ロジスティクス・レビュー

第201号3PLが実現する今後のロジスティクス(後編)(2010年8月5日発行)

執筆者 増井 秀典
サカタウエアハウス株式会社 取締役 システム研究所長
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1986年 鐘紡株式会社入社、生産技術研究部門、物流企画部門にて化粧品を中心とした物流センターの構築・設計・システム化を担当(在籍中に第7回流通システム大賞・通産大臣賞を受賞)
    • 1999年 朝日アーサーアンダーセン株式会社入社、2002年 ベリングポイント株式会社にて、SCM/ロジスティクスを中心としたコンサルタント(マネージャー)としてクライアントの業務改革(BPR)および事業・物流戦略の構築・実行を担当
    • 2005年 現職のサカタグループ入社、サカタウエアハウス株式会社、サカタインフォ株式会社にて倉庫・3PL事業の推進、SCM・ソリューション事業の推進を担当
    • (社)日本ロジスティクスシステム協会認定 ロジスティクス経営士

前編(2010年7月20日発行 第200号)より

目次

Ⅲ.3PLの実態

4.荷主企業の認識課題

  このデータは、荷主企業における「3PLへ委託後の問題点や課題」それから「3PL事業者を変更した理由」に関するアンケート結果です。結果としては、「3PLがロジスティクスのプロを十分に有していない」、「3PLが提案・コンサルティングの提供ができていない」ということが主な課題として挙がっています。

5.3PLの実態(認識課題のギャップ)

  ここまでで、3PL側、および荷主側それぞれの課題等を挙げましたが、最後にその整理を行います。
  先述のアンケート結果から見えるのは、3PL事業者としては、荷主企業の要望になかなか応えられていないという認識であり、一方、荷主企業としては、3PL事業者が要望に応えてくれないという状況であることがわかります。また、3PLとしては利益が出ていないのにコスト削減はなかなか難しく、加えて荷主企業の要求にすぐに応えられるような材料がないのでなかなか提案ができないということかと思います。さらに、人材の育成ができていないので当然良い人材が提供できない、情報システムも十分ではないので提供できないということが挙がっています。要は、利益が出ない状況下では何も提案できないし、品質も維持できないといった悪循環になっているわけです。そういったところが、3PL事業者と荷主企業との間での認識のギャップ、思いがなかなか合っていない、或いは実現できてないといったところがあるということかと思います。

6.課題解決のための施策(方向性)

  以上を踏まえ、3PLのあるべき姿を考えてみたいと思います。まず、1つ目は、3PL事業者が利益を出して、かつ荷主企業の物流コストの削減を図れること。2つ目は、3PL事業者がロジスティクスのプロフェッショナルを有し、荷主企業が満足できるような品質、サービス、情報システムを提供できること、に纏められると考えます。
  要は、このあるべき姿にどのように持っていったら良いかということを3PL企業と荷主企業が共に考えていく必要があります。これを実現するための施策として、代表的なものを整理するとともに、私共の認識を交えて整理しました。
  その方向性としては、「企画・立案・システム」、「契約」、「企業責任」、「人材・育成」を挙げており、この後、各々の細部を説明したいと思います。

Ⅳ.今後のロジスティクス ~弊社の視点を交えて~

1.パッケージサービスの導入

  ここからは、「今後のロジスティクス」という事で、弊社の考え方、視点を交えて考えていきたいと思います。
  まず、パッケージサービスの導入という観点でご説明します。企業の活動で共通して言える事は、「品質は上げたい、でもコストは下げたい」ということが挙げられます。
  サービスという面では、どうしても委託側からは、コストの中味が見えないという事が多く、一方、受託側からするとコストの中味を見せると交渉が不利になるため、全ては見せられないという状況があります。しかし、コストが見えても、その内容に妥当性があれば良いという考え方もあります。その妥当性を見出す為に、ある程度の妥協、または標準化を行うという考え方があり、その事例としてパッケージサービスを挙げております。
  ここで提示する事例は、1つの物流センターの中に複数の荷主企業に入って頂いて、そのサービスの提供に関わる費用や資源等を分割で負担して頂くことで企業単位の負担を軽減するという、1つの考え方を示しています。
  これまで物流というのは、荷主企業単位にオリジナルの仕組みを作って運用していくという事が多かったわけですが、今後は高度化されるサービスレベルに、共通化、共有化を加味し、リーズナブルなコストで対応していく仕組みが必要だと考えています。

2.共同物流の展開

  ここで例として挙げているのは、メーカーの倉庫と卸の倉庫が1つの共同物流センターの中に共存していて、管理するシステムも共同で使うというものです。お客様からの注文は共同受注システムを介して取り込み、注文・発注情報が卸やメーカーで共有され、この共同物流センターを介してお客様に商品を出荷します。
  当然今までは、メーカーから卸に商品が移され(出荷され)、卸からユーザーに届いていたわけですが、本構想では、メーカーから卸への移動(出荷)部分が共同物流センターの中だけで処理されるという考え方となっています。
  現実としては、ここまで踏み込んだ共同物流センターはまだありません。今のところ、メーカーの共同物流センターとか、卸の共同物流センター等、それぞれの業種での実績はありますが、流通上の共同物流センターは、まだ実現されていないと思います。
  このような事が実現していけば、3PLとしても新たなビジネス展開の可能性があると考えており、弊社としても、それを実現できる仕組みや体制等、ご提案できる準備を進めていって、新たなビジネス展開に望まなければいけないと考えています。

3.情報システムの対応

  次に、情報システムの対応について考えます。情報システムは、ロジスティクスの実行において、欠かせないものになっています。本日は、短い時間ですので、ほんの触りだけとなります。
  荷主企業としては、3PLが必要なシステムを提供するのは当たり前という事で、その付加価値というのは殆どなくなってきているのが実態かと思います。その為、荷主企業に合ったシステムを提供できない3PL事業者はNGと言われる事になります。
  弊社としましては、約30年前、3PLという言葉が日本で使われる以前から物流業務におけるシステム化を進めてきました。現在、そのシステムの基盤を基に考えておりますのは、荷主企業様の要望に何でも対応すれば良いというものではなく、必要に応じた形で提供し、かつ安価に早く提供できるパッケージソフトと言われるものと、お客様が必要とする機能を的確に把握、理解し、個別に全部作り込むシステムのカスタマイズ対応です。
  一方、新しい顧客の要望に対応するという中では、例えば、震災対応における事業の継続性への対応、または流通BMSなどの新しい取り組み、仕組みへの対応も必須になってくると思っております。

4.改善活動の推進

  ここでは、改善活動の推進という事で、3PL事業者にロジスティクスのプロ、現場力を荷主企業様が求めておられることへの対応策として、私共の対応例を挙げます。
  弊社では、現在、5S活動を推進しており、2009年、JILS様の全日本物流改善事例大会におきまして、優秀事例として表彰頂きました。このように、現場での対応を社外で認めて頂くことで社内、現場のモチベーション、スキルを高めていき、「現場力」というものを上げていくといった活動を行っています。

5.契約体系の進化

  ここでは、3PLと荷主企業における契約関係のあるべき姿の1つとして、「ゲインシェアリング」という考え方を紹介しています。
  ポイントは、3PLと荷主企業間において得られた改善効果を利益分配するというところですが、日本ではまだまだ実績は少ない状況です。その理由としては、3PLも荷主企業も両方同じで、「物流管理指標の設定が困難」ということが挙がっています。これは、ゲインシェアリングにおける利益の分配を行うための条件設定ができないために導入できないということのようです。

6.管理指標(KPI)の導入

  では、管理指標が設定できたら、ゲインシェアリングは実行できるのかという事で、管理指標、いわゆるKPIについて触れたいと思います。管理指標は、3PL、荷主企業間で活用目的を合意して設定するという事になるのですが、運営組織も決めてPDCAを回していくような体制を作っていくという事が、3PL事業者と荷主企業様との間で必要であると考えています。
  私共でも独自に管理していると指標というものがありますが、現時点で荷主企業様とゲインシェアリングとして運用できるものはありません。しかし、管理指標を活用した運営というお話は荷主企業様からご要望があり、現在、弊社でも研究・検討を進めており、今後対応していきたいと考えています。
  先程紹介したアンケートデータを見ると、現時点ではまだ浸透していない状況ではありますが、今後、KPIを導入してゲインシェアリングに結びつけるというような動きが益々増えてくると思われます。

7.許認可の取得

  次に許認可の取得ということについて紹介します。ロジスティクスを展開する上では、「法令を遵守した業務の遂行」という事が必須になってきます。
  資料として挙げていますのは、化粧品の製造業許可証と医薬部外品の製造業許可証です。手前味噌になりますが、これは私共で取得した許可証(写し)になります。例えば、輸入化粧品の業界であれば、これまでは制約を受けずに物流業務を行えていたわけですが、改正薬事法の影響で製造責任を明確化しなければならず、製造販売業の取得が義務付けられました。私共としましては、輸入化粧品業界様向けに物流サービスを展開するにあたっては、このような許認可を取得して、法令遵守のもとで、高い品質の物流サービスを展開させて頂いているわけです。

8.情報セキュリティへの対応

  ここでは、情報セキュリティの対応について触れます。弊社では、現在プライバシーマークの取得を進めておりますが、荷主からは、社員教育、監査・点検の実施など、組織的な対応が望まれています。物流情報としては、非常に重要な情報をやりとりしているわけですので、3PLとしても、ソフトウエアやプログラムに関する具体的な対策だけでは無く、情報の重要性について荷主企業とのギャップを埋めていくことが重要であると考えます。

9.まとめ

  最後にまとめとして、3PLのあるべき姿を整理します。
  ① 3PL事業者が利益を捻出でき、かつ荷主企業の物流コスト低減を図れること。
  ② 3PL事業者がロジスティクスのプロフェッショナルを有し、荷主企業が満足できる高品質な物流サービス、情報システムを提供できること。
  そして、今後の役割、機能としては、企画・提案能力・情報システム、人材・育成能力、企業責任能力、契約締結・実行能力が必要であり、これらを組み合せることが3PLとして求められるロジスティクス力であると考えます。弊社としても、これを重視し、お客様に価値をご提供できるよう、尽力して参りたいと考えている次第です。
  かなり駆け足になり、申し訳ございませんでしたが、私の方のお話はこれで終わりにさせて頂きます。どうもありがとうございました。

以上


(C)2010Hidenori Masui & Sakata Warehouse, Inc.


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