ロジスティクス・レビュー

第17号情報システムの構造と特徴について(2002年10月04日発行)

執筆者 福島 審
株式会社サカタロジックス シニアコンサルタント
    執筆者略歴 ▼

  • プロフィール
    • 前職では、大手電機メーカーのECサイト構築などオープン系を中心としたシステム開発に従事。
    • 現在は主に情報システムの企画・開発、物流システム開発・導入支援、
      シミュレーションを利用したコンサルティング、業界紙への寄稿などを行っている。
    • ロジスティクスは、経営戦略や情報システムとの関係が深くなってきている。
      部門内の改善提案に留まらず、(システムアナリスト的な)経営戦略や
      情報システムなどのポイントを押さえた、全社的な観点からの提案を行う
      ことを心掛ける。
    主な資格 システムアナリスト(2001),第2種情報処理技術者

目次

1.はじめに

 情報技術(IT)の発展により、今まで実現が難しいとされていたことも可能になり、あらゆる分野でさまざまな取り組みがされている。ロジスティクスに関しても例外ではなく、QR,ECR,SCMなどの実現にITが利用されている。

 現在、多くの企業で情報システムが導入されているが、その種類は多様である。今回は情報システムを管理活動の階層という視点から整理・分類し、それぞれの特徴について述べていくことにする。

2.企業に貢献する情報システムを導入するには?

 「ITはあくまでツールである」という言葉はよく目にするが、これは情報システムを導入しさえすれば、現在抱えている課題が解決され、理想的な仕組みを手に入れることができると思っている人への警鐘の意味合いが含まれているのだろう。

 情報システムを整理・分類する前にまず情報システムを導入する際の原則についてまとめておきたい。情報システムを導入する際に一番重要なことは経営戦略であるといわれている。経営戦略がないまま情報システムを導入すると、期待していた効果を十分に享受できない場合が多い。また、情報システムを新たに導入する場合、範囲の広狭こそあるが従来の業務を見直し、業務改革,業務改善を併せて行う必要があるケースが多い。

 企業にとって価値のある情報システムを導入するためには、ただ漠然と情報システムを導入するのではなく、どのような効果や目標を達成する為に情報システムを導入するのかをあらかじめ明確にしておく必要がある。企業に貢献する情報システムを導入するためのポイントは、まず経営戦略と整合性の取れた情報システムを導入出来るか、次に導入する情報システムにあわせた業務改革,業務改善が行えるか、である。

図1 一般的な情報システム開発原則

出所:久住(1998)p.39

3.情報システムの構造とは?

 一口に情報システムといっても、SCMのように自社内に留まらず、サプライチェーンを構成する関連会社や取引先を巻き込んだ規模のものから、倉庫管理システムなどのように特定の部署,機能のみをカバーするシステム、さらに細かく見ると送り状発行システム、配車計画支援システムという特定の業務に特化したものなど、その種類は多様である。多くの企業ではこのような様々なシステムが導入されているだろう。

 ここでは、企業における管理活動の階層に着目し、情報システムを分類していくことにする。企業の管理活動は、①戦略的計画(経営者層)、②マネジメント・コントロール(中間管理者層)、③オペレーショナル・コントロール(監督者,作業者)の3つに階層化できる。

 経営者層が戦略的計画を立てるためには、会社全体を見渡せる情報が必要であり、意思決定を支援するようなシステムが必要になるだろう。中間管理者層は会社の方針に添って具体的な計画を立て、その計画の実現を管理するためのシステム、即ち管理対象としている部門,課の状況が把握できるようなシステムや情報が必要だろう。一方で、監督者,作業者層には、日々の業務を効果的かつ能率的にコントロールするための情報システムが必要になる。

 このように管理活動においては活動のレベルによって意思決定の質が異なり、またその為に必要な情報も異なる。したがって各階層における意思決定の支援や必要な情報処理を行うために情報システムも管理活動の階層と同様に階層化されることになる。つまり、情報システムも、①戦略的計画のための情報システム、②マネジメント・コントロールのための情報システム、③オペレーショナル・コントロールのための情報システム、の3つに階層化できる。勿論、複数の階層で同じ情報システムを利用する場合もあるだろうが、その場合アクセスする情報が異なっているはずである。

 ロジスティクスに関してこれをあてはめると、日本ロジスティクスシステム協会のロジスティクス業務関連図*1が参考になるのではないだろうか。ロジスティクス業務関連図では、14の業務が記されており、それを、A.ストラテジー&プランニング、B.マネジメント&コントロール、C.プロセシング&オペレーション、D.ネットワーキング の4つに分類している。この中で、D.ネットワーキングはA,B,Cを支える情報基盤と捉えることが出来るため、実際は3つの階層にわけられていることになる。これを、戦略的計画はA.ストラテジー&プランニング系のシステムを利用する、マネジメント・コントロールはB.マネジメント&コントロール系のシステムを利用する、オペレーショナル・コントロールはプロセシング&オペレーション系のシステムを利用する――と単純に結びつけることは出来ないが、大局的にはこのように捉えておくとわかりやすい。

 ここで、それぞれの階層が利用するシステムの特徴について簡単にまとめておきたい。
 戦略的計画のための情報システムは、全社的なシステムになることが多く、規模が大きくなる。この場合、情報システムの導入に併せて、広範囲で業務のやり方を変更しなければならないことが多く、その範囲が取引先にまで及ぶケースもある。このような大規模な情報システムを導入する場合、部門間の利害関係による対立、業務オペレーションをコントロールしている者からの抵抗、取引先から圧力などが多くなり、情報システムの導入に併せたこれらの調整が非常に重要になってくる。結果として、全社的な経営戦略と密接に結びつくシステムを導入する場合は、経営トップもしくは権限を委譲された経営トップを支援する組織が情報システムの導入を主導する必要がある。当然、推進はトップダウンで行われることになる。

 一方、オペレーショナル・コントロールのための情報システムは、局所的もしくは特定の業務に特化して導入されること多く、システムの規模は小さいといえる。情報システムの導入に併せて、業務のやり方を変更しなければならないが、その範囲は社内の特定の部署や、特定の業務を担当している者だけと狭い場合が多く、戦略的計画の情報システムを導入する場合と比べると、業務改革,業務改善を行いやすいといえる。またこの種の情報システムは、今までシステム化されていなかった作業をシステム化するために導入するケースや、今まで使用していたシステムをより高機能化するために導入するケースが比較的多いと考えられ、導入に際しても、システム操作の教育を実施するだけでシステムの導入効果が得られることが多いという特徴もある。オペレーショナル・コントロールのための情報システムは、戦略的計画のための情報システムと異なり、実際にオペレーションを行っている監督者,作業者からボトムアップにより導入されるケースが比較的多いのも特徴といえるだろう。

 マネジメント・コントロールのための情報システムは、販売,生産,物流など企業の機能ごとに導入されているケースが多く、システムの規模は全社的な規模とまではいかないがある程度の規模になる。情報システムの導入に併せて、業務のやり方を変更する範囲もオペレーショナル・コントロールのための情報システムよりは広く、導入するシステムによっては、監督者,作業者に負担を強いるケース(意思決定に必要な情報の入力業務など)もある。そうした場合は、現場からの抵抗により業務改革,業務改善を行いにくくなることもあるが、調整する範囲が自社内であることが多いため、戦略的計画のための情報システムより了解は得やすい。また、中間管理者層の意思決定を支援する情報システムを導入する場合、システム操作だけの教育を実施するだけでは導入効果を得られないケースが多い。情報システムを利用して提供される情報から意味を読み取り、どのように行動に結びつけるかという教育も行う必要がある。

 以上、情報システムを管理活動の階層とあわせた階層的構造という視点でまとめてみたが、情報システムを全体的に捉えるには、これ以外にマーケティング,生産,ロジスティクス,人事などの機能的構造という視点を持つ必要があることを付け加えておく。(図2)

図2 情報システムの全体像

出所: 宮川(1999) p.155

4.導入時に考慮すべきことは?

 ここまで、情報システムを導入するための一般的な原則、情報システムの構造を述べてきた。では実際、システム導入時にどのような点を考慮すべきか、何点か挙げていくことにする。

 まず、導入する情報システムが何を目的としているのか、前述した階層のどこに属するのかを認識する必要がある。というのも、SCMと同様に、情報システムにおいても全体最適が、部分最適にはならない。例えば、経営者層向けの情報システムを導入する場合、現場の作業者の負担が増える,作業効率が悪くなるということが起こり得る。その際にも、どの階層のためのシステムかをはっきりさせておくことで、導入に際し抵抗があった場合でも、当初描いていた方向からぶれることなくシステム導入が出来る。

 次に変革の容易度も考慮する必要がある。情報システムを導入する際には、業務改革,業務改善をあわせて行う必要があるのは前述した通りである。自社内のシステムの場合は部門間の力の差、SCMのように取引先を巻き込んだ業務改革が必要な場合は自社のチャネルパワー,日頃の取引先との関係性などを考慮する必要がある。一般的に、取引先の絡む変革は難しくなる。その他、自社が属する業界で標準化が進展しているかについて押さえておくと良いだろう。

 システム導入効果を継続的に得る方法も考慮しておく必要がある。例えば、導入しようとしているシステムが正確な情報を必要としている場合、その情報はどのようにシステムに蓄積されるのであろうか。作業者が情報を入力するという構造になっているなら、入力ミスや入力漏れがないような業務の見直し、入力する者にとって入力しづらい情報でも入力するインセンティブを与えるためのルール作りが必要になるだろう。また、情報システムを通じて提供される情報を見て意思決定を行う場合、システム操作の教育だけで良いだろうか。システム導入効果を得るためには、利用者に対して情報の読み方や判断例などの教育を実施する必要がある。特に、情報の読み方などの教育は定期的に実施し優れた事例などは社内で共有していくことが望ましいだろう。

5.おわりに

SCMの導入のように大規模なシステムほど、多くの業務変革,業務改善を伴うため現場からの軋轢、他部門,他企業との利害調整が難しく、その導入は困難である。だからといって、システムを導入しない方がいいのかというと勿論そうではない。
 自社内の業務の完成度や取引先との力関係などを踏まえ、どのような改革をするのか現実的な改革レベルを設定した上で、それを実現するための情報システムを導入し、少しでも成果をあげていくことが重要ではないだろうか。その際、情報システムが管理的,機能的にどこに位置するか少しでも意識していただければ幸いである。

以上

【註】

  • 詳細は日本ロジスティクスシステム協会のサイト(http://www.logistics.or.jp/jils/)を参照のこと。

【引用・参考文献】

  • 久住正一郎『物流情報システムの進め方』日本実業出版社,1998年.
  • 宮川公男編著『経営情報システム(第2版)』中央経済社,1999年.



(C)2002 Akira Fukushima & Sakata Warehouse, Inc.


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