ロジスティクス・レビュー

第126号物流施設計画の基礎(2007年6月19日発行)

執筆者 久保 章
久保総合技術研究所
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1947年2月生まれ
    • 1971年3月 早稲田大学大学院 理工学研究科建設工学専攻 修士
    • 1971年4月 株式会社 大林組入社 東京本社建築本部設計部 構造担当 配属
    • 1994年3月 本店エンジニアリング部 物流担当 異動
    • 2007年2月 株式会社 大林組 定年退職
    • 2007年3月 久保総合技術研究所(建築設計、耐震診断、物流システム) 創設
    所属
    • 日本建築学会、日本物流学会、日本建築構造技術者協会、物流技術管理士会
    資格
    • 一級建築士、建築構造士、物流技術管理士、監理技術者
    表彰
    • 2005年1月 社団法人 日本プロジェクト産業協議会「フラッグシッププロジェクト提案公募」受賞 共同提案(輸送ネットワークシステムin東アジアフリーマーケットプラザ)

目次

1.トータルプロジェクトマネジメントの確立

  物流施設建設プロジェクトを支える技術は、多様な要素技術の複合から成り立つものであり、物流システム技術(物流設備、情報システム)、建築設計技術(意匠、構造、電気、空調・衛生)、施工技術(工事、機器製作)に大別されるが、これらはコスト、スケジュール、品質、許認可、機材調達、施工性、安定性およびメンテナンスなど種々の面で、密接な関係にある。その上各専門分野の技術者の認識と協力が必要である。更に事業側である建築主、投資家およびテナント(荷主、3PLなど物流事業者)など多様化・複雑化しており、共通認識の重要性が増している。そのため、このプロジェクトを所要の性能・品質を達成させ、かつ目標のコストおよび工期で納めるためには、企画から施工までを一元的に設計・工事監理するトータルプロジェクトマネジメントの確立が不可欠です。一般的には、プロジェクトの初期段階で決めたことほどコストへの影響が大きく、特に設計の内容は、プロジェクトのみならず、品質、安全、工期等プロジェクトに係わる全ての事項に影響を及ぼす。
  雨露を防ぐ物流施設でよいならば、少し勉強して専門知識があれば誰でも計画することは可能です。しかしそのために社会的使命、責任感や倫理観が欠けているコンサルタントや技術者が、計画した施設が存在するのも事実です。環境問題を考えると、これからは、スクラップ・アンド・ビルド方式は通用しない。物流施設でも長寿命建築を目指す必要がある。

2.物流施設は何の為のものか?

  一般建築物では、主役は当然「人間」である。そのためデザイン、快適性、居住性、利便性、機能性等が要求される。一方物流センター、流通倉庫、営業倉庫、工場倉庫では、主役は「モノ・商品」です。効率的なモノの保管・移動、ピッキング、仕分け、入出庫およびシステム化による省力化・経済性が追及される。「モノ・商品」を中心にして人・機器設備・情報が融合するシステム全体最適化を図ることが求められる。物流システムへの社会ニーズは益々高度で多様なものになっている。
  消費生活における消費者ニーズの多様化・高度化の進展に対応して、取引先ニーズも多様化・高度化し、取引先に対し多頻度小口輸送やジャストインタイム輸送といった質の高い輸送サービスが求められる。
  さらに建設地の地域の環境・自然を生かし地域の風土にあった施設が必要で、近隣の住民からも認められる施設が必要である。

3.法令等の遵守

  施設を建設する為に建築基準法、都市計画法、消防法、道路法、駐車場法、宅地造成等規制法、倉庫業法、港湾法、騒音規制法など関連する法令および都道府県毎の条例がある。法令に定めがある場合はその規定に従って許認可等を必ず受ける必要がある。法令等を遵守した上で経済設計が要求される。
  物流施設の現状調査や施設見学に行った場合、時々違反施設を見かける。例えば、消防署、特定行政庁等の完了検査後にメザニン方式を採用している場合です。好ましくはないが、違法とならないようにするためには、既設の床面積に対して規模を大きくしない。ラックの棚とみなせるようにする。建物の構造体とメザニンの構造体を接続しない。メザニン部分を作業場、事務所等居室にしない。設置期間を長期にしない。解体移設可能にする。消防法に対して、違法とならないように自動火災報知設備、消火栓設備等を配慮する必要がある。

4.計画の作業フロー

  全体の施設計画の作業フローを図-1に示す。ステップ1と2に充分時間をかけ物流データ分析、基本システムを決定するためにプロジェクトチームで協議することが重要である。
  規模等によっては該当しない項目もあるが建築計画検討項目を表-1に示す。今回は建築主側や物流・情報システム側の現状分析・計画の説明を割愛し、敷地が選定された後の建築側を中心に検討項目のほんの一部を述べる。

図-1 物流施設計画の作業フロー
表-1 建築設計段階と検討項目

(1)法規

  用途地域による建築制限があり、建ぺい率、容積率、建物高さ-斜線制限(道路、隣地、北側)、日影規制等が決められている。大規模開発事業等のときは環境影響評価(環境アセスメント)が、「土地の区画形質の変更」のときは、都市計画法による開発許可行為が発生する。

(2)地盤調査

  基礎工法の選定、将来的に施設の機能を損なわない為、不同沈下防止、トラックバースの路盤を決めるため地盤調査を充分に行う必要がある。調査には標準貫入試験、力学・物理試験等がある。建物の広さや地盤の状況によるが、最低でも標準貫入試験を6箇所は必要である。

(3)基礎形式

  基礎形式には、直接基礎、布基礎、ベタ基礎、杭基礎-場所打ち鉄筋コンクリート杭、埋込み杭、打込み杭など-があり、建物重量と地盤調査の結果で決まる。杭には各種工法がある。地盤が沖積層で軟弱な場合は、層厚により地盤改良や杭基礎が採用される。

(4)建物構造種別

  構造種別には、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT(Concrete-Filled Steel Tube コンクリート充填鋼管)造等ある。スパン、規模および建物重量により決まる。

(5)積載荷重

  積載荷重は保管するモノの種類、比重、積上げ高さ、フォークリフト等の荷役機械などで決まる。床荷重の考え方には床計算用、梁・柱・基礎計算用、地震荷重計算用の荷重がある。例えば、倉庫業を営む倉庫の積載荷重は最低地震用でも4,000N/㎡以上としなければならない。床用は地震荷重時用の1.55倍以上、梁・柱用は地震荷重時用の1.25倍以上(5,000N/㎡以上)、実情に応じて設定しているが通常は、床用で10~25kN/㎡が多い。

(6)天井高さ

  天井高さは荷姿、保管方法および荷役機器により決まってくる。パレットを何段積むか、何段積みラックを使用するか、更にフォークリフトの揚高、積付け余裕などを考慮して決める。天井高さは建築費に直接影響する。通常は5.5~7.0mが多い。

(7)柱間隔(スパン)

  施設内の機能、作業能率、取扱品目、ロットの大きさ、パレットサイズ、配置、パレットラックのレイアウト、トラック着床等により決まる。6~12mが多いが、スパンは大きい程、プランニングし易いし、使い勝手もよいが、構造種別選定と建築費に影響する。

(8)建屋内通路

  運搬方法、入出の頻度、取扱品目、ロットの大きさおよび作業動線などから決まる。フォークリフトが走行する場合は、フォークリフトの機種と積付け方法によるが通路幅は2.5~4.0m、作業員の通行用通路の場合は通常0.9~1.2mである。

(9)各作業場面積

  物流業務フローを考えながら必要な荷捌き場、ピッキングスペース、事務室などの部屋を計画する。作業人数などで適正な面積がほぼ決まっている。例えば、事務室は10~12㎡/人、会議室は2~4㎡/人、食堂は仕出しや弁当持参の場合は1~1.5㎡/人、ロッカー0.5~1.0㎡/個、便所は2㎡/便器、男子40~50人で小便器3個、大便器2個、手洗い2個、女子10人で大便器2個、手洗い3個。ただし一斉に休憩する場合は、2倍以上は必要になる。

(10)トラックバース

  入出荷するトレーラ、トラック、ウイング車などによって、荷卸し・積付け方法が異なり、荷役に必要なトラック間のスペースも決まってくる。トラック側面通路幅やトラックの発進・後退に必要な回転半径により、プラットフォーム前面の通路幅の確保が必要になる。

(11)照明照度

  照明は、労働基準法・労働安全法で最低の照度は決められているが、それよりも大分明るく、荷捌き場で150~300ルクス、ピッキング場で200~300ルクス、数量等検品場で200~500ルクス、事務室で500ルクス等である。最近は高齢者が増大しているので、明るくかつ棚表示の文字も大きくするとよい。

(12)施設の耐震性

  従来は耐震設計のアプローチだけであったが、最近では免震設計や制震設計のアプローチ、更にコンピュータや重要な機器を対象に、部分的な免震フロアが採用される。このような施設が徐々に増えている。

(13)設備上の配慮

  もしもの災害がおきた場合のライフラインの途絶や物理的被害に備え、非常用電源、ガス代替熱源、補給水源および非常用通信線の確保、設備配管の破損防止、ラック等転倒防止などの設備上の配慮も必要である。

(14)工事監理

  工事が着工したならば、竣工までの工事期間、工事監理者を常駐させるか週1~2回来て進捗状況や設計図通り工事が行われているかを確認・検査する必要がある。

(15)その他

  建築主側からの説明は割愛したが、注意してほしい点は、現場サイトからはっきりと要望を出す。一番詳しいのは物流施設運営の責任者・経験者である。また入札など行って施工業者選定した後の変更をすると、基本的にはコストアップになる。そのため基本設計完了し、実施設計スタートした後、基本方針を変更しない方がよい。

5.建築の確認申請制度の改正

  一昨年11月に発覚した構造計算書偽装事件の再発防止のため、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律が、今年(2007年)6月20日より施行され、確認検査が厳格に行われる。従来は申請者が申請中に建築計画を一部変更し簡単に図面修正や差し替えをしていたが、今後は修正を認めず差し戻し再受付です。ある一定の規模以上の建物(物流施設は殆ど対象になる)は、特定行政庁や民間の指定確認検査機関とは別に、実務専門家による構造計算適合性判定機関が新設され、確認済証の交付期限も21日が35日以内に、合理的な理由がある場合は更に35日以内延長になる。判定結果によっては「不適合」になり、申請却下される。時間と費用が大幅に増える。申請するまでに、十分に図書等の整合性チェックや設計方針・考え方が妥当か、吟味する必要がある。施設計画の初期の段階で、十分な検討が必要である。

以上



(C)2007 Akira Kubo & Sakata Logics, Inc.


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