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第260号現場力を高める実践ポイント (2013年1月22日発行)

執筆者 平居 義徳
(ロジスティクス・コンサルタント・技術士)

 執筆者略歴 ▼
  • 経歴 1961年(昭和36年)、日本能率協会コンサルティングに入社。
    以後、2005年(平成17年)まで45年間、生産とロジスティクスの実務コンサルティングに専従する。
    専門分野 物流専業会社、メーカーおよび流通業で、「物流総合改革」「物流業務改善」「物流品質改善」「新センター計画」「センターレイアウト計画」「生産効率の改善」のコンサルティングに従事。
    主要な著書
    • 「わたしたちのIE」 (1974年) 日本能率協会刊
    • 「職班長のための新しい改善技法」 (1982年) 日本能率協会刊
    • 「たのしいIE」 (1983年) 近代経営社刊
    • 「改善学入門」 (1986年) 日本能率協会刊
    • 「やさしいIEのはなし」 (1987年) 日本能率協会刊
    • 「コストダウン50のチェツクノート」 (1989年) PHP研究所刊
    • 「物流コストダウン50のポイント」 (1994年) PHP研究所刊
    • 「やさしい物流改善の本」 (1994年) プロスパー企画刊
    • 「実例でみる物流診断分析」 (1994年) プロスパー企画刊
    • 「eヒントプログラムによる物流改善」 (2002年) JILS刊
    • 「物流改善ケーススタディ」(共著) (2004年) 日刊工業新聞社刊
      など

 

目次

  物流現場で効果的な改善活動を進めるには、少なくとも次のことが求められる。
・会社の改革方針・基本方針に沿った全社活動であること。
・自覚しているロスだけでなく、その気にならないと、わからない損失も掘り起こす。
マトをはずさない「分析」で、それらを定量化する。
・これらの損失をどうすれば、減らせるかの「対策案」を広角・フルサイズで考える。
今回は、ラインメンバーの立場から、これらの実践ポイントを列挙する。

1.課題をつかむ「分析」とは

(1) 「分析」とは、予想する損失を定量化するもの。

  毎日の現場では、ここは、ダメ! これは、ソン! だと思うことが多い。会社・部門方針の方向で、これらを改めて見直す。その例は、図1に示すようなものである。

*画像をClickすると拡大画像が見られます。

(2) 立場を変えて業務を見る

  業務は、そこで仕事をする側だけで見てはいけない。それは、むつかしいことではあるが、一旦はつぎのように立場を変えて見直そう。
・担当業務の前後工程、特に「後工程」の側から見る。
・わが社の「お客さま」の立場になる。
・いま、扱っている「商品」自体になりきる。自分は、A商品であると置き換える。
それで、ときには乱暴に扱われたり(汚損・破損)、不必要に長く待たされたり(一時仮置きや滞留)、積み卸し回数(タッチ回数)が多かったりすることが実感できる。

(3) 業務を分類、層別、セグメントして課題を分ける

  分析アイテムは、「改革・改善の目的」と「業務の特性」で決まる。ここでの「業務の特性」とは、・・・
・扱い品のちがい・・・大物単体、ケースもの、バラ(ピース)もの
・オーダーによるちがい・・・緊急品、バッチ回数、受注時間帯でのちがい
・ユーザー群のちがい・・・大口顧客と小口ユーザー
・調達・場内フローのちがい・・・通過品と在庫よりの出荷品区分
・リードタイム・・・通常、緊急品、日時指定品によるちがい
・業務量波動によるちがい・・・閑散期、繁忙期のちがいなどである。
要は、これら各種の業務特性別で課題の重点をつかむことになる。

(4) 全体から細部へと見る

  特殊業務やイレギュラー事項のみに眼を奪われず、全体像から細部項目へと分析を進める。これが、重点をはずさないツボとなる。

(5) どの仕事でも、〝 ほんとうは、こうあるべきだ 〟という想いを持つ。

現状や制約事項に引っ張られない。いつも、「望ましい状態は? 」「本来は、こうあるべき・・・」という「あるべき姿」を思い描く。この「あるべき姿」と「現状」とのギャツプが「課題」なのである。

2.対策を考える要点

課題ごとに、有効な対策案を考えるポイントは、つぎのことである。

(1) 着想は「広角」で、そして「望遠」にもレンズ交換を・・・

当初の考え、ひとつのことだけにこだわらない。ずっと気にしていると、ほかの考えもあることに気がつく。どの案にも、必ず欠点・短所がある。その欠点が気になったら、それをカバーする別案を考える。
そして、「当面はこうで・・・そのあとは、これで・・・」というストーリーを持つ。

(2) 原案の評価~修正~評価のくりかえしがベスト案を生む

1打数1安打は、至難のワザ。多数のヒットは、多くの打数があってこそ生まれる。
このため、最初の案は、欠点だらけの囮案であってよい。

(3) 批判人間から提案人へ

批判は、だれにでもできる。やっかいなことに、「人は、他人の案をとやかく言うのが大好き」なのである。批判・評価は、すぐできる。でも、発想はすぐに、だれでもはできない。特に、幹部は部下の原案を評価するのが自分の仕事であるとカンチガイをしない。
これが、全員・全社活性化の決め手であるとも思える。

(4) 対策は自動的には生まれない。その発想ツールを身につけよう

対策案をムリヤリ考えるコツは、「対策立案のツール」と「これをなんとかしたいという意欲」に尽きる。
「対策立案のツール」の例としては、つぎのものが挙げられる。
・要因法
なぜ、この不具合、この損失が出るのかの原因・要因群を列挙する。多くの場合、その真因ははっきりとわからない。そこで、これがあやしい、この可能性も・・・といった「容疑者」もリストアップをする。
そして、これらすべての「容疑者」を逮捕する対策を検討する。要因ごとの対策となるため、自然と細かなことや広角となるが、全部を一挙に実施できないので、当然、優先順位を設定することになる。
・デザイン法
ここでは、〝 これができればよい 〟 ゜本来の役割・機能は? 〟の再認識・見直しからスタートする。
そして、その目的・役割・機能を満足するすべての「手段群」を考える。いまの現状を一旦は忘れ、「あすから、この仕事を始めるとすれば、どうするか? 」という発想をする。
この方法では、お金がかかるとかいまの情報システムでは・・・などという制約は、外して考える。つまり、「なんでもありー」の状況で立案をする。
・改善定石法
現場の課題ごとに、自分流の改善ヒント・トラの巻を持つ。このためには、自社の他センター・職場をはじめ、国内外の他社事例、文献発表内容などが吸収源泉となる。そのコツは、ここの良いところはなにか? 改革の要点は? を見極める。
ウチの事情や背景のちがいなどは追求しない。うまく実施していることだけを見分けることである。
手待ち、移動、積みおろし、さがす、重複業務、仕分けなどの業務課題や保管、配送の共通課題は、「定石法」の有効活用分野と云える。

(5) 自己防衛本能に打ち克つ意欲

一般に、人は「気がラクなこと、事務的なこと」に逃げる。失敗や事後責任が頭をよぎり、できれば、革新的なことは取り組みたくないという本能がある。また、それは、オレの仕事の範囲ではないという逃げであったりもする。
このような場合、その背中を押すのは、そこの上司、幹部、トップメンバーなのである。腰の引けた旗振りや傍観では、現場人間の生きた発想は生まれない。
つぎに、着想に行き詰まったら改革・改善の目的(狙い)に戻る。これはつまり、スゴロクでの「振り出しに戻る」勇気である。
この勇気と根気こそが「改善意欲」そのものである。
はっきりとした明確な会社方針に向かっての全社一丸の「現場力は、以上の実践ポイント」で開花するものと確信する次第である。

以上


(C)2013 Yoshinori Hirai & Sakata Warehouse, Inc.

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