ロジスティクス・レビュー

第216号物流・ロジスティクス分野における人材育成に関するアンケート調査結果(後編)(2011年3月15日発行)

執筆者 五関 信之
(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 人材教育部 マネジャー)
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
  • 1999年 社団法人日本ロジスティクスシステム協会 入職

*今回は2回に分けて掲載いたします。
前編(2011年3月3日発行 第215号)より

目次

3.調査結果

3-3 ステップ3 教育カリキュラムの策定

1)教育カリキュラムの策定状況
  図6は、教育カリキュラムの策定状況について示した図である。大手の物流事業者の9割以上が教育カリキュラムを策定しているのに対し、中小では約7割に留まる。カリキュラムを策定していない理由として、
  ① カリキュラムの策定方法がわからない
  ② 策定するための時間がない
  ③ 策定しても実行や見直しが行われない 等
が挙げられた。

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2)カリキュラム策定のポイント
  教育カリキュラムの策定のポイントは、以下に示す「6W2H」であり、この8つの視点で教育カリキュラムの策定や見直しを行うことが有効であると考えられる。
  ①Why   (目的 :なぜ?)
  ②Whom   (対象者の選定 :誰を?)
  ③What   (内容 :何を?)
  ④When   (時期 :いつ?)
  ⑤Who   (講師・指導者の選定 :誰が?)
  ⑥Where  (場所 :どこで?)
  ⑦How   (手段・方法 :どのように?)
  ⑧How Much (予算・費用 :いくらで?)

3-4 ステップ4 教育訓練の実施

1)対象者 ・・・(Whom 誰を?)
  図7は、人材育成の対象者について示した図である。対象領域をロジスティクス、物流、物流業務の3つに区分して質問したが、いずれの領域においても、’課長・係長’、’主任・リーダー’等の「中堅管理者」への育成が必要であるとする企業が多い。
  また、教育訓練の実施度合いと比較してみると、「ロジスティクス領域で働く課長・係長」への教育訓練が、あまり進んでいない状況が窺える。

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2)教育訓練方法 ・・・(How 手段・方法 どのように?)
  教育訓練方法としては、荷主企業も物流事業者も、比較的低コストで実施できる、OJTや自己啓発、社内講師による社内研修を実施している企業が多かった。
  一方で、社外研修を活用する企業も多く、ヒアリング調査では、その理由として、
  ① 内部に指導できる人材が不在(時間的側面・指導レベルの側面)
  ② 外部の専門家による指導を受けられる
  ③ 研修参加者同士の交流やヒューマンネットワークの構築が期待できる 等
が挙げられた。

3)教育予算 ・・・(How Much いくらで?)
  教育にかかる費用は、直接的費用、間接的費用、対象者が教育訓練を受けている間に発生する機会損失や人件費等である。これら費用の削減策は、教育の内部化、宿泊費や交通費の削減、手段や方法の変更、教育の中止・延期等が挙げられるが、金銭的なメリットだけではなく、デメリットについても考慮し、長期的な視点から検討しなければならない。
  図8は、教育予算の増減傾向について示した図である。どの主体も「ほぼ横ばい」とする企業が多い。物流子会社と物流事業者に関して言えば、「増加傾向」と「ほぼ横ばい」をあわせると8割に達する。不況下ではあるが、教育予算を確保し、人材育成に取り組んでいる状況が窺える。

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3-5 ステップ5 評価・フォローアップ

  教育訓練実施後の効果の検証方法は、
  ① 対象者に対する実施後のアンケートや報告書(レポート)の提出
  ② 日常業務の観察
を挙げる企業が多かった。
  図9は、フォローアップの実施状況について示した図である。教育訓練実施後にフォローアップを実施している企業は半数に満たない。その理由として、業務の忙しさやフォローアップ方法がわからない等が挙げられた。

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3-6 ステップ6 社員の成長を支援する諸制度の策定

  組織全体に人を育てる組織風土を醸成することが大きな効果をもたらすが、これは長期的視点で取り組む必要がある。
  ここでは、短期的なポイントとして、外部研修に対象者を派遣する際の、
  ① 自発的参加の尊重
  ② 対象者が所属するチームメンバーへの配慮
について紹介する。

1)自発的参加の尊重
  社外研修への派遣対象者を、各部門の管理者、経営層、総務・人事部門等が選定する企業が多いが、社員の自発的な参加を尊重している企業も多い。また、選定基準としては、対象者のこれまでの職務経歴、経験、業務の繁閑状況を考慮することを前提とした上で、対象者の意志・意欲を確認している企業が多い。
  優れた教育体系や教育カリキュラムを社内に有していても、社外研修の参加者(対象者)が、「会社から行かされている」、「業務多忙なので勉強どころではない」等の消極的なスタンスで社外研修に臨んでいては、せっかくの教育機会が無駄になってしまう。自発的に社外教育に参加しやすい環境を作り、対象者に対して、研修に積極的に取り組むようアドバイスをすることが重要である。

2)対象者が所属するチームメンバーへの配慮
  対象者が社外研修に参加している間、対象者自身の担当業務が滞りがちになる。そのため、対象者は自身で対処し、担当業務と研修を両立させなければならない。
  しかし、社外研修が長期間である、あるいは繁忙期と重なる等の場合は、対象者の業務を、対象者が属するチームのメンバーに割り振ることで対処することになる。これにより、チームメンバーの負荷が増え、不満が噴出する可能性がある。対象者が研修に参加することを関係者へ周知するとともに、業務の振り分けが発生した場合には、チームメンバーへの配慮を忘れてはならない。

4.おわりに

  人材育成の一般的な手順にしたがって、JILS会員企業における人材育成の取組状況について紹介した。単純集計レベルの結果の紹介となったが、自社の取り組み状況と比較(ベンチマーク)する等、この結果が多くの企業にとって有用な情報になれば幸いである。
  JILSでは、この調査結果や企業ニーズをふまえて、2010年度に「物流技術管理士資格認定講座」のカリキュラム改訂作業や、「物流現場改善士資格認定講座」を開講した。また、人材育成の支援メニューをまとめた「物流・ロジスティクスにおける人材育成支援ガイド2011*」も作成した。これからも物流やロジスティクスのスペシャリストの育成を支援する所存であり、今後ともご支援をいただければ幸いである。

*JILS URL「物流・ロジスティクスにおける人材育成支援ガイド2011」
http://www.logistics.or.jp/education/seminar/index.html


以上


(C)2011 Nobuyuki Goseki & Sakata Warehouse, Inc.


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