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物流コスト

第278号 物流コストはもう下がらない? ~JILS物流コスト調査にみる荷主企業の取り組み傾向~(2013年10月22日発行)

執筆者 久保田 精一
(JILS総合研究所 副主任研究員)

 執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1971年熊本県生まれ。
    • 東京大学教養学部教養学科卒。
    • (財)日本システム開発研究所(シンクタンク)等を経て、現職。
    • 物流コストやロジスティクスの指標管理等、物流や地域開発等のテーマでの自主研究、委託研究、コンサルティング等を主に実施。

 

目次

  日本ロジスティクスシステム協会(JILS)では、毎年、荷主企業の物流コストを調査している。直近となる2012年度の調査結果は、2013年6月に公表しJILSホームページにも掲載している(http://www.logistics.or.jp/data/survey/cost.html)。本稿では、この調査結果を引用しながら、物流コストをめぐる最近の動向を紹介する。

<要旨>
1)物流コストは長期的に下落してきたが、近年は横ばい。燃料費や人件費などの原価アップ傾向は物流コストの削減を難しくしている。
2)世界的な資源高や増税など値上げ圧力が強まっているが、値上げ回避策として、物流コスト削減への期待が高まっている。
3)荷主としては、より幅広い施策を通じて、コスト削減に取り組むことが必要となっている。

1)物流コストは長期的に下落してきたが、近年は横ばい

  売上高に対する物流コストの比率を見ると、近年は5%弱の水準で推移している(図表1)。2012年度調査では4.72%と前年度よりも下落しているが、回答企業の入れ替わりといった外部要因により説明可能な範囲内であり、実質的には横ばいと言える。
  図表5をもとに長期的な変化をみると、売上高物流コスト比率は90年代における6%代後半の水準から、5%未満の水準へと下落してきたことが分かる。しかしながら近年はほとんど下がらなくなってきている。
  振り返ってみると、1990年頃から最近まで、物流コストを引き下げるマクロ的要因が存在したことが分かる。例えば、①規制緩和による物流事業者の参入増加と運賃の下落、②団塊ジュニア世代(1995年前後に大学を卒業)の労働市場への参加による若年労働力の供給増加、③全国的な高規格道路網整備に伴う輸送効率の向上(公共投資基本計画が1991年からスタートする等による)、④急速に進む円高(1995年に79円台に突入する等)に伴う製造業の海外移転の増加(言うまでもなく海外移転は国内における物流コストの減少につながる)、⑤同じく円高による燃料費単価の相対的な押し下げ(図表2に原油輸入価格の推移を掲載)、などである。
  これらの要因によるコスト低減の効果は、いずれも、現時点では相当程度減殺されていると考えられる。よって今後、物流コストの削減はより難しくなることが予想される。
  ただし、以上の説明はあくまでマクロ的な環境について述べたものであり、個別企業について物流コストが減らせないことを意味するものではない。実際、企業により物流効率には大きな差が存在する。図表3には、業種別の売上高物流コスト比率を示しているが、業種によって数倍の差があることが分かる。その背景には、①商品単価(一般的には商品単価が高いほど物流コストが低くなる)や、②物流サービスレベル(多頻度・小口納品などサービスレベルが高いほど物流コストが高くなる)が、業種によって異なるという事情がある。さらに、このような「条件の差」は業種間だけでなく、同業種内での企業間でも存在する。よって、個別企業レベルで、物流コストを削減する余地自体が無くなっているということでなく、運賃単価の削減など、ある意味で安直な手法に頼ったコスト削減は、今後は期待できないということである。

図表1 売上高物流コスト比率の推移

出典:JILS「2012年度物流コスト調査報告書」 2013年

図表2 原油輸入価格の推移

資料:資源エネルギー庁「エネルギー白書」を元に作成。
原点出所:通関統計等より作成

図表3 売上高物流コスト比率(業種小分類別)

出典:JILS「2013年度物流コスト調査報告書」2013年

2)世界的な資源高や増税など値上げ圧力が強まっており、値上げ回避策として、物流コスト削減への圧力が強まっている。

  さて、話を戻すと、マクロ的に見て物流コストの削減が難しくなっている。しかしながら、だからといって、物流コスト削減への取り組みが不要となるとは考えにくい。
  周知のとおり、ここ数年は商品価格を押し上げる要因が目白押しである。2014~2015年には消費税の増税が(最終決定はされていないが)予定されており、また、円安による輸入原料価格の上昇が本格的に波及することが予想される。これに加え、アジア諸国における工業化の進展と人件費の上昇が、輸入インフレの傾向をさらに強める可能性も考えられる。
  一方で国内の消費市場は飽和状態にあり、上記のコストアップ分をそのまま価格転嫁するのは容易ではなく、消費税分等の価格アップによって減少した売上を補う利益確保策が求められることになるだろう。よって、今後も引き続き、様々な切り口でのコストカットが求められると予想される。特に物流コストは「下がって当たり前」といった印象が強いうえ、「物流は付加価値を生まない」との認識が一般化していることから、コストカットのターゲットになりやすい(注1)。
  以上から、当面の間は物流コストの削減への圧力が強まることが予想される。


注1:朝日新聞デジタル「(価格のフシギ)食品値上げ、知恵で我慢 円安で原料費直撃だけど」という記事で、値上げを回避する要因の一つとして「物流費カット」を挙げている。
  http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306040814.html

3)荷主としては、より幅広い施策を通じて、コスト削減に取り組むことが必要となってくる。

  このような背景から、今後も荷主の物流部門としては物流コスト削減への取り組みの強化を求められると考えられる。その際、物流コスト削減策として、どのような取り組みが考えられるだろうか。
  JILSでは、物流コスト削減策の実施状況についても継続的に調査を行っている(直近の結果を図表4に掲載)。この結果を時系列に沿って見ていくと、荷主企業が、現在の状況下でどのような施策に取り組んでいるか、大まかな傾向をつかむことができる。
  さて、従来、コスト削減の最も重要なオプションは、「委託単価の値下げ」であったが、前述したように、マクロ要因から言って運賃単価等の削減は難しくなってきている。回答企業における物流コスト削減策の実施割合を見ても、「アウトソーシング料金の見直し」の取り組みは減少傾向にあるが(図表5)、このことからも最近の状況の変化を伺い知ることができる。
  極めて単純化すると、物流コストは、「単価」と「量(トラック台数、輸送距離数等)」のかけ算により決定される。そのため、「単価」を削減できれば、物流の効率化を図らずとも、総物流コストを機械的に削減することができる。これを裏返せば、単価が減らせない最近のような状況下では、効率化によって「量」そのものを削減することが必要となってくると言える。
  さて、物流の効率化を図る施策は様々なものがあるが、近年、取り組みが増加しているコスト削減策として次の2つが挙げられる。
  一つは、「物流を考慮した商品設計」である(図表6)。商品設計の巧拙が物流効率を大きく左右することは周知のとおりである。例えば、パレットサイズに整合性のないケースサイズのため、パレットの積載効率が下がることがある。また、段積みの高さ制限によって、トラックが満載にできない、倉庫の保管効率が下がる、といった問題も生じうる。このような問題は、商品設計段階から物流を考慮すれば避けることができるが、実際には取り組みは必ずしも進んでいない。その要因としては、メーカーにおけるロジスティクスに対する認識が必ずしも十分でないことに加え、メーカーの負担する物流コストが相対的に小さいことも指摘できる。一般に、サプライチェーン全体で発生する物流コストのうち、メーカーが負担する割合は3分の1程度に過ぎず、サプライチェーン全体にわたる物流コスト削減につながる商品設計の改善は、メーカーにとって相対的にコストメリットが小さくなる。商品設計の改善は、このような問題点があってなかなか進んでこなかった分野であるが、逆に言えば取り組みの余地が残されている分野であるとも言える。
  2点目は、「物流サービスレベルの見直し」である(図表7)。過剰な多頻度・小口配送といった不必要に高いサービスレベルは、物流コストの抜本的な削減を阻む最大の要因であると考えられる。我が国の商慣行では、買い手(発注者)ではなく、売り手が物流コストを負担するケースが多いが、一般に意志決定を行う主体(この場合は買い手)と、そのコストを負担する主体(売り手)の非同一性は、経済的非効率を生じさせる可能性が高い。この点は前項の「商品設計」のケースと同じ構造であるが、ここで生じる経済的非効率は、巡り巡ってサプライチェーン全体の効率性を阻害し、そこに参加する企業の競争力を低下させることになる。従って、全体最適の観点に立ち、改善すべきサービス条件については改善していくことが望まれている。現に図表7に見られるように、「配送頻度の見直し」とったサービス条件の改善に取り組む企業が顕著に増加している。現在のところ、サービス条件の見直しに取り組んでいる企業は日用品や食品業界等で特に目立つが、今後は、このような取り組みがより幅広い業界に拡がることが期待される。

  

以上

図表4 荷主における物流コスト削減策の実施状況

出典:JILS「2012年度物流コスト調査報告書」2013年

図表5 「アウトソーシング料金の見直し」の実施企業は減少

図表6 「物流を考慮した商品設計」の実施が上昇傾向にある

図表7 物流サービスレベルの見直しに取り組む企業が顕著に増加

出典:以上3点とも、JILS「2012年度物流コスト調査報告書」2013年を元に作成


(C)2013 Seiichi Kubota & Sakata Warehouse, Inc.

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