ロジスティクス・レビュー

第136号“失敗しない”物流アウトソーシングの進め方(2007年11月20日発行)

執筆者 木村 徹
株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    執筆者略歴 ▼
    経歴
    • 大手倉庫会社、米国系輸入商社、欧州系物流会社を経て現職。
    所有ライセンス
    • 通関士
    • ジェトロ認定貿易アドバイザー
    • 危険物取扱者
    • 海技士(Navigator)
    誌紙出稿
    • 流通設計21 (2001年1月~2002年12月、2006年2月)
    • ジェトロセンサー (2000年11月&2002年2月)
    講演実績
    • ジェトロ
    • 中小企業大学校
    • (財)静岡県国際経済振興会
    • しまね産業振興財団
    • 群馬県商工会連合会
    • 大手商社
    所属学会
    • 日本貿易学会
    • 日本物流学会

*サカタグループ出展「ビジネスシヨウTOKYO2007」のプレゼンテーションセミナー講演内容をもとに編集しご案内しています。

目次

  本日は弊社プレゼンテーションセミナーにご参加いただき誠に有り難うございます。弊社グループでは、「物流アウトソーシングサービス」、「物流ITの開発と販売」と「人材プロデュースサービス」を行っております。本日は、物流アウトソーシングサービスから、顧客企業から見たアウトソーシングの進め方についてお話し致します。

1.物流アウトソーシングをするにあたっての問題点と課題

  物流のアウトソースをするに先立ち、自社の物流を知る必要があります。
  「物流」はJIS規格の中で「包装・輸送・保管・荷役・流通加工・物流情報」の6つの活動で構成されると書かれています。まずは物流の基本をしっかりと押さえておく必要があるでしょう。
  アウトソースの検討には、これら物流の基本データの他に人的な問題(物流担当者の配置)やロケーション(物流センターの場所)等の問題が大きく関与しています。
  また、アウトソース検討時に一番重要な事は、アウトソースで何を行いたいのかを決めることです。多くの場合、コスト削減と効率化だと思いますが、アウトソースの目的が決められていないことが多々見受けらます。

2.課題の抽出とブレイクダウン

  しっかりとした課題抽出が出来ていないと、効率的な運営に支障をきたしたり、社内の関係者への説明が出来ないということになってしまい、物流アウトソーシングが頓挫してしまいます。
  今回は一例として、この課題の抽出を「目的」、「アウトソース先の物流企業」と「社内の問題」に分けます。抽出内容は、業種業態によって違う項目を挙げなければならないので、各社の実情に合わせ課題を抽出して下さい。

3.課題の抽出 「物流アウトソースの目的」

①物流の種類と範囲

  物流をアウトソースする方針が決まっても、何を、どこに、どうやってアウトソースするか決まっていない場合が多く見られます。
  アウトソースの範囲には、「輸送」だけ、「物流センター」だけ、「輸送と物流センター」等、様々なパターンがあります。何をしたいのかということを、まず明確にさせなければなりません。

②主導部署・検討委員の構成

  一般的には物流部が主導部署になる事が多いですが、他にも企画部、総務部、営業部、調達部、工場等のいろいろな部署が主導部署になりえます。然し、担当部署によってアウトソースの視点が違うので、その部署が主導部署として的確であるかどうか、検討委員会の構成人員は的確であるかどうかをしっかりと見極めないと、最終段階で「我々の部署ではそれは現実的ではない」という結果になってしまうことがあります。故に、事前に社内でのコンセンサスを得ることが重要です。

③アウトソースの目的

  アウトソースの目的の中でも、優先順位が高い「コストダウン」と「効率化」にはコンフリクトが生じる場合があります。
  効率化の為には、システムを導入や、誤出荷削減の為にバーコードラベルを導入するといった費用が発生します。この場合、効率化や誤出荷削減はクリアしますがロジスティクスコストは上昇してしまいます。
  故に、何を優先させるかということをしっかりと目標を持って決めていかなければなりません。

4.課題の抽出 「アウトソース先物流企業の問題」

  ここでは、「コスト」、「輸送」、「保管」、「荷役」、「流通加工」、「物流情報」、「品質」、「知識/経験」、「ロケーション」、「導入スケジュール」と「引越」という項目を一例として挙げてみました。

①コスト

  アウトソースの目的として、コスト削減が一番の目的であるという話しをよく聞きますが、物流コストを目先だけで考えていないでしょうか。これは、往々にして「対外的に支払われた費用」だけが物流コストだと捉えられていることが非常に多く見受けられるからです。
  例えば、パートさんの人件費は見ているが、自社社員の人件費をしっかり把握していない。支払給料だけを考え、保険や年金等の間接費用を算入していない。自社倉庫で発生している公租公課や光熱費をコスト勘定に入れていない等が見受けられます。
  その結果、現状の自社物流費用が非常に低く見え、物流企業からの見積額が高く見えてしまうと言うことが発生します。
  時間をかけてでも現実物流コストの把握を行わないと比較検討が出来ません。

②輸送

  輸送の方法(船・航空機・トラック等)も当然ですが、リードタイムも忘れてはなりません。物流アウトソースを行い物流センターのロケーションが変わると、顧客への配送リードタイムにも変更が生じてくる場合があります。
  新しい物流センターで顧客が希望するリードタイムを守れるか、今までよりも改善されるか等の検証が必要になってきます。

③保管

  温度管理、湿度管理、三温度帯管理等、様々な保管方法があります。また、危険品といった物もあります。建物は高床式・低床式のどちらが商品に適合しているかの検討も重要です。その他には、料金算出方法も個建や坪建等に分かれますし、在庫管理方法についても紙ベースで行われているのか、倉庫管理システム(WMS)を導入しているか等の保管方法と保管管理方法も気になる点です。

④荷役

  十分な人数とスキルを持った従業員が備わっているか。必要なマテハン機器が導入されているかも確認すべきです。マテハン機器の選定はコストと品質が複雑に絡んで来ますので十分な検討を要します。また、荷役に必要なスペースを確保しているかもチェックポイントになるでしょう。

⑤流通加工

  アウトソース先は必要な業界知識を持っているでしょうか。また、必要なマテハン機器の準備が可能かも確認すべきです。
  アパレル業界の場合を例に取ると、検針器での検品やミシンを使用したケアラベルの取り付け。化粧品業界の場合は、商品によっては横倒ししてはいけない、クール便で発送する等、いろいろな業界特有な事情があります。
  アウトソース先が業界知識を持っているかどうか確認しましょう。

⑥物流情報

  入出荷情報・在庫情報等の物流情報はどうやってやり取りしますか?
  現代では情報は物流に大事な要素の一つです。特にERPを導入されている企業は、物流情報を経営情報として使っています。1日数千件の出荷がある企業では、出荷情報・在庫情報等をFAXや電話でやり取りすることは到底出来ません。EDI、e-mailが必須条件になります。これらITのスキルをどれほど持っているか、アウトソース先は、コンピュータシステムの知識を持っているかということも重要です。

⑦品質

  アウトソース先の物流品質はどうでしょうか?
  CS運動に取り組んでいますか。KPIの知識を理解していますか。コストだけ見て品質に目をつぶってしまうと、後から思いがけない多大な出費を強いられることもあります。

⑧知識・経験

  提案書には十分な内容が盛り込まれていますか?皆様が希望している内容が網羅されていますか?良いことばかり言っていないでしょうか?
  営業担当者は、当然良いことをたくさん言うと思いますが、どこの企業にもデメリットが必ずあるはずです。それを正直に開示することによって、より良い関係を築く事が出来るでしょう。

⑨ロケーション

  倉庫のロケーションは適切でしょうか?近隣住民への配慮をしていますか?
  例えば食品輸送等で24時間稼働が必要な場合に、工業専用地域でなければ早朝や深夜の運営が出来ないということもあります。そういう点への配慮も必要です。

⑩導入スケジュール

  無理な日程を組んでいませんか?ガントチャートで管理していますか?
  5W1Hをしっかりと捉え進捗管理を行ってください。(Who, When, What, Whom, Where, How)

⑪引越

  入出荷への影響や在庫数量の確認がしっかりされていますか。

  以上が、物流企業に対する課題です。各々の課題の中で、更に課題の詳細がブレイクダウンされてくると思います。何階層作るかは、課題がどれだけあるかに起因するので、個々の企業で検討しなければなりません。

5.課題の抽出 「社内の問題」

  物流課題の解決は、「物流企業と相談して進める」、「見積書・提案書をもらう」、もしくは「部門内で検討する」ことで解決可能ですが。社内には非常に大きなハードルが沢山あります。ここでは、9つの問題を挙げてみました。

①説明と説得

  アウトソース時の社内の利害関係者は誰でしょうか?
  他部門から、「それは現実的ではない」と言われてプロジェクトが頓挫してしまうことがないように、プロジェクトには全ての利害関係者を巻き込むことが重要です。

②購買部

  物流センターのロケーション変更が決まった場合、いつから、どこに倉庫が変わるのか、サプライヤーへはいつ、どのように通知するか決めなければなりません。

③生産(工場)

  物流拠点の見直しを行い拠点数が増減する場合、在庫量の変動が生じます。拠点数が増えると顧客満足の向上に繋がりますが在庫量が増加します。その結果、生産量を増加させなければなりません。また、拠点数を減らせば在庫量が減少するため、生産量を減少させることになります。
  つまり、拠点数の変更は生産量や在庫量に直結するため、会社の経営やキャッシュフローにも大きく影響してきます。故に、物流拠点の見直しには、生産や調達も大きく関わってきます。

④マーケティング

  販促品の取扱いについても、どこで、だれが、どのように管理するか、しっかりと検討しなければなりません。

⑤情報システム部

  1日10~20件の出荷ならばFAXやe-mailでのやりとりで可能ですが、1日数百件、数千件を超える量の入出荷がある場合は、EDIの構築や物流会社から戻ってくるデータの取込を検討する必要があるため、物流会社とのEDIの連結が非常に大きな課題になります。その一つがセキュリティー対策問題です。一例として、私共のお客様でSAPを使っておられるお客様がいらっしゃいますが、セキュリティーが非常に厳しく、EDIで直接データ転送が出来ません。そのため、お客様のSAP端末を私共の物流センターに置き、SAP内の出荷データを一旦MDに取込、そのMDの情報を私共のシステムに取込む方法をとっています。

⑥営業担当

  顧客への通知はいつ、どのように行うか。いつの時点から、商品が送られてくる場所が変わるかというアナウンスをしっかりと行わなければなりません。また、返品はどこに、どのように行うのかということも、顧客へ通知することが必要です。

⑦物流担当者

  業務内容がどのように変わるのか周知徹底しなければなりません。

⑧人事部

  配置転換が必要か、住居を伴う転勤があるか等、人事的なことがクリア出来ないためにアウトソースが実現出来ず、効率化出来ないという事例も多く目にします。

⑨経営者

  コスト変化はどうなるか。アウトソースによるメリット/デメリットは何か。将来の物流設計は。売上が大きくなった時に対応可能か、等の説明が必須です。
  また、自社物流を行っている場合は、現在の倉庫、トラック、マテハン機器をどのように運用、処分するかということの説明も必要になってきます。

  今後の物流アウトソーシング時に、これらを参考にしていただけたらと思います。
  本日は弊社のプレゼンテーションにご参加有り難うございました。

以上



(C)2007 Toru kimura & Sakata Logics, Inc.


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