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第135号新たなるバーコードGS1 DataBarの概要(2007年11月8日発行)

執筆者 森 修子
財団法人流通システム開発センター
国際流通標準部
研究員
    執筆者略歴 ▼
    略歴
    • 2005年より財団法人流通システム開発センター勤務
    • 国際流通標準部にてGS1のバーコードおよび識別キー標準分野を担当
    • GS1 DataBar2010年プログラム・リエゾン

目次

1.GS1 DataBarシンボルの標準化

  2006年5月、国際流通標準化機関であるGS1の理事会は、2010年1月1日よりGS1 DataBar(ジーエスワン・データバー、旧称RSS)を新たに一般消費財に使用する標準とすることを承認した。
  GS1 DataBarは1990年代半ばに当時の米国のコード機関UCC(現在のGS1US)の主導で開発が始まり、1999年に仕様が確定した。2001年には医療材料・医薬品等の分野での標準シンボルとしてGS1の仕様書に加えられ、既にこの分野で利用が始まっている。また、2006年秋にはISOの国際規格(ISO/IEC24724)として成立し、公表された。
  今回はGS1 DataBarのうち、小売業で利用されている全方向性の定置式POSスキャナで読取可能な4種類のシンボルを、一般消費財をはじめ全ての商品のマーキングに利用できる標準とすることが合意された。 業界や商品を問わずオープンに利用されるシンボルの標準化は、EAN(JAN)シンボル、ITFシンボル以来である。また、小売業のPOSで読み取られる消費者購入単位に使用されるものとしては、UPCおよびEAN(JAN)以来、実に約30年ぶりの新しいシンボルの登場である。なお、GS1 DataBarの2010年標準化においては、ロジスティクスにおける商品識別にも利用できることになっている。

2.GS1 DataBarの概略と利用分野

2.1 2つの特長

  GS1 DataBarには7種類のシンボルがあり、GS1 DataBar「ファミリー」とも呼ばれる。各シンボルの詳細は表1に示す。大きな特長として、①表示スペースが小さいこと、②商品識別コード(GTIN)以外の情報を表示できるシンボルがあること、を挙げることができる。
  GS1 DataBarは以前RSS(Reduced Space Symbology=省スペースシンボル)と呼ばれていた。現在のGS1 DataBarに改称されたのは2007年2月である。これは、RSSという名前では、「小さい」という面のみに注目しており、より重要な「商品の明細情報を符号化できる」という特長を強調したい、というGS1の方針による。
  ISO/IEC24724として標準化された名称はRSS(Reduced Space Symbology)であるが、ISOに対しても今後名称変更を申請する予定である。

図1.GS1 DataBarとEAN/UPCのサイズ比較イメージ


表1.GS1 DataBarの仕様(シンボル見本は実寸法ではありません)


*画像をClickすると拡大画像が見られます。


(*1):緑で示した定置式POSで読取可能な4種類が2010年の標準化対象シンボル
(*2):Xはシンボルの最小バー幅。現在、小売POSを通過するシンボル用はEAN/UPCと同じ0.33mm(80%~200%の縮小・拡大可能)を想定。

2.2 GTINを表示して小さいシンボル

  GS1 DataBarオムニディレクショナルとGS1 DataBar スタック・オムニディレクショナルはGTINを表示し、JANシンボルと比べて小さいスペースで印字できる。特にGS1 DataBarスタック・オムニディレクショナルは、横幅を狭くしてその分縦二段に積み重ねた形をしており、球面などのスペースに貼付するのに向いている。後述の通り、ウォルマートなどの小売業が青果に活用することを表明している。

2.3 GTINと商品明細を表示するシンボル

  GS1 DataBarエクスパンデッドと、GS1 DataBarエクスパンデッド・スタックは、ともに「拡張」の意味を持つ「expanded」を名前に持つことからわかるように、GTIN以外に商品の明細情報も表示することができる。GS1-128(旧:UCC/EAN-128)のようにアプリケーション識別子(AI)によってロット番号・重量・販売期限その他の複数種のデータを連結して表示し、かつ、定置式POSで読取ることができる。
  製造年月日やロット番号、有効期限などを利用したトレーサビリティシステムの構築も可能で、今後国際的に研究が進むと予想される。

3.2010年標準化の実際

  2010年のGS1 DataBar標準化について、特に以下の点を確認しておきたい。

これまで使用してきたJAN(EAN)やUPCは2010年のGS1 DataBar標準化以後も使用可能
現時点の国際的な合意では、2010年の使用開始時に利用できるのは、これまでPOSでの商品識別に利用してきたGTIN-12, 13 (12桁、13桁の商品識別コード)を符号化したGS1 DataBarシンボルである
今までPOSで利用していないGTN-14や、AI(アプリケーション識別子)を用いた追加情報データは、今後、利用分野ごとに一定の合意を形成して利用に進む。2010年から利用開始を目指す分野もある
2008年秋から開始される日本国内の医療用医薬品等(特に特定生物由来製品)のバーコード表示に使用するシンボルはGS1 DataBarリミテッドまたはGS1 DataBarスタックであり、グローバルな一般消費財への使用シンボルとは種類が異なる

4.2010年の標準化発表後のグローバルな動き

  2010年の標準化に向けて、様々な作業が進行中であるが、その一部を紹介する。

<標準化作業>

  グローバルな標準化作業では、まず生鮮識別の作業部会が発足し、利用要件の検討を続けている。2008年の夏頃には、生鮮関連で、追加データの利用を視野に入れた一定の合意が形成されると思われる。「このようなビジネスニーズの場合には(AI)XX、YY ZZ・・・のうち、桁数に応じてブランド・オーナーが選択する」というような、自主ガイドラインの形式である。

<利用環境の整備>

1)機器対応調査
GS1では各国加盟組織と小売業に呼びかけて、機器のGS1DataBar対応準備状況についての調査を継続して行うことにしている。
2)可変情報の高速印刷
ラベルでなく、パッケージに可変情報を符号化したGS1 DataBarを一定以上のスピードで印刷することは国際的な課題として認識されている。現在作業部会が組織されつつあり、実質的な活動が始まれば、あらためて概要をお知らせしたい。
3)サイズ決定
現在のGS1仕様書では、GS1 DataBarの使用はヘルスケア分野に限定されており、シンボルのサイズの範囲もヘルスケアの利用についてのみ規定されている。今後定置式POS用のシンボルのサイズを規定していく予定である。現在の定置式POS用シンボルであるEAN/UPCでは最小バー幅は0.33mmが基本である(表1の註を参照)。しかし、2001年に米国内でまとめられた青果の識別へのGS1 DataBar利用ガイドラインでは0.254mmを基本とする提案がなされており、今後これに近づく可能性もあるため、ご留意いただきたい。

5.GTIN利用~パイロットから実装へ~

  海外では、商品識別コード(12桁、13桁のGTIN)のGS1 DataBarによる表示が、実験から実運用に進もうとしている。 北米では、現在、果物、野菜などの青果にはコモディティコードと呼ぶ、プライスルックアップ方式の4桁または5桁の数字が表示されている。この数字の入力間違いが販売価格の間違い等につながり大きなロスになっているとされるため、青果にもGTINを表示し、通常の加工食品と同様な管理をしたい、という強いニーズがあった(図2参照)。
  2006年に米国のウォルマート、カナダのロブロウズが他社に先駆けてリンゴやアボカド、バナナ等にGTINを表示したGS1 DataBarスタック・オムニディレクショナルを貼付して実験を行った。その結果、効果を大いに認め、今年中には本格的に国内各店舗に広げたいと表明している。また、これらの小売業は、生鮮品の識別についての利用の標準が定まれば、利用を開始する可能性が高い。

図2.GTINを表示したGS1 DataBarスタックオムニディレクショナルを貼付したリンゴ


6.物流への影響

  GS1DataBarの標準化で物流の世界にも影響が生じる可能性が高い。まず、GS1-128の活用がより一層進むことが予想される。米国では、ばら売り青果の一つ一つにGS1 DataBarスタック・オムニディレクショナルの貼付を検討しているが、青果のケース単位にはGS1-128を利用して、重量や生産者、原産地、消費期限などを合わせて表示することも議論されている。青果だけでなく、精肉・海産物などのケースにも同様の表示を行いたいという考えもある。また、もし一部の商品にGS1 DataBarエクスパンデッドが個品に貼付されるようになると、それと連動して集合包装単位や、パレット等の物流単位には個品と同じ商品の明細情報を持つGS1-128を貼付するケースが増えるだろう。これに伴い、たとえば集合包装等の単位で先入れ先出しの商品管理を行う、回収やリコールの対応に利用するなど、物流段階の管理も高度化すると考えられる。
  また、GS1 DataBarシンボル自体それが物流単位にも貼付される可能性もある。ただし、この場合は、物流用のサイズ標準等が新たに設定されるはずである。物流現場のスキャナで読取ることになれば、そのスキャナ用にある程度の大きさを規定しなければならない。どの程度の大きさをターゲットにするかはシンボルの読取効率等を考慮して、規定する必要がある。

7.日本のユーザーが感じるポテンシャル

  現状では、日本においては、まだGS1 DataBar読み取りのハードの整備に課題がある。国内の小売業・卸売業各社には、スキャナの入替えの際にはGS1 DataBar対応機種を選定していただくようお願いしている最中である。一方、当センターが国内ユーザーと意見交換をするなかで、GS1 DataBarの利用への期待を感じることも事実である。たとえば、GS1 DataBarエクスパンデッドに、ロット番号や販売期限などを表示して製造からのトレーサビリティ、もしくは店舗内での販売コントロールに利用できないか、というニーズである。こうしたニーズがあることは、現在でも、商品コードとともに、値引き額などの追加情報をCode-128を利用するなどして表示しているケースなどから伺える。 GS1DataBarエクスパンデッドであれば、セグメントに分解した読み取りが可能なので、Code-128に比べて読み取り効率も相当に向上すると考えられる。
  今後、当センターもユーザーとともにどのような利用方法があるか、研究会等を発足させて検討していく予定である。 引き続き、機器の更新の際にはGS1 DataBar対応のものを選定していくことを推奨する一方、国内での利用ニーズを探りながらこの新しいシンボルについての情報発信を行いながら、普及に努めて行きたい。

以上



(C)2007 Naoko Mori & Sakata Logics, Inc.

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