法人税3年間ゼロ、FTA適用など思い切った戦略を取った。その結果、釜山港後背地に自動車部品下請け工場と物流センターが集積し、日本メーカーへの輸出も急増した。工場を作って物流業者を連れて行くとか育成するという発想ではなく、物流インフラを先に整備して工場立地を変えていくという発想転換である。自国の輸出・輸入貨物だけでなく、トランシップ貨物を積極的に呼び込む戦略である。
  中国は上海・深セン・寧波・広州・青島・厦門・大連の港湾ばかりでなく、連雲港からカザフスタン経由で欧州に繋がる鉄道網チャイナ・ランドブリッジ(CLB)の整備や高速道路網も毎年5千kmペース新設し、今や7.4万kmと世界第2位(2010年)となっている。宅配便取扱数も日本の年間34億個を超え、36億個(2011年)となっている。大学の物流関連学科は400学科以上と大量な物流関連学士を毎年輩出し続けている。米国でも100学科以下であり、日本は更にその1/10である。

(4)日本の戦略

  日本では2010年に国際コンテナ戦略港湾として京浜港(東京港・川崎港・横浜港)と阪神港(神戸港・大阪港)の5港を指定した。2011年には国際バルク戦略港湾として3大バルクで10港が指定されている。更に2011年には日本海側拠点港として26港も検討の対象となっている。このように戦略港と言いながら韓国のように釜山1港には絞り込まれていないので分散投資にならざるを得なく、中途半端な港湾とならざるを得ない。
  現在、基幹航路には8,000TEU(20ftコンテナ)以上の積載可能な大型コンテナ船が続々と登場している。これらの大型船が寄港するためには岸壁の水深が16m以上必要である。2013年5月に発注された世界最大のコンテナ船は18,400TEUで水深18m以上必要である。
日本の16m水深の岸壁は、東京港及び大阪港400m、横浜港1,790m、神戸港1,550mであるが、釜山港は16m:3,200m,17m:1,550m,18m:1,100mと日本の4大港合計より大きい。上海港などは16mが5,850mもある。そして世界最大のコンテナ船の全長は400mである。
  このまま放置しておくと、日本は固有技術では高い物流技術を持ちながら、人材を含めたインフラにおいてロジスティクス後進国に成り下がってしまうのではないかと危惧される。

(5)終わりに

  私の所属する技術士包装物流会では、包装と物流の専門技術士が会員となって毎月研究会を開催している。元々は包装の専門家が集まって当会が結成された。当会では「大震災に対応するロジスティクス」という提言書もまとめた。発災後72時間までのロジスティクスはどのようにすべきかを多面的に提案している。素人が緊急物資を大まかに仕分けるための色ラベルによる識別法やQRコードの活用なども含まれている。
  食品関係の話題も多く、その中で流通過程おいて電気冷蔵庫などを使用せずに簡易な方法で温度を2~3日間、一定に保つ方法がないかという話があった。確かに電気やバッテリーを使わずに-10℃とか-20℃とかの一定温度を保持できるという話は聞いたことがなかった。一定温度以下に保持する方法なら蓄冷剤の量に依って調整可能かと思われた。
  ところが既にその様な管理が可能な方法が開発されていた。ここでその製品をご紹介しておきたい。アイ・ティ・イー株式会社(東京本社)の”アイスバッテリー(IB)システム”という。-25~25℃の一定温度で最長72時間(温度によって最長120時間) 維持管理可能である。保冷BOXに管理すべき商品を入れて当該の蓄熱プレートをセットする。蓄熱プレートのコールドジェルの配合により一定の管理温度が決まる。蓄冷プレートは2,200回の再利用が可能である。蓄冷プレートは専用冷凍庫で8~12時間蓄冷する。非常に興味のあるシステムである。

図5 アイスバッテリー(IB)システム
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参考文献など
国土交通省HP
「ロジスティックスの基礎知識」浜崎章洋著(海事プレス社)2012年9月発行
「アジア物流と貿易の実務」鈴木邦成(日刊工業新聞社)2013年1月発行

以上



(C)2014 Naoto Ban & Sakata Warehouse, Inc.


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