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物流システム

第271号GTINGLNの最新状況(2013年7月11日発行)

執筆者 小川 勝
一般財団法人 流通システム開発センター
流通コードサービス部上級研究員

 執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1997年度より財団法人流通システム開発センター勤務。
    • 1998年度より、GS1事業者コード(JAN企業コード)の登録管理業務を担当する他、1999年より、コンビニエンスストアにおける公共料金等の代理収納システムにおける、標準ガイドラインの制定や、同システムのGS1-128を利用したシステムへの移行、GS1-128システムによる標準料金代理収納ガイドラインの改定等に携わる。
    • 2012年度より、JANコード統合商品情報データベース(JICFS/IFDB)の運用と普及啓発を担当。
    • 2012年度 多摩大学経営情報学部 共同研究「移動流通-買い物難民と流通モビリティを支援する社会システムの研究」研究メンバーに参加(2013年度までの2年間)。

 

目次

GTIN/GLNの最新状況

  1973年に北米地域でUPC(Universal Product Code)、1977年に欧州諸国に拡大し、EAN(European Article Number)として利用が開始された、共通商品コードは、当初、POSシステムにおけるレジ業務の省力化、そして正確な商品識別による商品管理からその利用が始まった。
  その後、商品識別に利用されているUPCやEANコード(日本ではJANコードと呼称)は、コードの構成要素である企業識別コード部分について様々な用途に利用が拡大されている。
  国際組織であるGS1においては現在、企業識別コード部分をGS1 Company Prefix(わが国ではGS1事業者コード)と呼び、UPC、EANといった商品識別コードの名称をGTIN(Global Trade Item Number)と再定義し、さらにGLN(Global Location Number)をはじめとする様々な用途の識別コード(GS1識別コード)を定義し、その利用の普及推進をはかっている(表1)。


  本稿では、GS1識別コードのうち、商品識別コードとして利用されるGTINと、事業所識別コードとして利用されるGLNについての最新状況をとりあげる。

GS1事業者コード(JAN企業コード)の登録状況

新規登録におけるカテゴリの推移

  図1は、2001年度からの各年度及び2012年度において新規登録を行った総事業者の件数に対する、登録申請書に記載されていた取扱品目別事業者の割合を算出し、そのなかの2012年度における上位5品目カテゴリの推移を表している。

図1 年度別品目別のGS1事業者コード(JAN企業コード)新規登録件数の割合の推移(上位5カテゴリ)

*画像をClickすると拡大画像が見られます。


  特に最近の目立った動きとしては、次の3点があげられる。
① 2010年度から2012年度にかけて、衣料・衣服における登録の割合が増加している。
この衣料・衣服のカテゴリについて、登録申請書における「主要取引先」の項目をチェックしたところ、ネット通販業者の割合が多かった。ネット通販の伸びについては、後述する。
② 一方、2009年度に大きく割合が増加していた「日用雑貨/衛生医療用品・用具」分野は再び例年並みの割合に戻っている。
  このカテゴリの動きに影響したことは、まず、医療用品・用具に対して、厚生労働省経済課通知「医療機器等への標準バーコード付与(バーコード表示)の実施要項」(医療政経発第0328001号・平成20年3月28日)により、医療機器、医療材料への標準バーコード表示(GS1-128による表示)が全国で進められていたことが挙げられる。
  この通知の中で、高度管理医療機器・特定保守管理医療機器といった医療機器へのマーキングは、2010年3月を実施時期としていたため、2009年度には該当する機器の製造販売業者によるGS1事業者コード(JAN企業コード)の新規登録件数が大幅に増加した。2010年度には、その他の医療機器や、医療機器以外の消耗材料についてのマーキングの期限となってはいたものの、このような分野の商品については、既にGS1事業者コード(JAN企業コード)を登録済みである企業も相応に含まれているものと思われる。結果として、高度管理医療機器・特定保守管理医療機器のマーキング実施期限の時程には新規登録の増加への影響を及ぼさなかったとみられる。2013年3月に厚生労働省が発表した資料においても、JANコード取得割合はおおむね前年と同程度の割合となっている(表2)。
③ 「楽器・音響ソフト/楽譜」のカテゴリでは、2007年をピークとし、それ以降はやや登録割合を減少させているものの、加工食品に次ぐ2位の位置を保ち続けており、また2000年代前半に比べて、高い割合を維持している。

*画像をClickすると拡大画像が見られます。


  なお、常に1位となっている「加工食品」カテゴリにおいても割合の変動はあるものの、件数ベースでの変動は小さく、他のカテゴリの変化によって、相対的な割合が変動しているという状況である。

GTINの利用とネット通販

  「衣料・衣服」及び「楽器・音響ソフト/楽譜」のカテゴリでの申請は、Amazon.co.jp(以下、アマゾン)におけるe託販売サービス(2006年6月12日よりサービス開始)による販売のための申請が多くの割合を占めている。
  アマゾンに出品するための申請者の増加を示すデータとしては、新規登録事業者のうち、アマゾンを明示的に主要取引先として記載している事業者数が、e託販売サービスの始まった2006年6月より、月間登録時業者数の上位3位以内に常に入っており、特に2007年6月以降は常に1位となっていることがあげられる。
  e託販売サービス開始直後には、GS1事業者コード(JAN企業コード)登録申請書の主要取引先にアマゾンを取引先として記載している事業者のうち、半数以上が「楽器・音響ソフト/楽譜」分野の事業者であったが、現在同サービスは商品ラインを急速に増加し様々な分野の商品を取り扱うようになっており、現在では、アマゾンを主要取引先としている事業者のうち、「楽器・音響ソフト/楽譜」と「衣料・衣服」の2つのカテゴリがそれぞれ10%台前半となっている。なお「楽器・音響ソフト/楽譜」では、2010年度と2012年度を比較すると10%程度の割合で減少しているが、登録件数としては減少しておらず、他のカテゴリでの登録件数が伸びたことにより、相対的に割合が減少するという結果となっている。
  アマゾンでは、スタート当初は書籍や音楽CD等を中心に扱っていたが、現在は、生鮮食品を除いた殆どの分野の商品を扱っている。当センターへGS1事業者コード(JAN企業コード)を新規登録する健康食品等の取扱事業者や日用雑貨の取扱事業者のなかには、アマゾンでの販売のためにGS1事業者コード(JAN企業コード)を登録するという事業者も見受けられる。
  アマゾンのe託販売サービスは参加条件として「日本国内の事業体もしくは20歳以上の個人」であることとなっており、企業規模は不問である。このため、中小企業を中心として販売されている、「個々の商品としての売上高は決して高くないが、需要は少数ながらも存在する」といった、所謂ロングテール商品も積極的に取り扱っている。このような商品は、従来は取り扱い規模の関係から、JANシンボルのマーキングが必要になる流通ルートには販売されていなかったことが多かった。しかし、アマゾンの取扱条件に、「JANシンボルの商品へのマーキング」があげられているため、アマゾンでの販売に伴うGS1事業者コード(JAN企業コード)の申請が必要とされている。
  当センターでは、現在、GS1事業者コード(JAN企業コード)の申請に必要となる、「バーコード利用の手引き(登録申請書付)」という冊子を、アマゾンにおいて販売をしており、e託販売サービス参加者向けのページからも冊子の購入ページに進めるようになっており、利便性の向上をはかっている。
  アマゾン以外のネット販売の動きとしては、GS1事業者コード(JAN企業コード)の新規登録ではアマゾン程の件数はないものの、2012年度第3四半期より、楽天における「楽天プロダクツ」サービスにおいて、GTINをキーとした商品情報の検索サービスが始まっている。
  従来の楽天での商品検索では、商品名等で検索をした場合、同じ商品でも検索結果の一覧には、取り扱っている商店毎に表示がされ、目的の商品をどの商店で購入するのがよいのかを比較しにくいという問題があった。
  これに対して、楽天プロダクツでは、GTINをキーとして、まず商品情報が表示された上で、その商品を取り扱っている商店の一覧が表示されるという、価格比較サイトに似たレイアウトの表示となっており、購入したい商品が「どの商店で、いくらで販売されているのか」を簡単に把握できるようになっている。
  楽天プロダクツは、商品情報を名寄せするために、GTINが設定されている必要があるため、楽天においても、出店者に対して商品情報の登録の際、商品コードとしてJANコード(GTIN)の設定を強く勧めているとのことである。但し、楽天への出店者の場合、自社商品でない仕入れ商品を扱っているケースも多い。この場合においては出店者から、商品メーカーに対してJANコード(GTIN)の設定を働きかけることとなる。
  ネット販売におけるGTIN利用のポイントとしては、次のことがあげられよう。
① 1つの商品には必ず1つの商品コードが設定されること。
取り扱う企業(出店者)が異なる場合、出店者毎に別々のGTINが設定されると、同一商品としての商品比較ができなくなってしまう。よって、必ずブランドオーナーがGTINを設定することが不可欠である。
② ネット通販の販売単位と小売店頭の販売単位が異なる場合は、GTINを分ける必要がある。
  例えば、店頭販売における消費者への販売には、1個単位で販売するが、ネット通販の場合の購入単位が3個1セットである場合、GTINを分けて設定しないと、正確な取引ができなくなってしまう。

GLNの利用動向

GLNとは

  GLNは、Global Location Numberの略称で、EDI(企業間電子データ交換)やトレーサビリティ等に利用できる国際標準の事業所識別コードであり、GTINと同様、GS1事業者コード(JAN企業コード)を利用するGS1識別コードの一つである。
  GLNはGS1によって制定されたコードであり、国内及び国際的な企業間取引において、相互に企業や事業所等を唯一に識別することを可能としている。
  GLNのコード体系は図2のとおり、全体で13桁となっている。GTINでの利用と同様、当センターが貸与しているGS1事業者コード(JAN企業コード)を利用するため、GTINの利用のために既にGS1事業者コード(JAN企業コード)の貸与を受けている場合、改めて申請を行わなくてもそのままGS1事業者コード(JAN企業コード)をGLNのために利用することが可能である。


  ロケーションコードとしては、本社・支店・営業所・店舗・工場・物流センターといった物理的な場所の識別の他、代金決済等においては部門等の組織の識別というように、目的に応じた設定が可能である。
  なお、GLNもGTINも同じ13桁となってはいるが、利用分野の違いによって識別できる。またGTINとともに利用する場合は、GS1で定めるアプリケーション識別子と組み合わせることによって、データの種類を識別することが想定されている。
  国際標準の事業所コードであるGLNには以下のような特徴がある。
① 法人組織・物理的なロケーション等の識別が可能。
② 110カ国以上をカバーする、GS1ネットワークでサポートされる国際標準コードである。
③ 非営利組織が管理する、中立的なコードである。
④ グローバルでユニークに識別される、数値13桁のデータ構造を持つ。
⑤ データの完全性のために、チェックデジットを含んでいる。
⑥ GLNを使用することにより、各企業で設定された個別の識別コードでの企業間取引に比べ、コード変換が最小化され、全体効率の向上が期待できる。
  現在、多くの企業では営業活動や物流活動における、取引先の管理や商品管理のための保管場所等のロケーション識別のために、自社で独自のコードを設定して業務を遂行している割合が非常に高い。このため、企業間取引においては取引先毎に自社コードへの変換作業が必要になり、コード変換にかかる作業負荷とコストが大きくなっている。このコストは最終的には商品やサービス価格のアップやサプライチェーン全体の効率の低下にもつながっている。
  GLNが多くの業界や企業で利用されることにより、企業間の識別コードはGLNに統一され、各社は必要に応じて、GLNと自社コードの変換のみを行うことでシステム対応をはかることが可能となる。これにより、独自コード同士で企業間でのデータ交換を行う場合に比べてコード変換にかけるコストを大幅に削減することが期待できる。

GLNの利用状況

  GLNの利用については、百貨店業界において1999年、三越が取引先とのJEDICOSを利用したEDIシステムで、またその後の百貨店eマーケットプレイスや二次元シンボルを利用した納入伝票において、取引先の識別コードとして利用が始まった。
  2004年には、日本生活協同組合連合会が、インターネットをベースとした新EDIシステムにおいて取引先の識別コードとしてGLNを導入している。
  さらに近年では、2009年から展開が始まっている流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)において、送信者ID、受信者ID、法人コードといった取引先の識別コードとしてGLNが採用されている。2010年から2011年にかけて大手のGMSを中心に流通BMSの本格的な導入が宣言されたことから、流通BMSの利用は近年急増している。利用企業は2012年1月現在で3,900社にのぼると推定されており、今後のGLN利用増加が期待されている。
  また、食品のトレーサビリティにおいて、商品の流れに沿って生産者・出荷者から消費者に至る、各地点の識別コードとしてもGLNの利用が始まっており、今後、企業間取引がグローバル化・業際化していく中で、国際的に一意に企業・事業所を識別するコードとして、GLNの利用拡大が期待されている。

以上


(C)Masaru Ogawa & Sakata Warehouse, Inc.

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