ロジスティクス・レビュー

第213号モノづくりとロジスティクス(2011年2月3日発行)

執筆者 五十山田 俊
東芝ロジスティクスコンサルティング株式会社 顧問
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
  • 京都大学理学部物理系卒。
  • 株式会社東芝、東芝ロジスティクス株式会社、東芝ロジスティクスコンサルティング株式会社
    において、モノづくり改革とその考え方の普及を行って来た。

目次

1.はじめに

  日本ロジスティクスシステム協会が2006年に定めたロジスティクスコンセプトには「ロジスティクスとは、需要に対して調達、生産、販売、物流等の供給活動を同期化させるためのマネジメントであり、そのねらいは顧客満足の充足、無駄な在庫の削減や移動の極少化、供給コストの低減等を実現することにより、企業の競争力を強化し、企業価値を高めることにある。」と記されている。
  ロジスティクスとは単なる物流ではなく、企業全体の最適化をはかるマネジメントということになる。そして、モノづくりと密接な関係がある。本稿では、モノづくりとロジスティクスについて述べる。

2.企業の活動サイクルとロジスティクス

  企業の活動は図1に示すようにサイクルを描いている。開発・設計により市場に出す商品を造出する。調達により、商品を生産するのに必要な部品材料を入手する。生産では生産計画を立て部品材料を使い商品をつくり出す。販売では作られた商品を顧客に売る。そして、顧客に使われる(消費される)。
  陳腐化するか老朽化すれば、消費者の手を離れて回収され、再利用もしくは処分される。このサイクルを企業活動は繰返している。

図1 企業の活動サイクルとロジスティクス

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  この企業活動を取巻いているのがロジスティクスである。企業活動とともに物が動くところには物流がある。部品材料を調達先から持ってくる調達物流、部品材料の保管、生産に必要な部品材料のピッキング払い出し、製造ラインへの投入、完成した商品のラインからの引き取り、場合によっては輸配送のための梱包、在庫拠点への輸送、商品の在庫保管、顧客への配送、据付、調整、保守サービス品の保管、配送、リサイクル品や、廃棄物の収集運搬等々。
  ただ運ぶ、保管するだけでは物流だが、そこに、企業の経営課題の解決を組み込むことによりロジスティクスとなる。企業の活動サイクルを通じて、その全体最適を物の動きと情報の流れの視点から追及するのがロジスティクスである。
  ロジスティクスの概念は非常に大きく、その戦略は企業活動そのもの戦略ともいえる。

3.ロジスティクス視点によるモノづくりの課題

(1)開発設計

  ロジスティクスと開発・設計は直接の関係はないと思われがちだが、そうではない。商品の設計によって、ロジスティクスは大きな影響を受ける。
  商品の機種数は、「市場に対して品揃えをしたい」「競合他社に対し対抗商品が欲しい」といった要求から増えがちである。生産される機種数が増えると、当然ながらロジスティクスで取り扱う品種数が増えることになる。在庫される品種が増え、管理の増大と在庫の増大を招きやすい。製品寿命を見極め、常に機種数を管理する必要がある。
  部品材料の標準化・共通化も重要である。コスト追求のあまり、商品毎に最適設計をして、その機種にしか使われない部品材料が採用されることがある。その結果、部品材料の種類が増加し、調達の管理も大変になり、同時に部品材料の保管種類と量が増大することになる。
  更に、生産終了機種の部品が残り、廃棄せざるを得なくなる。機種のシリーズ化を進め、できるだけ部品材料を共通化することが重要である。
  エコ設計は当然のことである。設計のときから商品の使用中、使用終了後、できるだけ廃棄物が出ないようにする必要がある。
  また、商品の形状と梱包設計は保管や輸配送の効率に大きな影響を与える。
  ロジスティクスの視点から開発・設計は非常に重要である。

(2)調達

  部品材料をできるだけ少ない在庫で、必要なものを、必要なときに、必要なだけ、製造ラインに供給することはロジスティクスの重要な使命である。
  発注方式には、定期不定量発注、不定期定量発注、都度発注などの方式がある。部品材料の価格、納期、入手のし易さを考慮して、発注方式を決める必要がある。
  生産に連動したJIT(Just in Time)納入と製造ラインへの投入は部品材料のロジスティクスでもっとも重要な課題である。トヨタのかんばん方式はもっとも有名な方式であり、ロジスティクスにとって非常に有効な手段である。
  また、VMI(Vendor Managed Inventory)という方式も有効な手段である。部品材料の供給者がメーカーの工場内もしくはその近在の倉庫に部品材料を置いておき、メーカーが使ったものだけ供給者からメーカーへ売上を立てる方式である。メーカー側は、部品材料の資産圧縮につながる。供給者側は、実際に使われる数量が把握でき、SCMの精度を上げることができるメリットがある。
  調達にかかわるロジスティクスによって部品の同調率の向上、部品材料の在庫削減に繋げることができる。

(3)モノづくりの課題

  売れるスピードで作る生産体制の構築はロジスティクスの最重要課題の一つである。
  究極は顧客の注文に応じて一つ一つ直ぐに作って顧客に渡すことになる。江戸前のすし屋のイメージである。お客が注文したらすぐに材料を切り、にぎって出す。売れ残るリスクを避け、売れる(た)ものだけ作れば工場の仕掛と製品在庫は極小化もしくはゼロにできる。
  そのためには、生産に連動して必要な部品材料を必要なだけ必要なタイミングで製造ラインに供給する生産ロジスティクスが重要である。ここでもかんばんは有効な手段となる。いろいろな工夫が成果につながる。
  ロジスティクスの視点からモノづくりも改革が必要である。
  大量生産時代、少ない品種の商品を大量に生産するために、非常に長い、工程数の多いライン(超長ライン)が一般的だった。1本の超長ラインは、単品種の大量生産には適しているかもしれないが、以下にあげる問題がある。
① ラインアンバランスによる手待ちのムダ
② サイクルタイムが短いが為の取り置きのムダ
③ 超長コンベア上にのる仕掛かりのムダ
④ 情報が伝わりにいがための不良のムダ
⑤ 機種切換がやりにくい段取替えのムダ
⑥ 作業者間の距離があって助け合いができないムダ
⑦ 作業分割し過ぎてLCA(Low Cost Automation)ができないムダ
  小ロットで且つ多頻度に機種切り替えを行う生産では、複数の短いコンベアを設置して、少人数で作業をする方式が採られる。1人当たりの作業領域・工程が多くなるので、分業のやり過ぎによる正味作業率の低下を防止できるとともに、作業員間の助け合いも可能となり1人当たりの生産性が高くなる。分業をやりすぎると1人当たりの生産性は落ちる。
  コンパクトショートラインをU字に曲げて、入口と出口をいっしょにしたのが、U字ラインである。
  U字ラインの基本は、
① 入口と出口をいっしょにして、1個完成、1個投入の原則で、ライン内の標準手持ちを守り、
② 作業者が多工程持ちで助け合いを行ない、
③ 作業者数の増減で生産能力を変化させ、
④ 部品の前方投入などの工夫で、工程間の間締めを行ない、歩行ミニマムにし、品質に関わる工程はできるだけLCAで自動化する。
  U字ラインに一人だけ作業者を入れ、一台ずつ完成させていくやり方が多く採用されている。セル生産方式とか屋台生産方式といわれている。

図2 U字ライン(セル生産方式)

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  更に、製品の在庫を”0”にし、顧客からの受注によって組み立てて、配送する受注組立生産(BTO: Build to Order )が、「売れる(た)ものだけ作る」生産システムとして展開されている。見込み生産は小僧寿司やスーパーで売っているパック入りの寿司、製品補充生産が回転寿司、受注組立は、所謂一つ一つ注文する寿司屋、受注生産は注文を聞いてから魚を買いに行く寿司屋に例えれば理解しやすい。
  受注組立生産へは、今まで述べた量産品の仕込み崩しからのアプローチの他に、個別受注生産の受注から納入までのLT短縮のため、製品の組合せメニューによる受注化して行くアプローチがある。受注組立生産は、部品、ユニットを予測情報に基づいてストックしておき、顧客からの受注仕様にしたがって組み立てて出荷する。その為に、最終製品を組合せ設計にするなどの改善が必要となる。
  何れにしても、受注組立生産は、実受注に基づいて生産するため、最もマーケットの動きに追従しやすい生産方式といえる。

図3 受注組立生産(BTO: Build to Order)

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(4)販売の課題

  ロジスティクスの視点から見ると販売には課題が多い。
  市場での売れるスピードを正確にモノづくりに反映させないと「売れるスピードでつくる」ことはできない。販売には販売計画や重要顧客対応など人為性が入り、「売れるスピード」がひずむことが多い。人為性排除が必要となる。
  販売側は、手元に在庫を持ちたがり、小規模な在庫拠点を増やしたがる傾向がある。販売の効率を落とさない在庫拠点の統合と階層の圧縮が重要である。在庫拠点が統合されれば在庫は減る。在庫拠点を統合していくと、顧客の注文に応じてすぐに配送する「多頻度スピード配送」が必要となる。
  需給の人為性はさまざまな弊害を招く。
  販売の意欲先行で、商品の実力以上の販売予測が示されることが多い。そして、モノづくりのための余分な設備・人・外注・部品材料や物流のために余分なスペース・輸送手段(トラック等)が準備される。実売が計画を下回ると、商品と部品材料の余剰在庫と、過剰なインフラ・リソースが残ることになる。モノづくり側は販売計画を信用しなくなり、計画をディスカウントするようになる。たまたま、販売計画以上の実需があると生産が間に合わず、販売側は「工場は売れるものをつくってくれない」と不信感を抱くようになる。
  販売ノルマ達成のため、月末や期末に集中して押込み販売が常態化しやすい。モノづくりと物流は月末、期末のピークに対応するインフラ・リソースを確保しなければならなくなる。一方、月初や期初は販売が底となり、インフラ・リソースを遊ばせるムダが発生する。顧客に無理やり押し付けられた商品は返品の危険が高い。
  特定顧客のために売れ筋で品薄になりそうな商品を確保する囲い込みもよくあるケースである。そうすると、他の顧客から注文が入っても販売できない。結局、特定の顧客からは注文が入らず売れ残ってしまうことがある。
  このような人為性を排除する施策の一つが「受注組立生産(BTO)」である。商品の在庫をなくし、顧客の注文を受けた実需だけに対応して生産をする。顧客とモノづくりの間の納期等の調整はモノづくり側にお任せ、販売側は、市場動向と商品の売れの実力の把握、販売促進に特化する。顧客とモノづくりの間を直結することで人為性を排除する。
  受注してから生産していては間に合わない商品もある。そういった商品は最小限の在庫を持ち、顧客の注文に対し即納し、売れた数だけ生産し補充するやり方である。「受注組立生産」に準ずる方式で、顧客の注文を在庫の出荷指示と同時にモノづくり指示にすることで人為性を排除できる。

4.物流とIE

  物の動き(物流)はロジスティクスのベースとなる。モノづくりがロジスティクス視点で改革されると、モノづくりと顧客をつなぐ多頻度スピード配送が必要となってくる。その体制を作り上げるには、倉庫内作業を改善しなければならない。庫内作業のスピードと正確さを上げ、トラック接車~荷降ろし~格納~ピッキング~荷揃え~梱包~積込み~出発の時間を短縮し、荷物の回転を上げることが重要である。
  物流作業の改善のためにIE手法が有効である。IE手法はモノづくりの改善によく使われているが、物流作業にも有効である。荷物の動きを分析する工程分析を行うと、荷物が何もされてない停滞が浮かび上がってくる。ただムダに時間が過ぎていることが定量的につかめる。
  また、作業者の稼働状況を調べるワークサンプリング手法で分析すると、付加価値のつかない作業が浮かび上がってくる。手待ち、作業のやり直し、歩行、・・・が定量的に把握できる。
  IE手法でムリ・ムダ・ムラをあぶりだし改善をすることで、物流作業の品質とスピードを上げることができる。読者もお試しになっていただきたい。

以上

参考文献:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 ロジスティクス基礎講座テキスト2007年版


(C)2011 Shun Ikaida & Sakata Warehouse, Inc.


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