ロジスティクス・レビュー

第160号物流コストの最近の動向から(2008年11月18日発行)

執筆者 久保田 精一
社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所 研究員
    執筆者略歴 ▼

  • 略 歴
    • 1971年熊本県生まれ。
    • 東京大学教養学部教養学科卒。
    • (財)日本システム開発研究所(シンクタンク)等を経て、現職。
    • 物流や地域開発等のテーマでの公共団体からの委託研究、民間企業のコンサルティング、自主研究などを数多く実施。

目次

物流コストの最近の動向から

  (社)日本ロジスティクスシステム協会では、毎年「物流コスト調査」を実施している。このたび2007年度の調査結果を公表したが、今回は調査結果を踏まえて、物流コストの最近の傾向と今後の見通しをご紹介する。

1.物流コストの推移

  売上高物流コスト比率は、1990年代中頃には6%台の後半であったが、長期的に低下傾向にあり、近年は5%前後で推移している。2007年度調査(2006年度の物流コストを調査したもの)が直近のデータであるが、売上高物流コスト比率は、前年度から0.17ポイント低下し、4.84%となっている(図1)。前回(2006年度)の調査では、いったん物流コストが増加に転じたことから、引き続き物流コストが上昇する可能性を指摘したが(※)、結果は減少であった。

(※)http://www.sakata.co.jp/nletter/nletter_070906.html

図1 売上高物流コスト比率の推移(全業種)

  これは近年、燃料価格の高騰などによって物流コストが上がっていると言われているなか、やや意外感のある結果ではある。しかし、以下のように、物価と物流コストの推移を比較して頂くと、その背景を理解して頂けるのではないかと思う。
  日銀では色々な物価統計を調査しているが、このうち、企業間で取り引きされるモノの価格を表す「企業物価指数」と、サービス(物流を含む)の価格を表す「企業向けサービス価格指数」を見てみることにする。
  「国内企業物価指数」の推移を見ると、2003年頃から物価の上昇が続いていることが分かる(図2)。図には示していないが、幅広い業種で価格の上昇が見られる。
  一方、「企業向けサービス価格指数」から物流を代表して「陸上貨物輸送」の動きを見ると、上昇はわずかである(おなじく図2)。結果的にモノの値段の上昇が、物流サービスの上昇を上回っていることが分かるであろう。

図2 企業物価、企業向けサービス価格指数(陸上貨物輸送)の推移

  なお、より細かい物流サービスの種類ごとに価格指数の推移を見ると、内航貨物輸送、航空貨物輸送などは価格が大きく上昇しているが、物流の主流を占める陸上貨物輸送、なかでも貸切貨物輸送は(燃料高騰の影響にもかかわらず)低下が著しいことが分かる(図3)。

図3 企業向けサービス価格指数の推移(物流サービスの種類別)

2.今後の見通し

  以上のように、売上高物流コスト比率はまだ下降トレンドにあるようだが、2008年度には上昇トレンドに転じる可能性がある。
  図4は、物流コスト等の前年度からの増減を指数化したものである。具体的には、「売上高」「物流量」「物流コスト(総額)」「物流単価(重量あたり単価)」の4項目について、前年度と比較して「増加」「不変」「減少」「不明」のどれに該当するかを選択してもらい、(増加の回答数)-(減少の回答数)の割合を指数化したものである。
  この図を見ると、売上高(オレンジの線)の指数が物流コスト(緑の線)の指数を一貫して上回っているが、その差は年々縮まっている。2008年度の予測値を見ると、物流コストの指数が大きく上昇すると予想されており、予想どおりに推移すれば、コストの増加が売上高の増加を上回る可能性がある。

図4 物流コスト等の増減の指数

  このように、物流コストは今後、上昇局面に突入していく可能性があるが、景気が減速するなかで、物流部門には引き続きコスト削減が求められるであろう。しかし多くの企業では、一通りの物流コスト削減策はやり尽くされており、小手先の効率化策ではコスト上昇分を吸収するのさえ困難であると思われる。
  最近の報道では、原油価格の高騰に伴う様々な消費行動の変化が指摘されている。私見だが、企業においても、物流コストの上昇を契機に、サービスレベルの見直しや物流の共同化など、よりドラスティックな変革に進む可能性があるのではないか。

以上



(C)2008 Seiichi Kubota & Sakata Warehouse, Inc.


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