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ロジスティクス ・レビュー

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グローバル・ロジスティクス

第134号Otto Versand & HERMES LOGISTICS—-ドイツ通販のOTTOと物流子会社HERMES—-(2007年10月23日発行)

執筆者 鈴木 準
サン物流開発 代表
1933年9月22日 東京都江東区出生
    執筆者略歴 ▼
    学歴
    • 東京経済大学商学部卒業
    • 産業能率短期大学生産管理科卒業
    • 日本電子専門学校電子計算機科卒業
    職歴
    • セーラー万年筆(株)経営企画室主任
    • (株)長崎屋 物流部・電算部部長・システム本部副本部長
    • (株)サン商品センター代表取締役社長
    • (有)サン物流開発代表取締役
    • サン物流開発代表
      現在に至る
    講師
    • 専修大学講師・早稲田大学講師及び早稲田大学アジア太平洋研究センター講師経験
    • JILS 物流現地フォーラムコーディネーター 20年経験
    • 日経ビジネススクール講師
    • 文化ファッションビジネススクール講師
    • 中小企業事業団登録専門指導員経験
    資格・所属団体等
    • 物流管理士、販売士1級、日本物流学会会員、国際物流管理士
    その他
    • 海外物流視察100回、内外合わせて1,000施設視察
    • 2006年 (社)日本ロジスティクスシステム協会 物流功労賞受賞
    連絡先
    • 事務所 〒274-0822千葉県船橋市飯山満町3-1761-105
      TEL.047-467-1077
    • 住 所 〒274-0822千葉県船橋市飯山満町3-1761-105
      TEL.047-467-1077
    • メール sun_logi@nifty.com

目次

人と地球に優しい物流センター—風力発電のある物流センター—

  ドイツの通信販売は1998年に168億3,800万EUR(2兆3千億円)を販売し小売業シェアは 4.6%であった。(日本は2003年2.68%)ドイツの通信販売は帝国時代の1871年に始まる。鉄道と郵便の発達と関税制度の廃止により発展した。ドイツはアメリカに次ぎ世界第二の通信販売市場である。どんな小さいカタログでも含めると、家庭の70%は通信販売を利用している。
  OTTO社は創業者のオットー氏が第二次世界大戦後、兵役から復員し、廃墟の中から立ちあがり、靴の製造・販売をはじめた。その販売方法に通信販売を採用した。それから半世紀を経て、オットーは世界一の通信販売業者になった。 オットーは世界最大、かつワールドワイドの通信販売企業であり、世界19カ国で通信販売を主体とした小売業123社を経営し、年商は168億ユーロである。
  従業員は世界で76,000人、ドイツ国内で30,000人である。売上高は世界で152億EUR、ドイツ国内で 80億EUR。カタログは1,300 ページ、7万アイテムが掲載されている。小物用センターは本社のあるハンブルグ市とベルリン郊外のハルデンスレーベンの2か所にあり、家電家具の大物商品のセンターはドイツ国内に2か所、ハンガーアパレル用センターがハナウに1箇所、全部で7個所に物流センターがある。年間出荷量は18万品種、5千万ケース、1億6千万ピースである。受注の大部分は電話、インターネットは2003年で15%だが、その後,急激に増加している。午前受注、午後ピッキング、午後受注は翌日午前ピッキングのサイクルになっている。オットー氏は環境問題に強い関心があり、ハルデンスレーベンの物流センターには風力発電装置がある。物流センター内部には木材を多用し、色はパステルカラーである。センター建設の時、蛙の棲家を心配したというエピソードがある。

オットー社ハンブルグの物流センター

  ハンブルグはオットー社創業の地であり、本社と物流センターがある。物流センターの面積は約4万㎡、従業員は1シフト400人、3交代で稼働している。物流センターは本社と共に市街地にあり、既存の6階建ての建物を使っている。ピッキングラックはフリーロケーションである。ピッキング用カートはオリジナルでハンドル等に人間工学的工夫が施されている。1台のカートに4個のプラスチックコンテナが載せられ、1回に4バッチがピッキングできる。

ピッキングのスタート


  ピッキングの作業者は、ピッキング指示ターミナルの表示を見て自分が担当するピッキングピッキングラベルの束を取り、作業者コードとピッキングラベルのヘッダーのバーコードをハンディスキャナーで読み取り、ピッキングを開始する。ラベル(シール)のアドレスで商品を探し、ラベルを商品に貼ってピッキングする。ピッキングエリアの棚の下の1~5段目にはグレーのプラスチックコンテナが多く目についた。これは返品商品で、優先出荷している。なお、返品商品のコンテナには複数の商品が詰め合わせされている。ある作業割り当てをみると、1バッチ22分、73ピースであるが、1人1時間の平均ピッキング量は200点である。

  ピッキングの能力給は 110%までで、それ以上能率を上げても出来高給は支給しない。ピッキングが終了するとピッキングカートをコンテナを自動移載機に押し込む。コンテナは搬送コンベヤに自動的に移載され、バッファ-エリアに搬送される。バッファーエリアに入る前にコンテナのユニークバーコードがレーザースキャナーで読み取られ、バッチ別のラインに仕分けられ、待機する。
  バッファーエリアのコンベヤには2500個のコンテナが滞留できる。ピース仕分けの自動仕分機はドイツ・ボイマー社のクロスベルトソーター4台で、商品を載せるキャリアは2段になっている。バッチ別バッファーエリアから商品を投入するインダクションに運ばれて来たコンテナはインダクション手前のジャムシュートの上方でコンテナを自動的に引っ繰り返し、商品を作業者の方に送り込む。作業者が1個1個コンベヤに載せると、コンベヤが上下して上下2段のソーターに仕分ける。

ボイマーの二段式自動仕分機


  ボイマーの自動仕分機は商品を載せるキャリアが2段になっている。その上、二段のキャリアが上下するので、従来のティルトトレイ式仕分機と比較して、同じ面積で、処理量は2倍、仕分け方面数は4倍になる。通販のピース用自動仕分機としては世界最高の能力である。仕分け方面数は1024、時間当たり処理量は15,000ピースである。
  仕分機に商品を投入するインダクションは10基ある。オーダー別に仕分けられた商品が貯められるシュートの末端に自動仕分機に平行に2段のコンベヤがある。下のコンベヤは袋詰めの投げても良い物、上のコンベヤにはバンド掛けの必要な箱物を流す。コンベヤに沿ってパッキング用テーブルが250台ある。コンベヤの上部には移動可能なPCが吊られている。

  納品書、荷札はセットされて予めシュートに配られている。出荷帳票にはシュート番号、商品点数、包装材の種類とサイズが書かれている。作業者はシュートを確認し、商品を取り出し、納品書と照合して箱に詰める。欠品のあるオーダーは箱に詰めて、蓋に欠陥通知のバーコードラベルを貼って流すと修正ラインに送られる。梱包作業は1人6シュートを担当し、1人時60~70個を梱包する。納品書と荷札を切り離し、納品書はダンボール又は袋に入れ、荷札部分を段ボール等の外装に貼り、出荷用コンベヤに移載する。包装作業が終わるとテーブルの先端を下に押すと、箱は滑ってコンベヤに乗り移る。袋に入った商品は手で投げるようにコンベヤに乗せる。袋物など小物はデポ又は郵便局別に纏める自動仕分機に送られる。ここで興味を引いたのは1人1~2点の少量のオーダーである。帳票類とカタログを商品の下に置き、コンベヤの×マークに載せる。IDのバーコードが読まれ、商品は自動包装機に入り、荷札が自動印刷され、自動貼付される。作業者の工数は削減され、1人時の処理量が上がる。小さいオーダーの袋詰めの商品は自動仕分機で64か所のデポに仕分け、コンテナに入れられる。自動仕分機はデンマーク、クリスプラント社のチルトトレイソーターである。詰め合わせのコンテナと箱詰めのものと共にデポ向け出荷用仕分け機で仕分けられ、デポ別のトラックに積まれる。各種の作業エリアでは機材を含めて木材が多く使われている。一部のフローリングは木材で、優雅で美しく、人に優しい設計として印象に残った。オットー氏の世界観で人と地球に優しい物流センターになっている。物流センターの内外の色彩もオットー氏が指示するそうである。
  欧米では通販のオーダーピッキングに自動仕分機を使っている企業が圧倒的に多いが、日本では浜松のムトウ(1980年)以外に見たことが無い。博士号をもつオットーの物流部長は通販のオーダーピッキングに自動仕分機を使うと、マニュアルと比較して生産性が15~20%上がると言っていたがコストではどうなのか聞きそこなった。

同業の物流も受託する物流子会社HERMES Logistics――ピックポイント10,000軒・ドイツポストに挑戦――

  エルメス・ロジスティクスはOTTO Groupの最も重要な機能である。ロジスティクスは通信販売業社の生命線であり、ロジスティクスの重要性は他の小売業の何処よりも大きい。顧客が商品を購入しただけでは、通販の顧客サービスは終わらない。お客様の希望に沿って商品をお客様が使える様にして渡して、初めて終わる。大きい家具では、配達の時に室内の指定の場所にセッティングする。

  そして、大型家電は設置工事もする。この包括的なサービスを自らの手で提供するために、オットーは1972年にHermes Delivery Serviceを設立した。当時のドイツの郵便は日本と同じ官業で、サービスは悪く、運賃も高かったので、顧客に良いサービスが提供できなかったからである。
  今日、ヘルメスの活躍により、オットーグループの個々の会社には、彼らの競争相手より戦略上重要な利点が多くある。2006年,Hermes Logisticsと改称した。ヘルメス・ロジスティクスは、ドイツのドイッチェポストに次ぐ最も大きい宅配便業者に成長した。通販の家具、大きい電気製品はもとより手紙や個人小荷物にまで及んでいる。

ハンガーソーター


  ハンガーに掛けたアパレルのB2Cの翌日配達は世界に類が無い。贈答品の包装や名入れ、VAS(流通加工)や修理サービスなどもしている。郵便と情報サービスの分野では、Hermes Logistics は国際郵便も展開し、ヨーロッパで29%のシェアを持っている。その上、1万軒のヘルメス宅配便引き受け店(ピックアップポイント)を通して、個人間の宅配便の全国配達サービスを提供している。2006年、HERMES Warehousing Solutions社(HWS)をオットーグループの100%出資の物流会社として設立した。この会社の業務はオットーグループの物流センター業務を担当すると共に、オットーグループ以外の顧客に広範囲にわたる物流業務(3PL)を提供する。荷主の荷物の保管、在庫管理、出荷業務など物流のすべてのプロセスチェーンに対する責任をとって業務を行う。ドイツでも通販企業ばかりでなく、多くの企業は物流業務をアウトソーシングしようとする潜在的需要がある。また、ドイツに進出しようとする企業も3PLの利用を考えている。HWSは特別な“WMS”を持ち、荷主のロジスティックスを改善する。HWSは、ハンブルグと Haldensleben(ベルリン近郊)でオットーのロジスティックスセンターの業務を受託している。その他にもHERMES Internationalという会社を設立し、国際物流にも進出している。OTTO LOGISTICS GROUPは3PLとして、あらゆる製品の大量かつ広範囲のロジスティックスを取り扱うことができる。
  1995年、ドイツではドイツポストが民営化され、凄まじい勢いでM&Aを繰り返している。日本でも富士通ロジスティクス(現エクセルジャパン)が買収されている。Danzas, Tibet & Britten, Exel、TNT、アメリカのDHL、エアボーン、AEIなど、欧米大手の3PLや物流業社が買収されている。OTTOはドイツポストに対抗して、グループの物流効率化のため自社以外の顧客からの売り上げを増やしている。世界のどこでもB2Cはやっていないと思うが、ハンガーに吊ったままのアパレルの配送と返品回収を実施している。オットーグループの配送では大型家具の室内へのセット、家電の取り付けサービスもしている。個人間の宅配便にも進出しオットーグループ以外の売り上げを増やし、年商7兆円といわれるドイツポストと堂々と渡り合っている。

以上



(C)2007 Jun Suzuki & Sakata Logics, Inc.

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