ロジスティクス・レビュー

第177号デリバリー・クイック化の改革ポイント(2009年8月4日発行)

執筆者 平居 義徳
ロジスティクス・コンサルタント 技術士
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 昭和36年、日本能率協会コンサルティングに入社。
    • 以後、45年間、ロジスティクスのコンサルティングに専従し、200社を超える企業の実務に従事する。
    • 同社、退職後の平成17年以降も、ロジスティクス・コンサルタントとして活動中である。
    専門分野
    •  物流専業会社、メーカー、問屋業、流通業で「物流総合改革」「物流業務改善」「物流品質改善」「物流センター計画」「センターレイアウト計画」などのコンサルティングに従事。
    • また、日本ロジスティクスシステム協会の「定期セミナー」および「社内研修会」を多数担当する。
    主要な著書
    • 「わたくしたちのIE」 (1974年) 日本能率協会刊
    • 「職班長のためのあたらしい改善技法」  (1982年) 日本能率協会刊
    • 「たのしいIE」 (1983年) 近代経営社刊
    • 「改善学入門」  (1986年) 日本能率協会刊
    • 「やさしいIEのはなし」 (1987年) 日本能率協会刊
    • 「コストダウン50のチェツクノート」 (1989年) PHP研究所刊
    • 「やさしい物流改善の本」 (1994年) プロスパー企画刊
    • 「実例でみる物流診断分析」 (1994年) プロスパー企画刊
    • 「eヒントプログラムによる物流改善」 (2002年) 日本ロジスティクス協会刊
    • 「物流改善ケーススタディ」(共著)  (2004年) 日刊工業新聞社刊

目次

1.リードタイムの課題

入荷から出荷・納品までのリードタイムは、つぎのように分類することができる。

発注品・入荷処理のリードタイム
着荷品の荷卸し、仕分け、検収、移動ののち入荷計上するまでの所要経過時間
オーダー処理のリードタイム
オーダーエントリー業務や伝票・リスト、ラベル・シール、送り状の発行経過時間
出荷業務のリードタイム
受注品のピッキング、検品、梱包、仕分け、積み込みまでのリードタイム
輸送・配送リードタイム
拠点間の転送やデポへの移送、ユーザーへの納品リードタイム

  ユーザーサイドから見て、これらが、要請水準に対し、”満足するレベル”であるかどうかが重要なリードタイムの課題なのである。
  具体的に、これらのリードタイムが長いための損失(ユーザーおよび当社双方の損失)としては、つぎのことが挙げられる。

納品指定日時の遅れ
原材料や加工部品の場合には、納品指定日時の遅れによりユーザーの生産、加工、組み立てラインが停止する。(ときには、ペナルティが発生する)
消費財では、ユーザーの売り損じ・機会損失が発生し大きなクレームとなる。
3PLでの事業開拓不能
リードタイムが長い物流事業体では、相対的に営業開拓力(商品力、アピールポイント)がなく、売り上げが衰退する。
リードタイムの課題は、業務効率化のテーマと一致する
これは、当社にとっても、大きな利益源である。

  そこで、ここでは「センター業務のリードタイム短縮」(クイック化)に特化し、その「課題と改革ポイント」についてレビューすることとしたい。

2.入荷品処理での対策例

  いま、仮に朝7時の着荷品が荷卸し、仕分け、検収と入荷計上で昼前の11時までかかったとしよう。この場合の入荷業務のリードタイム実績は、「4時間」である。
  多くの場合、この「4時間」の実態を調べると、その取引先分の入荷各工程の業務時間合計は(ロット数にもよるが)殆どの場合、一件あたり20%未満となっている。残り、80%ほどの経過時間は各種の事情による工程間の「一時仮置き」(滞留)の時間なのである。つまり、リードタイムが長くなる最大の課題は、この「一時仮置き」の累計時間であるということができる。
  この実態を調べるためには、業務をおこなう人側からのものではなく、「取り扱う商品側」から(商品の身になって)の分析が必要である。
  「仮置き」が発生する事情や背景は、それぞれのセンターで異なるが、そのケース・状況としてはつぎのことが挙げられる。
  ここでは、青色で示したものがリードタイムの「課題」であり、赤色部分がこの課題に対する「対策代替案」(対策案の選択肢)である。

納入車の到着時刻とセンター始業時刻とのズレ
入荷予定情報による早朝勤務、シフト制の実施
夜間荷受け体制の実施
商品荷受けゾーンから検品ゾーンへの移動(ときには、1Fから重層階へ)
通過品、(入荷即出荷品、クロスドッキング品、スルー品)については、1Fでの完結処理方式(このためには、1Fの配置機能の変更が必要となることが多い)とする。
入荷検収前での「納入先別」、「アイテム別商品仕分け」や
「1ケース1個もの」と「1ケースに同じアイテムの整数入り」「1ケースに複数アイテムの詰め合わせもの」の分類ならびに
「個数・数量検収だけでよいもの」と「サンプリングで内容品のサイズ、特性検査まで必要なもの」との区分
「フレッシュ入荷品をすぐに配送先別に仕分ける」ときの全アイテム完了までの滞留
荷卸し段階での一次分類の実施
取引先での配送車への分類積み込みの要請
荷卸し場とパターン別検収ゾーンとのルール化(この内容品は、どこに卸すかの決め事)
入荷ケースでの検収パターン表示の徹底
物量、形態、商品特性に見合った自動ソーター、仕分け設備、仕分けシステムの検討
入荷品の受付、商品仕分け、検収・検品、入荷計上、移動などの分業による各工程間の一時滞留
検収・検品パターンごとの工程統合(工程別分業をやめ、検収業務パターンごとの単独完結方式とする。)
入荷ロットが一件当たりでNケースの場合、納品書(内容明細書)が入っているケースをさがす。
「納品書在中シール」の貼付ルールの徹底
EDIによる検品体制の実施
緊急品と通常品の区別が不明確
発注・入荷の事前情報システムの構築
荷卸し時に識別できる表示法
小物・同梱品検収でのケース出しと検品アンマッチ時での再検収
同じアイテムで複数個の入荷品は、発注先でバンディングなどを要請する。
小物バラ出し専用検収台を工夫する。
検収時、誤品、誤量、汚損、破損や伝なし品などのイレギュラーで手間取る。
発注側や納入元と一体になった根源対策の検討
一日のなかでの時間帯別入荷量の波動や
日別、曜日別入荷量の波動(多アイテム、大量入荷のとき処理が遅れる)
入荷予定情報の早期連絡のネットワーク作り、発注、納入元との情報のリアル化
納品時間帯指定による業務量の平準化
センター全体での応援シフト体制の見直し(要員の多能化が必要)

3.出荷業務での対策ポイント

受注後の出荷業務についても、つぎのような課題と対策例が挙げられる。

単品ごとの在庫引き当てや品薄品の出荷優先引き当て、集約ピッキングリスト、専用伝票発行、流通加工指図書発行などで手間取る。
伝発業務でのネック改善
クイック化のための専用ソフトの開発
伝発時間帯の見直し
ピッキングリストや送り状、必要なシール類、流通加工指図書、納品書などがその商品と一緒に流れないときの滞留(出荷指図だけを先行手配し、後工程で必要な帳票とドッキングする)
出荷指図と必要帳票の同時発行と同時流し(このためには、単品での正しいリアル在庫管理と把握が前提となる)
バラ・ピッキングで手間取る。
保管ゾーン、サブ在庫ゾーン、同一アイテムの分散在庫よりピッキングゾーンへの補充遅れ。
ピッキング工程での移動(歩く・運ぶ)、指定品をさがす、付帯作業で時間がかかる。
出荷量に見合うピッキング在庫量の検討
補充回数や補充時間帯の見直し
ピッキング業務の効率化(リストのロケ順別発行、アイテム配置・ロケの変更、集約ピッキングの可否、デジタルピッキングなどの検討)
ピッキング、出荷検品、梱包、仕分けなどの工程分業による仮置き。
一日のなかの時間帯で、分業する各工程ごとの負荷と能力に大きな変動がある。
各工程のイレギュラー処置で手間取る。
ピッキングとバーコードスキャン検品の統合だとか出荷才数グルーピングによる梱包ケースへのピッキング品の直入れなどの工程統合の可能性検討
別ゾーン、別フロアからケースものとバラ品が別個に出荷場に送り込まれるため、出荷先ごとに荷合わせをする。
アイテムごとの合計量で当日品が出荷場に纏め出しされるため、配送車別とか委託便ごとに仕分けをする。(または、ゴボウ抜きをする)
トラック積み込み時、アイテム確認と個数検収で手間取る。
配送車の出発時刻、委託便の引き取り時刻と前工程の業務完了時刻のアンマッチ。
センター全体の同期化流し(便別出荷時刻に合わせた前工程のスケジュール化)



  センター業務については、リードタイムの短縮(業務のクイック化)という視点・切り口からみても、以上のように、まだまだ取り組むべき課題が多い。
  これらの改革ポイントは、「センター業務の効率化」「物流品質の向上」とも合致する重要な全社改革テーマなのである。

以上


(C)Yoshinori Hirai & Sakata Warehouse, Inc.


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