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第161号3PLビジネスおよび物流情報化の新潮流 ~流通センター業務のアウトソーシングと物流管理システムの最新事例~(前編)(2008年12月4日発行)

執筆者 増井 秀典
サカタウエアハウス株式会社 執行役員  システム研究所 所長
サカタインフォ株式会社 取締役副社長
    執筆者略歴 ▼
  • 略 歴
    • 1986年 鐘紡株式会社入社、生産技術研究部門、物流企画部門にて化粧品を中心とした物流センターの構築・設計・システム化を担当(在籍中に第7回流通システム大賞・通産大臣賞を受賞)
    • 1999年 朝日アーサーアンダーセン株式会社入社、2002年 ベリングポイント株式会社にて、SCM/ロジスティクスを中心としたコンサルタント(マネージャー)としてクライアントの業務改革(BPR)および事業・物流戦略の構築・実行を担当
    • 2005年 現職のサカタグループ入社、サカタウエアハウス株式会社、サカタインフォ株式会社にて倉庫・3PL事業の推進、SCM・ソリューション事業の推進を担当
    • (社)日本ロジスティクスシステム協会認定 ロジスティクス経営士

*サカタグループ2008年2月26日開催セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
*今回は2回に分けて掲載いたします。(文中の敬称は省略しております)

目次

  皆様本日は多数お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。
  今日は、「3PLビジネスおよび物流情報化の新潮流~流通センター業務のアウトソーシングと物流管理システムの最新事例~」について、私共の考え方やシステムの最新事例等をご紹介したいと思います。
  今日のアジェンダとしては、私共の会社概要に若干触れまして、その後本題としては、3PLビジネスの現状、その中で私共の視点を交えながらお話をしたいと思います。
  次に、私共の流通センター業務の取り組み事例ということについて、現状でこのようなことをしているといったお話をしたいと思います。
  その後、3PLビジネスにおける今後の方向性や今後の展開といったお話をしたいと思います。最後に、物流管理システムの最新事例ということでお話をしたいと思います。

Ⅰ.弊社の概要

  まず、最初に、ご存知いただいているお客様もいらっしゃるかと思いますが、弊社の概要について簡単に紹介させていただきます。
  私共サカタグループは、創業大正3年(1914年)ということで、創業90年余りになります。社員数は約400名で、事業概要としましては、昨年12月に体制を変更し、サカタウエアハウス㈱が持ち株会社となり、倉庫・3PL事業を中心に行っています。
  その他、情報システム関係・SCM事業ということで、サカタインフォ㈱、アウトソーシングい・HRM(ヒューマンリソースマネジメント)事業として、い流通センターの運営・管理や工場への人材派遣といったい業務を担当している㈱サカタアセント、サカタ産業㈱という、グループ会社で構成されています。
  事業所としては、大阪・東京の営業本部を中心として、現在全国に13カ所において、物流業務を運営しています。
  また、昨年2月に、千葉県・市川市に営業所を新規に開設しました。
  私共は、化粧品/トイレタリー/電気・電子部品/医薬品といった業種を中心に、多頻度小口物流を得意分野とし、事業展開をしています。

Ⅱ.3PLビジネスの現状 ~弊社の視点を交えて~

1.3PLビジネスの市場規模

  さて、3PLビジネスの現状ということで、弊社の視点も踏まえながらお話をしたいと思います。
  3PLビジネスの捉え方は、各会社において、いろいろな定義をされており、一般的に「3PLとはこうだ」ということもいろいろな所で整理されていますが、ここでは私共の視点ということで、お話をしたいと思います。
  まず、最初に、「3PLビジネスの規模」について、アンケート結果をもとに述べたいと思います。実は、3PL市場の規模はどれ位あるのかという数字は、あまり公表されていません。今回、ご紹介するのは、各3PL企業の売上を積み上げていった時に、市場規模としてどの位になるのか、ということで整理しているわけですが、結果として、約1兆1,200億円という金額が出ています。他にも多数の会社があるわけですので、実際には、これ以上あるということになります。
  一方、その市場規模に対して、市場がどうなのかということですが、各社の売上見込みというアンケート結果から、「今期見込み」と出ていますが、注目すべきは、その有効回答の平均では、12.8%伸びるという回答があったということです。
  日本の物流市場は、約20兆円規模と言われていますが、3PLの市場は、非常に成長の可能性を秘めていると思います。

2.3PLビジネスの市場構造と参入形態

  ここでは、3PLビジネスの市場構造と参入形態」ということ、どういった構造になっているかということを示します。まず、倉庫会社系と言われるところ、それから利用運送事業者系、自動車運送事業者系、物流事業者という観点で整理すると、図のように大きく分かれます。

  私共サカタウエアハウスは、倉庫会社系としては、地域倉庫会社からの業務転換・業態転換ということで、倉庫業から3PLへ転換してきたという位置付けになっており、同業では、富士ロジテックや日本トランスシティに近い位置づけとなっています。
  利用運送事業者系としては、大手の国際フレイトフォワーダーやヤマトロジスティクス等の共同出資で出されている物流子会社があります。
  自動車運送事業者系としては、第一貨物や福山通運の特積み事業者や、最近では地域限定で軽貨急配的な会社や、低温輸送事業者等といったところで、物流事業者は分類されています。
  あとはメーカーから小売までの流れの中で、メーカー系物流子会社と言われているところと、商社・卸との関係で商社物流子会社、或いは卸売業として位置づけられます。例えば、食品会社系ではキューソーや、電気メーカー系では日立物流や東芝物流、商社系でしたらアイ・ロジスティクスというところが有名ですが、全体像として、図に示したような構造になっているということをご理解頂ければと思います。
  また、ご承知の通り、異業種的なところからも、これに加えて、いろいろな3PLとしての参入が出てきていますので、3PLとしては競争が非常に激化しているという状況です。ただ、その一方で、では「3PLとは何なのか」というところでは、若干、各会社、特に異業種から参入してきているところを含めて、定義付けがなかなかされていない部分もあるということが言えると考えています。

3.3PLの使用状況

  では、3PLの使用状況ということで、少し整理をします。

  こちらの方も、有効回答社数が約300社のアンケートの結果ということで出している訳ですが、その中で「現在既に3PLを使っている」という会社は約40%あります。その中で、委託のレベルはどうか、或いは委託の範囲はどうかということなのですが、委託のレベルは、4割のところが「個別の作業だけ」ということになっています。また、これも約4割なのですが、「物流管理・運営という部分までやってもらっている」となっています。そして、約2割が、「経営レベルまで踏み込んでいろいろ提案してもらっている」という形になっています。やはり、経営レベルまで踏み込んでとなると、減ってくるというところが見てとれます。
  また、受託の範囲ということになると、これは殆どそれぞれ拮抗しているのですが、「特定の拠点・限られた領域だけ、部分的に委託している」といったところと、「複数拠点頼んで広域、例えば全国レベルで当社の物流は見てもらっている」というところ、あとは「荷主企業の物流機能全体や、それ以外のところを含めてやってもらっている」というところが、うまく3つに分断されているような状況にあります。あと、26.7%が「今も使っていないし、今後も使うつもりはない」という会社です。あくまでも自分のところでやるという会社です。また、3割強の会社が「今は使っていないけれど、今後使いたい」といったことや、「今は使っていないけれど、場合によっては使ってもいい」ということです。3PLとしてはこの部分がビジネスを拡大していく上でのターゲットとなります。

4.企業はどのような課題を持っているのか

  では、企業各社は、どのような課題を持っているのかということですが、私共は定例でこのようなセミナー・ワークショップ等を開催しているのですが、その中でアンケートをお願いしています。その回答を見ていきますと、今までどちらかと言うと、「物流コストを削減したい」という項目が必ずトップだったのですが、それが最近「品質を上げたい」という項目が上位にくるようになりました。
  これはどのようなことなのか考えてみると、やはり物流コスト削減は、永遠のテーマではあるのですが、ずっと言い続けてきていて、それなりに効果を得ているところもあると認識しています。そういった中で、次はどのようなことかと言うと、やはり品質を上げたいということと、更に2番目にきているのが「分析したい」、要は中味を知りたいということです。「値下げして下さい」という要請に対し、「**%下げます。」という回答をしても、どの部分がどのように下がったのか、今自社の物流コストの構造はどのようになっているのか、実はそれ程分からずに「値段が下がったので良かった」という話になっているケースがあるということから、このような回答になっているのかと思っています。
  私共としては、お客様に対して、コスト構造を明確にするようなサービスを提供させていただくということが、バリューであると考えています。

5.3PLとしての取り組み

  では、今お話したようなお客様のご要望を考えて、3PLは、どのような取り組みをしていったら良いのかを私共の視点で整理します。
  まずは、クオリティですが、品質という部分には非常に拘って行っているつもりです。品質会議を本部管轄で置き、5Sとして、社内だけでなく、社外からも厳しい眼で見ていただいて、社員の意識をどんどん高めていって、それに伴い品質を高めていくという活動を行っています。
  次に、マテハンです。誰でも間違いなくできるようなマテハンを積極的に導入しようというようなことも進めています。
  コストという観点では、拠点や輸配送手段や自動化・機械化といったことも含めて、最適な方法をシミュレーションしてご提案していくということです。そして当然ですが、物流コストの分析や物流ABCの実施等といったところで経営情報を提供していくことに取り組んでいます。
  デリバリーというところでは、お客様にとって一番望ましい輸配送モードをシミュレーションすることや、私共の提携先を含めた、トータルロジスティクスの提案・マネジメントといったところも進めています。
  そして、情報システムにおいては、お客様で導入されたERPや販売管理システムとリンクした物流情報管理システム・倉庫管理システム、或いは輸配送管理システムをご提供しています。
  また、過去には、流通システム大賞通産大臣省を荷主企業と共同受賞したのですが、このようなノウハウを提供していくことで、クオリティ・コスト・デリバリー・情報システムを上手く組合せながら、先程課題として出ていたように、品質・コストの中味を知りたい・コストを下げたいといったことに対して、定量化、見える化、或いは変動化であるといった取り組みを進めているところです。

6.3PLとしてのサービス

  次に、3PLとしてのサービスですが、先程申し上げたお客様のニーズに対応する為に、アウトソーシングサービスのパッケージ化として、お客様が共同で私共の提供する倉庫に入っていただいた中で、費用の定量化・見える化ということで、パッケージ的な料金を定めて、分かり易い料金を提供するとか、私共のシステム(倉庫管理システム・庫内の作業システム等)を有効にお使いいただいて、品質を上げていくとか、そして私共の倉庫の方に共同で入っていただくことで共同メリットを作って、コストを下げていくといった取り組みを進めているところです。

Ⅲ.弊社における流通センター業務の取り組み事例

1.取り組みをご紹介する営業所

  次に、私共の流通センターの取り組み事例ということで、ご説明をしたいと思います。
  今日ご紹介するのは、泉大津の営業所と岡山の営業所で行っている取り組みについてご紹介したいと思います。

2.泉大津営業所の概要

  泉大津の営業所は、大阪の南部にあるのですが、阪神高速道路や大阪南港からも近いところにあり、現在は、電機・電子部品関連のお客様の商品を扱っています。

3.泉大津営業所での活動事例

  ここでは、5Sの活動を精力的に行っています。
  5Sと言うと、なかなか定着しにくいということもあるのですが、私共では現場の責任者が中心となり、5Sの中でまず3つの項目、「3Sからやりましょう」ということでここ半年位取り組みました。それが定着した段階で、第2ステップとして5Sに取り組み、現在始めてから約1年になります。
  活動基準としては、図中に整理しているような基準を設定しています。
  また、定期点検等、実際に現場でどのような状態になっているかという点検や改善した後の結果のチェックをチェックリストや改善計画書を使って行っています。
  活動目的としては、庫内の整理といったことから品質に拘って取り組んでいくということを行っています。チームを作って、更に庫内の中を区域で分けて、それぞれで提案を行い、各チームでポイント制による良い意味での競争と言いますか、表彰制度的なことを導入して、継続してやる気を出してもらうということを推し進めています。今3Sから始めて1年半を超えているのですが、しっかりと定着してきている状況です。
  写真なので資料のご提供はできなかったのですが、改善推進記録といったものも実際に行っています。実際にどのようなことが問題なのか上がってきた時に対して、「こうなりました」ということを画像できちんと撮って報告することを行っています。今はデジカメや携帯電話で簡単に写真が撮れますから、実際にどうやったのかということをビジュアルで報告することを行っています。物流センターでしたら、このような表示の方法や、実際にこのような改善した写真等を報告するようにしています。自画自賛になりますが、庫内は非常に整理整頓されています。事務所も同じく、お客様が来ていただく際に見ていただくと、整理されていることが見て分かっていただけます。
  5Sの結果どのようになったかですが、綺麗になったのは当然ですが、庫内での商品破損等が減りました。具体的に申し上げると、月間で在庫誤差なし、誤出荷なし、といった月間ベースでの実績を達成しました。これは、3PLとして非常に価値のあることかと考えています。ちなみに、泉大津営業所の規模ですが、アイテム数で約6,000アイテム、在庫数は600,000ピースあります。それで、在庫誤差なしというところまでになっているところが成果となります。

4.岡山営業所の概要

  次に、岡山営業所ですが、こちらは瀬戸大橋に近い岡山の早島にあり、最新鋭のデジタルピッキングシステムを導入しています。写真に載っていますとおり、カネボウ化粧品様のお仕事をさせていただいている営業所でございます。
  こちらの方もシステム化により、省力化を実現しているのですが、出荷精度を100,000分の1以下ということを目指して行っています。実際のところは、100,000分の2や100,000分の1といった実績もございます。

5.ピッキングシステムの概要説明

  これが全体像になります。

  スタートステーションから空ケース(プラコン)が、棚の間をコンベヤに添って流れていって、各ピッキングエリアに自動搬送されていきます。
  そして、ピッキングすべき所でプラコンが止まって、デジタル表示器が点灯し、「ここから何個取る」ということが表示されるので、その表示に従った数の商品を棚から取ってプラコンに入れていくといった作業を、Aゾーン「大型多頻度出荷品」多頻度で大きなもの(液体系の重いもの)、Bゾーン「小型多頻度出荷品」口紅等の軽いもので多頻度のもの、Cゾーン「小頻度出荷品」取扱品種は多いけれどそれ程たくさんは出ないもの、というゾーンを順次通り、最終的に梱包エリアにて検品・梱包が完了するといった流れになっています。
  鳥瞰図にて簡単に説明しましたが、次にビデオで紹介したいと思います。
  まずは、スタートステーションにて伝票を投入します。これは荷主企業仕様のお店毎のラベルで、これをプラコンに自動で貼り付けます。こちらの設備は、初期に導入したのが実は20年位前で、一昨年位からプロジェクトを始めて、昨年の5月に全面リニューアルということでコンベヤや関連のシステムまわりを順次稼働しながら、土日に部分的に切り離して入れ替えしながら設営しました。(画像と連動して)Bゾーンには、棚の間口に表示器がついており、ロケーション毎に細かく区切られているのですが、口紅のような小さな商品をピッキングします。こちらがCゾーンです。こちらはこういった専用の台車を使い、80品を1つのバッチという形で、1つ台車で20品まとめてピッキングし、コンベヤの横に設置して移動するピッキング棚として使用するという仕組みになっています。これは実は完全オリジナルな仕組みでして、他では見られないものであり、特許を取得している仕組みです。
  このような仕組みを用いて、弊社では出荷精度や作業効率の向上に取り組んでいるという、1つの事例として紹介しました。

※後編(次号)へつづく



(C)2008 Hidenori Masui & Sakata Warehouse, Inc.

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