ロジスティクス・レビュー

第130号流通業界における物流ラベルの現状と課題(2007年8月21日発行)

執筆者 上田 俊秀
財団法人 流通システム開発センター 流通コードサービス部  上級研究員
    執筆者略歴 ▼

  • 学歴
    • 1985年 東京都立大学経済学部卒業
    職歴
    • 1985年 日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。
      -主に、消費財製造業/卸売業を担当
    • 1999年 サン・マイクロシステムズ株式会社に入社。
      -主に、ISVソリューション・ビジネスを担当
    • 2003年 アビームコンサルティング株式会社に入社。
      -主に、流通業関連プロジェクトに参画
    • 2005年 財団法人 流通システム開発センターに入職。
      -流通コードサービス部に所属

目次

1.物流ラベルの現状

  今日の消費財の流通業界においては、物流上の様々な目的で、物流ラベルが活用されている。物流ラベルは、一般的には、A型サイズ(50x85mm)などのラベルに、用途に応じて、必要な情報とバーコードを印刷し、ダンボールやオリコンなどに貼付し、物流効率化に活用しようとするものである。一部には標準仕様の定められているものもあるが、現状は、取引先毎にバラバラな様式となっているのが現実である。現在、消費財の流通において使用されている主な物流ラベルを分類すると、以下のようなものにまとめられる。

(1)仕分・積込用ラベル

  主に、配送センターや物流センター内でのみ、集荷・仕分・積込用に使用される物流ラベルである。例えば、出荷指示情報に基づき、ケース・ピッキング・仕分け用の物流ラベルや、バラ・ピッキング商品を詰め合わせたオリコン用の物流ラベルを発行し、集荷したケースやオリコンにラベル貼付し、店舗別仕分ラインで、物流ラベル上の情報に基づき自動仕分けを行い、物流ラベル上の情報に基づき出荷検品、出荷先店舗別に積み込みを行なうなどの使用例がある。あくまで、商品の受け入れ側での使用は前提としない、商品の出荷側の配送センターや物流センター内の物流設備・機器に依存したセンター内完結型の物流ラベルである。

(2)荷札ラベル

  主に、物流業者用の物流ラベルである。代表的な標準化規格としては、日本アパレル産業協会などが開発したアパレル物流EDIシステムであるJAICS-Lというシステムで発行される統一荷札(図1参照)がある。出荷確定情報に基づき発行された統一荷札を、ケース又はハンガー商品(先頭)に貼付し、それら荷札のバーコードを各物流業者(集荷担当)がスキャンし、積み込む。共通の「統一荷札」の使用により、全ての対応物流業者に対し、統一した出荷・積み込み作業が可能となり、誰でも正確な対応が可能となる。

(図1)統一荷札のサンプル

(3)PDラベル(Physical Distributionラベル)

  まれに、SCMラベルと同義的に使用されたり、広い意味での一般的な物流ラベルとして使用されることもあるが、主に、店舗仕分け用に用いられる物流ラベルである。PDラベルは、流通業の物流センター等における方面別、店舗別仕分けシステム用のバーコードラベルであり、当センターで制定した。ラベル寸法について、A型サイズ(50x85mm)、B型サイズ(60x92mm)、C型サイズ(80x115mm)の3種類が、標準として規定されている。印字内容の例としては、得意先名称、仕分け用バーコード、部門コード、店名コード、取引先番号、荷番、取引先名、個口数などである。納品データの送信を前提としていないことから、納品伝票の添付が必要な、オフライン型のラベルである。

(4)SCMラベル(Shipping Carton Markingラベル)

  主に、オンラインで送信されるASN(Advanced Shipping Notice:事前出荷明細情報)との連動により、検品作業等の業務効率化が行なえる物流ラベルである。品揃え、梱包、受注情報に基づき出力されたSCMラベル(図2参照)の貼付が終了した時点で、確定納品データを作成し、これをASNとして、納品先に送信する。受け入れ側は、このASNと商品のSCMラベルを自動照合すること(図3参照)により、検品作業を大幅に効率化可能となる。また、納品伝票を削減できる等のペーパーレス化にもつながる。印字内容の例としては、店仕分け用バーコード、情報系バーコード、納入業者自由使用欄、店名、店コード、取引先コード、納入指定日、取引先名、小売業者自由使用欄などである。SCMラベルの標準化についても、過去において、当センターが事務局となり、日本チェーンストア協会や、これに連動する形で日本百貨店協会において、検討がなされた経緯がある。

(図2)SCMラベルのサンプル

(図3)物流情報システム(ASN/SCMシステム)の流れ

  なお、上記のほか、ISO(国際標準化機構)によって標準化されたISO15394規格国際流通ラベルや、このISO15394規格に準拠して日本ロジスティクスシステム協会が標準化を進めた出荷・輸送・荷受一貫ラベルであるSTARラベルなどもある。

2.現状の課題

  以上のように、物流ラベルと一口に言っても、使用目的によって様々な形態があり、取引先相手によってバラバラな様式の物流ラベルと、取り扱い手順が求められているのが現実である。業界によっては、標準が定められている場合もあるが、ごく少数の企業のみでしか、標準仕様が使用されていなかったり、標準自体で複数のラベル・サイズを認めており、印字形式は、あくまでも、サンプルとして例示しているのみのものなどもある。
  物流ラベルのサイズが同じで、単に、印字形式が異なるのみであるならば、ラベル発行システムの開発上の問題であり、日々の運用上の負担は、それほど大きくはならないが、ラベルのサイズが異なったり、色つき台紙を求められるような場合は、ラベル発行機を複数台用意しなければならなかったり、台紙の掛け替えが必要など、日々の運用コストにも影響を与える。
  特に、受注情報や集荷作業から自動的に生成される情報以外の情報の物流ラベルへの印字を求められる場合は、別途、情報入力が必要など、現場担当者の負担が大きい。例えば、不定貫商品で、物流ラベル上に重量を表示しなければならないような場合は、出荷時点での情報入力が必要となり、物流ラベル発行作業が煩雑となる。
  さらに、取り扱い手順が異なる場合は、現場担当者の日々の作業にも負担を与えることになってしまう。出荷商品に添付する付帯帳票も、取引先相手によって異なっており、物流ラベルの運用と合わせて、現場作業を複雑にしている。付帯帳票には、現在では使用目的の不明確なものが、過去からの経緯で継続して求められていたり、事前出荷明細を送信しているのだから本来は必要ないと思われる出荷明細票を求められていたりすることなどもある。
  商品の受け入れ側は、自己の都合を、商品の出荷側に押し付けるのではなく、双方にとって、ローコストで精度の高い作業が出来るような仕組みの構築に取り組むべきである。

3.標準化によるメリット

   本来、物流現場における物流ラベルの活用は、物流作業の省力化、配送精度や管理精度の向上につながるものである。商品の受け入れ側のみではなく、商品の出荷側も、このメリットを享受するには、取引先毎の運用上の違いを極力なくし、標準的な作業を行なう必要がある。
  現在、経済産業省では、平成18年度より3年計画で流通システム標準化事業を行なっている。この中で定められた流通ビジネスメッセージ標準と連携した物流ラベルの標準化検討が進められようとしている。平成19年度は、これまでの標準制定時の背景や、普及推進上の課題、現在の物流ラベルの利用実態等を調査したうえで、標準化のあり方を検討、平成20年度に、具体的な標準を策定し、普及推進のためのガイドラインを作成する予定である。ここで定められた標準は、新規に物流システムを構築する場合や、従来の物流システムを改変する場合などに、順次に、標準が広く採用されることにより、流通トータルでの物流の効率化、精度の向上に結びつくことが期待される。

以上



(C)2007 Toshihide Ueda & Sakata Logics, Inc.


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