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ロジスティクス ・レビュー

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3PL

第263号物流業界の「今、これから、あれこれ」(2013年3月14日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(昭和36年~平成5年)
    • (出向)株式会社バンテック(勤務先:神奈川流通サービス協同組合) (平成5年~11年)
    • (独立)有限会社KRS物流システム研究所・設立(平成11年~現在に至る)
    参加組織・履歴
    • 株式会社湘南エスディ-  物流顧問(平成8年~12年)
    • 株式会社カサイ経営  客員研究員(平成12年~18年)
    • 物流学会  正会員(平成12年~)
    • ロジ懇話会・事務局(平成15年~19年)
    • 日本情報システムユーザー協会 個人正会員(JUAS) (平成15年~20年)
    • 情報システムコンサルタント(JUAS認定No161)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省)  荷姿分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 運輸省(現・国土交通省) 輸送分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(平成10年~17年)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(平成13年~18年)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(平成15年~21年)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(平成14年~16年、18年)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(平成20年~21年)
    著書・寄稿・その他
    • 卸の物流協業化事例研究(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 業務革新・物流配送効率化(雑誌)・・・日経情報ストラテジー
    • 中小企業のロジスティクスは共同物流が決めて(雑誌)・・・SCAN
    • 日本のロジスティクス物流協業化事例研究(出版物・共著)・・・JILS
    • 物流共同化実践マニアル(出版物・共著)・・・日本能率協会
    • 共同物流の動向と共同物流の進め(雑誌)・・・物流情報
    • ドラック・ストア編ここがポイント!(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 物流を核にした現場密着型のコンサルタントを目指して(論文)・・・JUAS/ISC
    • 需要予測で適正な発注を実現するには!(情報化相談室)・・・日経情報ストラテジー
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流(出版物・共著)・・・同文館

 

目次

1.はじめに。

  ものの生産、ものを扱う事業活動を行うと物流が必要になってきます。
  いよいよ、物流の厳しい、そして面白い時代になってきました。
  間近に迫った高齢化や生産人口の減少による人手不足、日本の産業の90%を支えている中小企業の経営者の高齢化、後継者難が迫ってきています。
  いよいよ広域で革新的な物流の必要な時代に入ってきました。
物流業務の基本は、物流拠点(物流センター)と輸・配送、情報システムの3ッから構成されており、海外の拠点においても、物流の変革が加速しています。

2.物流業界の規模(概要)

  日本の実質GDP(国内総生産)は、概略500兆円規模だそうです。
  物流業界は、輸送や保管といった関連する各種事業を事業毎に形成して現在に至っているため民間企業、国交省、財務省などの調査資料から「物流業界」の規模を推定してみましたがひとくくりにとらえるのが比較的難しい業界だと認識しました。

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3.物流業界の動向!

  円高で荷主(製造業)企業と共に物流事業者も海外志向に前向きになっています。
  世界経済の減速、円高、日中、日韓の悪化を背景に、日本企業のグローバルな活動にもリスク回避を目指す変化が起き始めており、日本経済と海外進出企業の景気にも更なる暗雲が漂い始めている中で、強い国内の物流企業は、アライアンス(提携)、M&Aによる業界再編を行いながら、成長著しいアジアなど海外進出で、売上規模の拡大を目指す動きを活発化させています。
  日本国内を主要拠点としている中小企業も金融機関に協力して貰い、海外移転(進出)機会を模索、海外に出ていかないと持たないという実態にあるようですが、日中韓関係の悪化で日本企業、及び物流業界の海外進出の難しさを実感しています。
  記録的な円高が続く中、メーカー各社は、生産工場の海外移転や原材料・部品の調達先の見直しで海外調達比率を高めています。
  国内の物流事業者の多くがメーカー(荷主)の海外指向に危機感を募らせています。
  国内市場は、荷動きの減少が続く中、分捕り合戦(集約化・再編)が益々活発に・・・。
  さらに、荷主企業は、経営の効率化のため物流子会社の再編や物流業務全般をアウトソーシングする傾向をさらに強めています。
  従来型の運ぶだけの物流サービスでは、荷主企業は満足しなくなりました。
  人と車両があれば商売ができる時代が終わったようです。
  これからの物流には企画力や分析力(データを取り扱う力量)が欠かせません。
  どうすればお客さまの物流コストの削減に貢献できるのか、単に物流費を値引きするのではなく、あらゆる角度から無駄な部分を探し出せる能力が必要になってきています。
  目的は総合的な物流コストの圧縮、サービス性の向上、品質・精度を求めています。
  そして、長い間の荷量の減少、円高による悲鳴を上げるだけでなく、物流企業間では、知恵を出し、工夫を凝らした荷量(売上増)の捕り合いが始まっています。

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4.海外を視野に再編が進む物流業界

  荷主側が国内と海外(陸海空)をカバーできる物流 サービスを求め、国内と海外の物流を効率的に推進する体制作りが必要と積極的に再編を進めています。
  物流業界再編の目玉は、郵政民営化と外資の参入とみています。
  国際的なネットワークを持たない物流企業はハンディを負うとされ、海空の垣根を越えた提携の機運は高まるばかりです。
  例えば、フォワーディング(国際輸送)事業の統合、日立物流とバンテックのフォワーディング事業をそれぞれシーアンドエアに承継させる事業統合を発表しています。
  宅配便最大手のヤマトホールディングス(ヤマトHD)と、海運最大手の日本郵船が資本・業務提携、日本郵政公社、全日本空輸(ANA)、日本通運、商船三井の4社が提携、佐川急便と日本航空(JAL)も関係を深めています。
  日本郵便が楽天と国際ネット通販で業務提携、日本郵便は国際ネット通販の取り扱いを郵便事業の柱に育てたいと考えています。
  中国~東南アジア~インド間にローコスト物流網の拡大が見込まれています。(伊藤忠&3PL事業大手)、日中、日韓関係の悪化でアジアの日本の製造業を中心に生産拠点の分散化が進み、アジアの経済発展と共に物流量が増えていくものと思われます。
  そこで、アジアの広域巨大物流圏が誕生しそうです。
  メキシコ~米国~カナダ40カ国以上がFTAを締結、メキシコがすそ野の広い自動車産業の集積地になりつつあります。
  日産、ホンダ、マツダ、フォード、ワーゲンなどの完成車及び、部品メーカーが、メキシコやブラジルに投資(年130万台)、 日本の生産規模、物流拠点を上回る勢いです。
  ここにも、南米地域を網羅する広域巨大物流圏が誕生しそうです。

5.今、これからの物流のキーワード?

  モノの動きは20年来、減少傾向(90年代比25%減)が続いています。
  90年代のピーク時と比べて現在の物量は70~75%程度で12年連続の減少だそうです。
  日本企業のグローバルな活動で、国内の工場がアジアを中心に次々と海外移転したこと、高年齢化(人口減)が大きな要因となっていると思われます。
  東日本大震災と円高での生産の落ち込みを12年度は久しぶりに増えるとみていましたがその予想が日中、日韓との領土問題で、先々があやしくなってきたようです。
  さらに、2055年には人口9,000万人(2010年比30%減)、生産人口が4,600万人(同じく43%減)となり、生産年齢の減少で少子高齢化への対応が必須のようです。

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  多くの物流企業は、「物流の変革が生き残るキーワード」と、とらえています。
  物流は「モノを動かせばよい」時代から、市場(物量)の縮小、大手企業の海外展開を視野にいかに戦略的な保管(物流拠点)、輸・配送などを変革し、先進的な物流システムの再構築を武器に社会環境の変化に対応するための戦いを挑む時代が到来しています。

1)協同組合や中小企業同士のアライアンスで物流企業も海外市場を視野に・・・。

  資本金5億円以上、従業員500人以上が7,000~10,000社、中小企業を含めると概算10万社が中国に進出しているとのこと、国内の工場が次々と海外に移転しています。
  国内の市場の縮小化が継続、さらに、かってない人口減少時代を迎えています。
  物流を本業とする中小企業が協同組合や企業同士のアライアンスで海外の未開拓市場への進出を検討し、日本の中小企業の実績を作りたいものです。
  海外(タイ、インドネシア、ベトナムなど)の中小企業もAOTS(海外研修センター)などを通して、日本のリアル物流(現場実務)を勉強しに多くの方が来日しています。

2)消費構造の変化を受け、ネット通販を第二の店舗網としての動きが加速しています。

  総務省によると65歳以上の人口は10年前より30%増え、共働き世帯も10%強増えているとのこと、こうした消費構造の変化を受け小売業はネットスーパーの展開を加速しています。 ローソンはヤフーと提携し、2013年1月から国内最大のポータルサイト(玄関)の集客力を生かし、食品や日用品の宅配を始めます。
  ファミリーマートも頻繁に来店が難しいシニアや共働き世帯が増えるなか、傘下の弁当宅配会社を通じてCVSの商品を配達するなど、店舗の利便性を武器にしてきたビジネスモデルを変革し、消費者との接点を増やす動きが出てきています。

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3)3PLという新しい物流方式で海外展開が広がっています。

  3PLへの動きは国内だけにとどまりません。
  日本企業の製造拠点は次々と海外へ進出、世界に広がった企業の活動をムダなくスムーズに最適化するのは産業の血液である物流の役割、その実現のための国際的な3PLニーズが急速に高まりつつあります。
  これに応じて、いま日本の物流企業は盛んに海外拠点を開設し始めています。
  日本国内と同様に3PLサービスを提供するのが物流企業のこれからの腕の見せどころ、物流力のある物流業、運輸業、物流子会社、卸業などが物流を総合的に受託できる日本独自のプラットホームで3PL事業を展開、世界に広がっていくことを期待しています。
  物流を本業にする企業にとって、3PLは仕事量を増やすチャンスです。

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4)継続的な物流人材の育成(特に中堅・中小企業)への投資が必要です。

  長期的な視野で物流に携わる人材にどのような能力や知識・経験を備えればよいのかを定義付けることが物流業界の共通の課題と言われています。
  さらに、小手先だけの教育やセミナーではなくトップ層(経営&物流戦略レベル)、ミドル層(計画性レベル)、ロワー層(作業管理レベル)などの体系的な物流人材の専門教育が必要な時代が訪れています。(JAVAD資格認定制度がスタートしています。)
  人材育成に投資すれば、成果として投資以上のリターンが帰ってくると言われています。

5)物流施設(REIT:リート)が投資の対象として脚光を浴びています。

  物流REITに集まった投資家のお金が物流不動産に投資され、全国的に大規模な物流施設が次々に建設されています。
  物流施設(倉庫や物流センター)は、産業を支えるインフラとしては欠くことのできないものですが地味で目立たない存在であった物流不動産がいまや魅力的な投資対象として表舞台に出はじめています。

6)ビジネス環境や社会環境の変化に応じて情報の技術革新と共有化が進み始めています。

  ITとの連動性の強化、リアルタイム(予測物流、進捗物流、見える物流、etc)での情報共有化が進み始めています。
物流も新しい技術を導入し始めています。
  GPS、RFID(ICタグ)や物流の進化に関連する物流機器・情報システムなどの革新、物流の変革により、物流負荷の低減が進んでいくことも期待できます。
  さらに、ITの飛躍的な進歩で物流情報システム(WMS)の利用技術が本格化、ネットワーク経由でITを利用できるクラウドコンピューティング、タブレット型端末、スマートホンなどの普及でリアル物流(実務)の活動も様変わりする時代が来ると思われます。

7)アライアンス(提携・物流統合化事業)、M&A、共同化が進んでいます。

  企業が戦略的に連携し、パートナーとして物流の効率を高める事例が増えています。
  物流の高度化、効率化は1社(特に中小企業)では、困難! です。
  物流の効率化は、複数企業の物流を集約化(物量の拡大)することで、物流のスケールメリットを享受(効率化、利益の確保、etc)することがしやすくなります。

8)全ての物流業務を外部に委託する時代になってきました。

  荷主企業の物流は、自社の核(コア・コンピタンス)とはみていません。
  経営判断として出てくるのが物流のアウトソーシングです。
  物流に人、物、金といった経営資源を投下する余裕はなく、物流に遅れをとっている企業はその遅れを自社で取り戻すことが時間的にも経営効率的にも困難と見ています。
  物流の効率化は、1企業の自助努力では限界が見えてきています。
  ここで注目したいのが全ての物流業務を外部に委託する時代になってきたことです。
  安心して外部に業務を任せられることが大前提、輸送、保管、作業など単純なものだけでなく、企画管理や改善を含めて力量のある企業に任せる時代になってきています。

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9)物流戦略・物流計画を支えるシミュレーション技術が進歩しています。

  物流戦略上、物流拠点の整備・再編(集約)が積極的に行われています。
  最も求められているのが理想的な拠点配置(物流センター)と配送網です。
  物流拠点の配置をどうするか、拠点の適正な規模はどのくらいかなどのシミュレーションを行って、設計、立案する技術が進み作業工程や工数をシミュレーションすることで最適な人員配置や人数を策定できる時代が到来することでしょう。
  人間の動きまでシミュレーションできる時代が来ています。
  従来はハード機器である自動仕分け機、自動倉庫、コンベアなどのレイアウト、稼働状況のシミュレーションを行うことができましたが実際の作業を行う作業員の動きなどの効率的な動きをシミュレーションできる時代が来ています。

10)RFID技術がリアル物流(実務)を進化させる技術革新として期待されています。

  ICタグはコスト、技術、両面での検討課題も多く存在していますが、一つひとつクリアしていくことで、物流分野を効率化する夢のツールになると期待されています。

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6.物流業界が抱えている主な課題

  先ず、社会環境が変革し続けていること、そこでどの業種業態、大企業、中小企業を問わず、将来を見据えて社会環境の変化に迅速に対応することが重要な課題です。
  経済のグローバル化がいっそう進んで生産拠点の海外移転が続くこと、デフレ傾向が止まりそうもないこと、消費者の減少が続いていること(人口の減少、特に生産年齢の減少が大きいこと)などがあげられます。

1)高コスト構造の是正ができないこと。

  エネルギー、土地、労働力などの調達コストが高いこと、自社で物流業務を行うことは高コストになりやすいという問題が潜んでいること、物量の波動と人員配置(勤務形態)の克服(高度な管理)、物流事業者が零細であること、港湾、空港、高速道路などのインフラ整備が遅れていること。

2)物流業界を牽引する人材(スペシャリスト)が不足していること。

  物流の専門家が大量に不足していること、社会全体としての関心が低く、海外(特に欧米)に比べて遅れを取っているのが現状です。
  物流人材を育成する教育体制、教育機関(特に大学)が不足していること、物流部門への企業の対応、人材育成などへの姿勢が弱いこと。

3)アジア経済圏のハブ機能が奪われていること。

  国際物流の要となる港湾、空港などの能力、サービス、コスト競争力がないこと、周辺国にハブ機能が奪われて劣勢にあること。

7.最後に・・・。

「最も強いものが生き残るのではなく、もっとも賢いものが生き延びるものでもない、唯一生き残るのは変化できるものである。」と進化論のダーウィンの言葉として知られていますが、最近の日本の企業を見ていますと、まさにこの言葉が当てはまる思いです。
  最強だった日本の半導体メーカー(超一流企業の半導体事業を集約したエルピーダメモリー)は価格下落という変化に苦しみ経営破たんしました。
  高品質の液晶テレビのシャープはパネル価格の下落でテレビ事業が重荷になっています。
  日本企業は意思決定の遅さ、成功体験を捨てられないことが指摘され、地道な物づくりだけでなく、変化への適応力が求められ、変化を磨く戦略が必要といわれはじめています。
  物流関連企業も継続や過去の実績も重要ですが、変わらずに守り続けるべき伝統もありますが、変化をチャンスと捉え、変わることを楽しみつつ、変化のチャンス・チェンジを見誤らないように変化の適応力を磨きたいものです。

以上


(C)Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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