ロジスティクス・レビュー

第203号物流の問題点の見つけ方(2010年9月2日発行)

執筆者 平野 太三
(有限会社SANTA物流コンサルティング 代表取締役社長)
 -物流改革コンサルタント Dr.SANTA-
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 昭和61年 甲南大学法学部卒業
    • 同年   ユーザックシステム株式会社入社
      物流担当システム営業として100社を超える物流現場分析に携わる。
    • 平成12年 Dr.SANTAのネーミングで物流コンサルティング(物流コスト削減、物流指標の作成、物流サービス向上、物流プロジェクトの運営)を開始。
    • 平成15年にユーザックシステム株式会社を退社後、有限会社SANTA物流コンサルティングを創業。
    • 講演回数年間50回。(講演受講者数10000人突破)
    所属団体
    • 日本物流学会正会員
    • 物流技術管理士会理事
    主な論文、著作
    • 「3ヶ月で効果が見え始める物流改善【現状把握編】」(㈱プロスパー企画)等
    • 包装タイムス、物流ニッポン、マテリアルフロー等で「Dr.SANTAの物流講座」の連載を行う。

目次

1.物流の問題点の発見

  物流改革を実行する時に一番初めに考えないといけないことは、「物流の問題点の発見」である。問題点を認識しなければ次のSTEPの改善に進むことができない。私の経験則で申し上げると、物流改革がとても進んでいる物流現場では問題点は100個程度、まだまだ初歩的な段階と思う物流現場では200~300個程度の問題点は存在する。この問題点の洗い出しの時間をとって全部最初に行うのがDr.SANTA流である。このやり方にこだわらなくても、改善活動が永遠に続く仕組みができていれば良いのだが、全社で考えた場合に何を第一優先と考えるべきかを明確にする必要がある。物流現場では問題と認識をしていても、他部門がからむもの、あるいはお客様とのルール変更が必要なものであれば、過去に言い続けたが何も変わらないため、もう言ってもしかたがないという考えが働き、検討さえできないこともある。また、お金がかかる改善は、検討する自体がタブーだと考えている人も多い。お金がかかってもそれ以上の改善効果が確実に出るのであれば、改善を進めてもよいという考えが出てこないのである。まず、最初は改善策の有無にこだわらずに、ありとあらゆる問題点を出すことから始めるべきだと私は考える。

  物流の問題点は「顕在化問題点」「潜在化問題点」の2つに分かれる。顕在化問題点は文字通り物流現場で認識している問題点であり、潜在化問題点は「忘れている問題点」「気付かない問題点」がある。物流では、このシーズンになれば必ずこの問題が発生する、ということが少なくない。例えば、繁忙期直前に在庫が膨らみ保管料が増加することもシーズン限定の問題点である。本来であれば問題点が発生した時に記録を行い、忘れないうちに問題点の発生原因を検討して来シーズンに同じ過ちを繰り返さない対策をたてるべきであるが、忙しいとどうしても出荷優先になってしまい、改善は後回しになって、同じ過ちを毎年繰り返すことになるのである。一方、気付かない問題点は、長年同じ場所で物流をやっていると今のやり方が普通と考え、感覚が麻痺して問題として感じない場合も多い。それどころか、長年改善を繰り返して行っているというプライドがあり、このやり方が正しいという固定観念にとらわれて、考え方を変えないベテランも存在する。物流改革は、「今のやり方がベストでは無いはず、何か他のやり方が必ずあるはず」という気持で取り組まないと進まないものである。この現象はピッカーと検品者が同じ人がやってはいけないということと同じである。同じ人が検品すると、「間違っていないはず」という先入観が入り、「間違っているかもしれない」と思いながら検品する人よりも間違いを探し出す確率が低くなるものである。

2.問題点のあぶり出し

  問題点を多く出すための方法として、業務別問題点整理が考えられる。物流メンバー全員を集めて、「現在の物流の問題点を各自出してください」とリーダーが言うと、20~30個は順調に問題点が出てくるが、しばらくするとぴたっと止まってしまう。「他に何か問題点は無いですか?」と聞いても出てこない。その時に、「返品で問題は無いですか?」とか、「この得意先で問題は発生していませんか?」とか、「この商品で問題が発生していませんか?」という様に「時期」「業務」「得意先」「商品」の視点で具体的に絞り込んでいくと、さらさらと問題点が出てくる。図1の業務別問題点整理がその例である。

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図1 業務別問題点整理

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  多くの問題点をこのシートに書き込んでいくと、空白の欄(例えば、棚卸)があった場合は、問題点が無いのか、もしくは、検討していないのかわかる。

3.気付かない問題点を知る

  前述した様にずっと同じやり方をしていると、問題点が気付かないことも多い。これを見つけ出す方法としては、「業務の流れを分析する」「データを収集する」「他社の事例を知る」がある。業務の流れを検討する中で、「伝票の手書き(手書き、転記は問題点と捉える)」、「ピッキングに行ったが在庫が無く手戻りが発生(業務上の例外処理の中で問題点が隠れている)」がわかる。また、在庫データ、作業効率データ、物流コストデータを取った時に、効率が悪い日、個人による効率の大きな差が明確になることにより、問題点がわかることもある。図2の物流コスト管理の表をご覧頂きたい。

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図2 物流コスト管理

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  前年同月対比の分析は、物流がどの程度改善が進んでいるかを把握するために作成する必要がある。よく、鳥の目、虫の目という言葉を聞く。虫の目で小集団活動等の改善を進めて効果を出すが、鳥の目で全体の状況を把握しなければ本当の効果検証ができない。極端な例で言うと、作業改善でピッキング効率を10%改善すると部分的に改善効果はあったことになるが、効率アップをしても人を削減していないと人件費という視点では全体の効果が出ていないことになる。また、人件費が10%削減されて月間20万円改善されても、情報システムを導入した経費が月額21万円発生していれば、部分的には効果が出ていないことになる。この様に毎月の物量がどのくらいあり、それに対応した人員配置(もしくは残業費)になっているか、1ケース当りの人件費がどうなっているかを分析することで、問題点が見つかるのである。1ケース当りの平均運賃が増加している場合は、どういう理由で運賃が増加しているかを分析することで問題点が把握できる。

4.問題点の整理

  この様な手順で問題点を出した後に、問題点を整理する必要がある。物流現場は各業務のスペシャリストの育成に重きを置いたために、物流全部の業務に精通している人を保有している企業はほとんどいない。出荷業務に精通していても配送はわからないとか、在庫管理は知っているが輸入を知らない、というのが一例である。図3をご覧頂きたい。

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図3 問題点列挙

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  物流の問題点をリストアップした後に、経営者、主要物流メンバー、全部門の代表者に参加してもらい、すぐに改善に取り組まないといけない問題点を10点、半年先に取り組むべき問題点は8点、という様にルールを事前に決めておいて配点をしてもらう。点数付けで注意して頂きたいことは、他のメンバーに自分の配点を知られない様にして点数付けをして、後でまとめて入力することである。社長の配点を知った後で自分の配点を考えると、「自分は3点と思っていたが、社長が10点だと点数を変えないと何を言われるかわからない」と、余計な判断が入り本来の点数が変わってしまうからである。重要なのはそれぞれの考え方(何故重要と感じたのか、何故重要と感じなかったのか)を知り、「同じ情報を共有化した上で、全社で物流の問題に対してどう取り組むか」を考えていくことである。また、各部門の優先順位と全社の優先順位は当然変わる。全社での優先順位の中では、難易度が高いが各部門が協力すれば大きな効果が出る可能性が高い改善も出てくる。「物流の問題は物流で考えてよ」という当初の状況から、「物流の問題は全社で考える」という状況になれば、改善できる項目も増加するし、部門改善に比べて全社改善の方が効果は著しく大きい。

以上


(C)2010Taizo Hirano & Sakata Warehouse, Inc.


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