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第257号理美容業界における流通効率化の取り組み(中編:下)(2012年12月6日発行)

執筆者 青木 利夫
全国理美容製造者協会(NBBA) 事務局長

 執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1951年生まれ
    • 1973年 早稲田大学卒業、婦人服専門店「三愛」入社 本社経理部勤務 営業経費・償却資産・支店会計担当。
    • 1977年 東急ハンズ入社 本社経理課勤務 決算・税務・企画収支担当渋谷店立ち上げに携わる。
    • 1979年 ウエラ化粧品入社 債権・予算・受注管理・営業データ管理におけるエンドユーザーコンピューティング担当。
    • 2008年 タカラベルモント入社 東京本社管理部特命担当。
    • 2011年 同社 東京本社管理部顧問。
    • 全国理美容製造者協会事務局長を兼務。
    • 理美容業界VAN・業界標準WEB-EDI「NBBA楽々注文ねっと」構築・共通倉庫研究に携わる。

 

中編:上(2012年11月20日発行 第256号)より
*サカタグループ2011年11月16日開催第18回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
*今回理美容業界における受注システムの標準インフラである「NBBA楽々注文ねっと」立ち上げ時の苦労話、今後の楽々倉庫の構想他ついて、実際の体験談を交えて講演いただきました「全国理美容製造者協会(NBBA)事務局長 青木 利夫」様の講演内容を計4回に分けて掲載いたします。

目次

1.倉庫管理に関するコンサルタント紹介、システム会社紹介

  サカタウエアハウスさんは私たち流通委員会のメンバーにロジスティックスの基礎をイロハから本当に丁寧に教えて下さいました。物流センターの見学もあちらこちら手配していただいて、理論と現場と両方見せていただき私たちは非常に勉強になりました。倉庫管理に関するコンサルタントとして、代理店さんにお勧めをし、代理店様の問題解決にもご協力いただきました。
システムに関してはアスコットさんのアスパックという非常に優れた、代理店さんもまたメーカーさんの仕組みに関しても対応できる、パッケージソフトがあり、プラネットさんがアスコットさんをご紹介くださいました。アスコットさんはメーカーのピップエレキバンさんの仕組みを手掛け、日雑業界の卸さんのシステムパッケージも手掛け経験豊富でしたので協力を頂いて、NBBA流通セミナーでも代理店さんの必要とされる仕組みについて説明をしていただき、私たちも理美容業界の先を行くシステムの利用をお勧めしました。

この図も一つの例ですが、ロケーション管理が非常に重要なことを説明するために、今まで行ったり来たりしていたピッキング作業をこういうロケーション管理することによって一回の動線で作業できることや、でその為にはどうしたらいいですかという話をサカタウエアハウスさんや、またピッキングの情報管理の仕組みをアスコットさんに説明していただいて、業界の中になんとかそういったノウハウ利用を広げていきたいという事で、取り組んできました。
このような取り組みの結果、これはあるアスコットさんがシステムに取り組まれたあるディーラーさんの例なのですが、商品毎のロケーション在庫区分けを、こういったブックエンドみたいに移動できるのです。商品の在庫を横にずらしていって、ここには、さっき言ったロケーション管理、それもバーコードによって管理する仕組み、こういったものをハンディターミナルを利用して、棚とピッキングリスト両方にバーコードを入れてこのように柔軟に管理されているのです。
このディーラーさんは、外国製のオフィスコンピューターのヘビーユーザーでしたが、システム入替のときに、何か新しい動きがないのかという相談を受け、このアスコット社のアスパックというパッケージソフトを紹介させていただきました。その結果、昨日今日入社した方でもピッキングができるようになり、物流関連の改善がかなり進んだとうことで、その後この会社の社長さんが、私たちが地方に行って物流の説明会をする時の説明役をかってくれて、早くみんな改革しなければ駄目なんだということを、声高に叫んでいただき、非常にご支援いただきました。もちろん、かなり業界でも力を持たれていた方なのです。VAN立ち上げ時は、真っ先に反対の意見表明をされていた方が、一緒に業務改革の必要性を説いてくださるという、ほんとに不思議なご縁を頂いたのですが、そうやってディーラーさんも一緒になって、この改革に自分のところ以外のディーラーさんを倉庫に呼んで、JANコードもソースマーキングもしていない会社さんに対して、強く、こうやって改革しなければ駄目なんだよということを説明していただいたのです。

2.親父たちのプロジェクトX(4)

ここで新しい課題が出てきまして、VANを利用する代理店さんは20社くらいになったのですが、そこから先の新規導入企業数が、ぜんぜん進まなくなりました。というのは、先ほど言ったようにシステムの専門家がディーラーさんの中に存在していなかったのです。大手のディーラーさんは情報システム専門の人員を抱えることができるのですが、ほとんどのディーラーさんは情報の管理者がいなくて、パッケージでシステムを動かし始めたら、後は事務員の方が運用していて、何かあったらシステムベンダーさんに手直ししてもらうという状態だったのです。
メーカーへの発注に関しては今まで通りの電話・FAXでメーカー毎の発注表を作成し送るディーラーさんが残り、扱いメーカー増や商品種増で発注作業に結構負担がかかる状況が出ていました。それで、業界全体が楽になる仕組みを考えていく上で、今述べたシステム化の進んだディーラーさんと、進んでいないディーラーさんとでは管理方法が異なるため、片一方の代理店さんでは楽になっていることが、もう片一方では大変な作業として残っている現状があり、そこで改善する点は何か検討を行いました。
そこでシステム化の進んでいないメーカーや代理店さんでも利用できる、金太郎飴みたいな仕組みで、簡単に発注や受注が出来る仕組みがいいということになり、なおかつ多くの企業が参加すれば、値段が下がるような仕組みが構築できないかということになりました。
ではそれに適しているシステムは何かといった時に、WEBを利用した受発注の標準化ではないかということで、流通業界のEDIサービスを提供されているプラネットさんが、既にWEBの受発注の仕組みを提供されていたので、これをもっと改良してくれないかといことで相談をしました。というのは、既にNBBAのメーカーの中の4社くらいは、WEBの受発注の仕組みを持っていて、独自で動かしていました。その仕組みに比べると、機能追加が必要ということなので、プラネットさんへ業界向けに手直ししていただけないかと相談したのですが、やはり開発費にお金が掛かるということと、データ量により課金されるということで、私たちの希望は安く利用できるということであり、プラネットさんの仕組みを改良して運用しようとすると、理美容業界では取扱量が少ないため1明細業あたりのコストが結構金額的に高くなってくるので、無理だよねということで、結論としてNBBAで独自にシステムの開発を行うことをプラネットさんにご了承いただきました。
ASPサービスとして立ち上げていただくことを条件にシステム会社4社に見積をお願いし、見積もり説明会を開催し、一社一社説明と質疑応答を行い、最終的に委託先は日立製作所さんに決定したのです。TWX-21というeコマースサイトを運営し3万社と接続し、バーコードの対応が最も進んでいるといった経験豊かな点が決定理由でした。
開発コンセプトとしては、楽に発注ができて、楽に受注ができるという仕組みであり、システム化の進んでいるメーカーさんはそのままデータを取り込んで自社の管理システムに流し、進んでいないメーカーさんだったらデータを紙に印刷してそれで商品をピッキングして出せばいいといった仕組みにしてあります。このシステムの名称として、委員会の中で意見を出し合ったのですが、「楽に発注、楽に受注ができる」という仕組みを意図して名付けた「NBBA楽々注文ねっと」となりました。余談ですが、この名称は私が提案したものだったのですが、今でも良い名称だと思っています。

3.便利なWEBの受発注も増えると不便に

便利なWEB受発注の仕組みですが、最初の1社は良いのですが、複数のメーカーさんがいろんなWEBの仕組みを持っていると、業界全体としてはかえって混乱してしまうということがあります。既に自社で動かしているWEBの受注の仕組みを持っているメーカーが3,4社あったのですが、今後9社、10社と独自のシステムが増加するとかえって使われなくなってしまうので、今のうちに標準化されたWEBの仕組みを業界に提示するべきだし、そうしないとディーラーさんもかえって混乱しますからということで、流通委員会が中心となって動き、最終的に完成したのがこの「NBBA楽々注文ねっと」という仕組みなのです。
開発にあたっては、日立製作所の開発担当、NBBA側の情報システム要員とNBBA会員以外の問屋さんからもシステム要員を出していただき、流通委員会メンバーを加えたメンバーとで要件定義等を念密に繰り返し、将来的には代理店・サロン間に仕組みを解放することを視野に入れつつ開発を行いました。既にWEB受注の仕組みを持つメーカーからは、そのノウハウを提供してもらいましたので、業界にはこれ以上の仕組みはないという姿勢で臨みました。
日立製作所さんには、総額固定のASPサービスとして提供してもらう条件で、プログラムの所有権は日立製作所に帰属する形にいたしました。このシステムは中間卸さんを持つ商流であれば、他でも使用できる仕組みです。私たちも頑張って作った仕組ですから、他の業界でも使用されたら良いのではと思っております。完成した後も、ディーラーさんの倉庫業務に携わるかたから意見をお聞きし、すぐに改良を加えて行くということを繰り返しましたので、完成度は高いものがあると思っています。

4.メーカーが増えるほど便利なWEBシステムに

ディーラーさんの方では、今までの仕組みだとメーカー毎に、締め時間までに発注用紙(メーカー側では受注用紙)に数量を記入しFAXを送信するという作業が必要だったのですが、この「NBBA楽々注文ねっと」を利用することにより、JANコードを参照し該当するメーカー分を自動振り分けできるため、複数のメーカー分の注文を一度に発注できるようになりました。

5.NBBA楽々注文ねっとの特徴

この「NBBA楽々注文ねっと」により発注できる仕組みというのが、これからいくつかパターンを説明しますが、①穴埋め方式でリストから商品を検索し選択する仕組み、②メーカーコード、もしくはJANコードをバーコードスキャナでスキャンすれば入力できる仕組み、それから③EXCEL表とか、自社でオーダーデータを作成するディーラーさんであれば、JANコードと数量だけのデータを作成し「NBBA楽々注文ねっと」に読み込ませれば、自動的に楽々注文ねっとにデータ転送してもらい、該当メーカーが分かりメーカー毎に発注が出来る仕組みがあります。
例えば、データの1行目2行目がA社で、3行目4行目がB社、5行6行目がC社となっていた場合でも、「NBBA楽々注文ねっと」にこのデータを返すとそれぞれのメーカーさんへ発注が飛んでいく、こういったデータの取り方をしています。
この中で、一番ディーラーさんに喜んでいただけた仕組みが、④ハンディーターミナルを利用した注文の仕組みです。これは倉庫の端にいって実際の商品を見ながら、バーコードリーダーを商品にあてて読み取り、必要な数量だけ、何ケースもしくは何本という形で入力し、クレードルにハンディーターミナルを差し込んで、インターネットへつなぐと自動的に発注ができる仕組みです。この仕組みはディーラーさんに対して非常に業務の改善になったということで、とてもよく受け入れられました。今まではメーカー毎に発注用紙に記載してFAXしていたのですから・・

6.2011/10月 現在の接続数 代理店 約340社 メーカー 13社

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その結果、今まで人海戦術でメーカー毎に発注をかけていた作業が非常に楽になったということで、2011年の10月現在で340社(2012年10月10日現在約400社)のディーラーさんがこの発注システムを使用されています。参加メーカーは13社なのですが、私たちの説明がまだ足りないのか、NBBAの会員以外のメーカーでも参加できることが、まだお分かりいただいていない部分があります。NBBA会員以外のメーカーさんでは3社だけが利用されているという状況です。
この仕組みにより、統一したユーザーインタフェイスが利用可能になって、ディーラーさんにしてみれば、いろんなメーカーの商品が同じような形で発注できて、発注ミスが減り、さらに発注履歴を見れば、どれくらいの請求額がくるのかも分かるし、ハンディターミナルは発注用だけでなくて、商品の登録を行えば棚卸にも使える形になっておりますので、非常に便利だというお声をたくさんいただいております。

7.親父たちのプロジェクトX(5)

これで気をよくしたわけではないですが、この便利さを業界全体に広げたいということで、コンセプトはやはり楽に発注、楽に受注ということで、今度は「NBBAサロン楽々注文ねっと」という仕組みを業界にリリースしました。

8.サロン・代理店間のWEB受注サポート

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こちらはどういう仕組みかというと、今度はディーラーさんがこの仕組みを利用してサロンさんからWEBで受注を受けることができるという仕組みです。この仕組みの一つの特徴はシステム化の進んでいるディーラーさんはこの楽々注文ねっとからきたデータを自社の基幹システムに取り込めばそこで出荷指示が掛けられることがあります。また、メーカー直送品という、注文はディーラーさん経由でもらうのですが、配送はメーカーが個別のサロンさんにお届けするという直送品という商品が結構いろんなメーカーさんで利用されてきているので、その分については自動的に「NBBA楽々注文ねっと」経由でメーカーに注文が飛んでいくというこういった仕組みに発展させてあります。この「NBBA楽々注文ねっと」からのデータの取得に関しても、非常に簡単な仕組みが構築できるので、ディーラーさんの方でもこれを利用することによって業務効率が上昇するのではないかと思います。
先ほど340社のディーラーさんが「NBBA楽々注文ねっと」を利用されているということをお話しましたが、これだけディーラーさんに浸透してくると、この仕組みを標準として、「NBBA楽々注文ねっと」とつなぐ仕組みを作った方が良いということで、今業界の大手ベンダーさんが「NBBA楽々注文ねっと」と連携を図った仕組みというのを展開しています。ですから、受発注に関する基本的な仕組みとして「NBBA楽々注文ねっと」が今発展途上にあるのです。
ただディーラーさんの中には、どうしても自社独自のWEB受発注の仕組みを構築されて、それで競争の優位性を保とうとされているところもあります。これはメーカーの時代にも言えたことであり、そういったWEBによる囲い込みということも考えられるのですが、受発注の仕組みに関しては、そういったことをするよりも、標準化をもっと進めた方が、ディーラーさんにとってもプラスになるのではないかということを私たちは今説明して歩んでいます。

9.親父たちのプロジェクトX(6)

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こうして本来競争関係にある企業同士がシステムを共同で構築し、推進していくこと意味を見出し、新たな標準化への取り組みの意思というものが、芽生えてきました。
標準化によってもたらされる価値の創造という面では、基本的な業務のステップは同じであり、1つのシステムを複数の企業が共有できれば、システムとしても安定性があるし、コストの部分でも低い価格で導入できるので、業界に大きな貢献をするものではないかと思います。またこういった形で業界のEDIの仕組みが確立されることによって、新たなビジネスチャンスが生まれるのではないかと私たちは考えています。その発展系ということで、仕組みとして考えたのが倉庫も楽々にならないかということで、研究したことがあります。「卸売市場型共通倉庫」という研究を私たちは行いました。

10.卸売市場の簡略図

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これはどういったことかというと、みなさん卸売市場というものはご存知でしょうか。例えば築地の魚市場とか青物市場とか、あの仕組みというのは、生産者から農協さんとか別の団体経由で来る場合もあるのですが、ものすごく簡単な流れにすると、生産者が卸売市場に商品を持ってきて、そこで卸売業者に頼んでセリにかけて仲買人という方たちが、競り落とした商品を小売店に配送している、こういった流れが、卸売市場の基本的な仕組みなのです。
それで、築地の市場とかそういうところにいくと、仲買人さんは、この卸売市場、築地の例えば市場の中に自分たちで倉庫をそれぞれ持っていて、Aという仲買人さんの倉庫、Bという仲買人さんの倉庫、それで、セリで落とした商品をそこの倉庫に入れておくと、今度は小売業者さんがその仲買人さんに注文してきて、例えば、フルーツの小売店さんだったら、小売店さんが仲買人さんから買うよって言ったら、仲買人さんが小売店さんに届けてあげる、というこういう仕組みです。
だから、ある意味この同じ場所に品物が集められて、そこから解体され、小分けされて小売店さんに行く仕組みを、私たち理美容業界の中に構築できないかと、その生産者から卸売人のところまでをメーカー、仲買人さんをディーラーさん(代理店)、小売店さんをサロンさんとすれば、こういう図式になるのではないかということです。

※後編(次号)へつづく



(C)2012 Toshio Aoki & Sakata Warehouse, Inc.

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