ロジスティクス・レビュー

第20号アウトソーシングにおける荷主企業の課題(2002年11月21日発行)

執筆者 高橋 昭博
高橋技術士事務所 代表
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1957年3月 慶応義塾大学 経済学部卒業、キリンビール(株)入社
    • 1980年4月 キリンビール(株) 物流部担当部長
    • 1994年1月 同社 退社、 同月 (株)カサイ経営 取締役
    • 1997年3月 同社 退社
    • 1997年4月 高橋技術士事務所を設立 代表
      現在に至る
    経営コンサルタントとしての資格等
    • 技術士(科学技術庁登録JR-691号 経営工学部門 専門分野:物流および包装)
    • 早稲田大学 アジア太平洋研究センター 講師
    • 日本物流学会正会員、物流士、事務管理士、宅地建物取引主任者
    専門分野
    • 物流管理組織、物流コスト管理、物流ネットワーク、 輸送システム
    • 物流子会社管理、物流共同化、トラック運賃制度、物流作業料金制度
    • 物流マン教育 他
    著 書
    • 1998年 『物流部業務完全マニュアル』  アーバンプロデユース (370p)
    • 1997年 『-現場から発想した-物流マン必携マニュアル』プロスパー企画(339p)
    監 修
    • 1999年 『図解 物流のしくみ』 ナツメ社(174p)
    共 著
    • 1994年 『実例 業種別のトラック運賃がわかる本』 日本流通新聞社
    • 1994年 『物流共同化 実践マニュアル』 日本能率協会
    • 1993年 『物流効率化 大事典』 産業調査会
    • 1986年 『物流メカトロ戦略』 同文館
    誌紙出稿
    • 輸送経済新聞(94年から50回連載)
    • LOGISTICS(94年から連載中)
    • 物流情報(財)情報技術センター(97年)
    • 流通設計(97年)他

目次

1.はじめに

 労働力の流動化とあいまって、業務の外部化が手軽に行われるようになった。アウトソーシングは、今や安易なコスト削減の手段と化しているといっても過言ではあるまい。受け皿となるアウトソーサーの中には、「安かろう悪かろう」を地でいく例も仄聞する。この結果として委託側の荷主企業は、コスト削減と引き換えに新たな操業上のリスクを背負い込んでいると考えられる。
 今回は、アウトソーシングの現状・問題点を整理し、これに関わる業務委託者(簡単のために、以下荷主という)の課題と解決の方向を考えることにする。

2.業務委託のルール

 この問題の根源は、荷主が業務委託の基礎知識がないまま、勝手な理解のもとにコスト削減を求めてアウトソーシングに走るところにある。
 本テーマの展開に直接関わることなので、はじめに最低限の業務委託ルールを掲げる。

(1)受託業者の独立性

 業務委託とは、荷主が業務や事務の処理を委託し、受託業者がその処理を承諾して、自己の責任において受託業務処理をある程度の自由裁量をもって、独立して行うことをいう。請負の場合と同様、受託業者が自社の事業として行うものであり、このため労働者が委託者の事業所で業務に従事していても、荷主は労務管理を全く行わず、労務指揮は全て受託業者が行い、労働者は受託業者の指揮命令下で業務や事務を遂行する。

(2)安全管理は委託者と共同で

 受託業務が荷主の事業所内や工場で行われる場合は、施設管理・災害事故防止、警備や機密保持の理由から所定の拘束を受けるのはやむを得ないが、その遵守義務を負うのはあくまで受託業者側であり、荷主が直接これらの指揮監督をしてはならない。このように、受託業務の遂行については受託業者の独立処理が原則であるが、安全上の管理等の指図は荷主側が行っても問題はない。

(3)「混在」の解釈

 受託し、就労する「作業場所」については、同じ部署や同じ部屋で作業する場合でも、業務が独立しており、客観的に区分されて受託業者側の責任の管理下にあれば混在には該当しないとされる。

(4)対価の算定

 対価設定については、実費ではなく、一定金額または作業工程別工数×作業工程単価の形で算出されることが望ましい。業務委託では、対価は処理した業務の報酬として支払われるものであり、一般的に労務費による計算は請負の趣旨に反するので、仕事の対価として一定の金額を見積もり算出することが多い(労働者数×従事日数×単価という形は労働者の労務に着目する決め方なので避ける)。

3.アウトソーシングの問題点

 荷主は、工場長のみならず購買担当者・現場管理者を含めて、外部委託に関わる問題点をまず理解するべきである。以下、筆者がお手伝いした企業の事例等から、問題点をまとめてみよう。

(1) 業務の外部委託は荷主企業の購買規定上の購買対象物品外であることから、業務移管目的は事業所ごとにまちまちで、独自の方法で契約を行うことが多い

 工場の場合、基本的に工場長は製造計画遂行の一環として製造コスト責任を負っている。このため工場長は、これまでは製造部門関連の作業はコア作業として製造能力規模・製造アイテム・地域性に則った作業現場労働力の調達方法を伝統的に採用し、自社従業員(正社員・臨時社員・アルバイト等)のみに従事させてきた。最近になって、労働力を外部から調達することによってコストダウン策とする動きが活発になったが、自然発生的に工場ごとに行われるようになったことから、外部委託の目的・委託範囲・契約取り決め方も工場独自のものとなっている。

 ただし物流関係作業については、これまでも請負作業の形で外部業者に委託してきた。多くの荷主企業では、総物流費を把握する必要から、製造コストの一部である工場構内物流費については本社の物流部門が契約ルールを定めており、そのルールは委託作業範囲・地域性を加味した職種別人件費単価・間接費の許容率など、かなり精緻な取り決めを備えている。したがって、物流部門では上記1の外注ルールは理解されているようである。

(2) 荷主企業における業務委託に関する管理体制は、いずれも概括的な運営ルールにとどまっている

 製造ライン作業または周辺作業を外部業者に委託するに当たって、法規制によって自らの指揮命令が受託業者作業員に及んではならないことを末端まで徹底せず、大まかな管理体制となっている。作業現場では労務提供的な運営となり、二重管理の弊害が生じることが多い。

(3) 受託業者作業員の技能いかんが荷主企業事業所の操業度に与える影響度が大きくなっている

 これまでのように荷主企業が製造ライン全ての稼動管理を自ら行う場合は、厳格な指揮命令系統を構築し、必要な技能レベルの適材を必要数配置するとともに、組織的・継続的に技術訓練を実施してきた。しかし製造機器の運転・修理などまで業務委託範囲が拡大するに伴って、受託業者サイドの作業員の技能いかんが製造ライン全体の操業度に与える影響度が大きくなっている。とくに製造ラインの上流から中間にかけて外部委託する場合には、最悪の場合操業停止に至ることもあり得る。

 しかし、このような事態を想定して、個々の作業について技術的な要求レベルを受託業者に示すことは少ない。

(4)荷主企業は、業務委託の目的の重点を経済性追求におき過ぎる

 荷主は、業務委託の主目的を経済性(人件費格差)追求のみにおくことが多い。契約担当者が委託契約を締結するに当たって、荷主は少しでもコスト低減を図るために高賃率の監督者や作業リーダーを認めず、配置人員数を制約するなど、作業管理体制に不備を招かざるを得ないケースが多い。

 裏腹に、荷主の現場管理者は一方的に高技能者を指名して定常的かつ固定的に配置することを要請する。この結果、受託業者は契約職種より高技能レベルの作業員を配置せざるを得ず、高い人件費が受託業者の採算を圧迫している。

(5)作業コストを度外視した競争事業者の参入が頻発している

 受託業者側の作業コストのほとんどを占める人件費は下方硬直的である。荷主が求める技能レベルの作業員を所定の人数だけ配置すれば、作業コストは一定の金額以下には下がらないことは自明のことである。また作業条件が荷主側の設備状況によって決まることから、受託業者の工夫による作業改善の余地は少ない。このため、いったん作業委託を行って初年度にコストダウンが実現した後は、荷主側が人員削減につながる設備改善を実施したり大幅な増産体制をとらない限りは、それ以上に受託契約金額を低減することは容易ではない。

 しかし、コストを度外視した競争事業者の参入提案が頻発している。この参入を許す結果として、操業停止や労働災害などのリスクが現実に増えるだけでなく、荷主企業は真のパートナーであった物流事業者を排除して禍根を残す愚を犯すケースが出てきている。

(6)製造コストに占める外注コストの比率が増えている

 業務委託に伴う「コストと作業品質とのトレード・オフ」に直面する中で、業務委託の拡大に伴って製造コストに占める外注コストが急速に増えている。例えばA社では業務委託費が年間で72臆円に上っていることから、今後は適切なコスト管理が求められている。

4.業務委託者(荷主)の課題と解決の方向

 この問題の根源は、荷主が業務委託の基礎知識がないまま、勝手な理解のもとにコスト削減を求めてアウトソーシングに走るところにあることは既に述べた。外部委託の基本ルールが理解されたことを前提として、上記の問題点を踏まえて、荷主が抱える課題と解決方策を考えることにする。

【課題1】業務委託に伴う操業リスクを回避すること

 業務委託の範囲が末端の現場作業を超えて生産関連等のコア周辺業務に拡大する結果、受託業者の作業品質が荷主企業の操業度に及ぼす影響が一段と大きくなるだけでなく、業務委託作業について安全管理の見直しが求められている。
 因みに、B社における労働災害発生状況を見ると、業務委託範囲拡大の結果、この1年間で荷主が雇用する作業員(社員)の災害件数は半減する一方で、業務委託先の災害件数は1.8倍になっている。

【解決方策】
 業務委託する結果として、これまで荷主が社員教育を通じて保ってきた運転管理技術・メンテナンス技術および安全知識の水準が、そのまま受託業者に引き継がれることはないと考えた方がよい。コスト削減が外部委託の目的であるとすれば、この「コスト」はあくまでトータルコストでなければ意味がない。
 荷主がISOシリーズを取得しているならば、当然受託業者にもそのレベルでの作業遂行を期待しなければならない。そのためには、とくに委託業務範囲と荷主サイドに留保する業務との接点に着目して作業マニュアルを再整備し、まず受託業者の管理者を教育指導し、その上で受託業者内での社員教育を徹底させることが必要である。また、安全を含めた改善チームを荷主・受託業者が共同でつくり、日常的に作業現場の巡回点検を行うことを制度化することも有効である。

【課題2】業務委託に伴う低レベル作業員配置を回避すること

 荷主企業が契約料金の低減を強く求める結果、委託業務の難易度やリスクに対応できない低賃金(=低レベル技能)労働者が投入され、技術上・安全上の問題が発生する可能性がある。

【解決方策】
 荷主企業は、業務委託範囲の作業マニュアルに準拠して、作業品質・コスト面での目標を明示した「契約基礎資料」を作成することが必要である。これにより、荷主企業と物流事業者の双方が、委託作業現場の実情に即した作業遂行上の必要条件(とくに配置人員の技能レベル)を共有することができる。また、新規参入業者の資質や経営方針をチェックするツールともなる。

【課題3】業務委託に伴う受託業者の採算圧迫を回避すること

 業務全体を丸投げする場合は別であるが、例えば製造ライン作業の一部を業務委託する場合は、荷主サイドに留保する作業と委託する作業とが機能的な連続関係にあることが一般的である。このため荷主企業の現場においては、自らの職場の操業リスクを避けるために、業務委託契約内容を無視して一方的に高技能者を定常的に固定配置することを要請することが多い。受託業者は力関係からこの要請に屈して、契約よりも高技能作業員(高人件費)を配置せざるを得ず、受託業者の採算が悪化する。これは、最終的に荷主のリスク増となって撥ね返ることになる。

【解決方策】
 【課題2】で述べた[解決方策]が実行されれば、この課題も解決する。業務の外部委託が荷主企業の購買規定上の購買対象物品外であるとはいえ、契約内容に沿った人員配置がされているならば、それ以上の現場の要求は不当(契約違反)である。
 荷主管理者は、契約内容(サービスレベル)が使用者(利用者)である荷主現場管理者のニーズに合致したものであることを確認したうえで、契約を締結するべきである。

【課題4】業務委託に伴うコストと作業品質とのトレード・オフを回避すること

 荷主企業と受託業者がコストと作業品質とのトレード・オフ問題で対立し、パートナーとして納得した上で最適な人材配置を実現することができない。

【解決方策】
 契約交渉データとして「荷主企業が求める作業品質を確実に保証するための職種および職種別の作業工数」を整備する。製造ライン全体の操業を安定確保し、あわせて作業安全を確保できることが契約の前提条件である。対価設定のルールとしては、契約上のあるべき姿として対価を決め、技術ランク別の時間単価、もしくは作業工程別単価で算定する。人員数に端数がありえない以上、上位ランクの単価の高い人が安い仕事を兼務し処理した場合でも、当然上位者の単価を適用する。

 このような業務外部委託の基本ルールを確立することで、荷主・物流事業者双方の協調意識を高めることができる。このような形でパートナーシップを醸成していくことによって、はじめて健全な取引関係を保ちながらコストダウンを推進する素地が作られることを荷主企業・物流事業者双方が理解するべきである。

以上



(C)2002 Akihiro Takahashi & Sakata Warehouse, Inc.


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