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3PL

第12号米国3PL最新動向~3PLに起こった劇的な変化とは?~(2002年07月26日発行)

執筆者 菅 重宏
船井総研ロジ株式会社 代表取締役 社長
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 平成 3年3月  神戸大学 経営学部 卒業
    • 平成 3年4月  株式会社 船井総合研究所 入社
    • 平成12年5月  船井総研ロジ 株式会社設立
      現在に至る。
    分野 【物流企業の方々に対して】
    ・物流業の営業・労務・財務面における活性化支援を手掛けてきた。物流業としての営業活動を手順化した顧客開発プログラムは好評を博している。また、成果還元型の新賃金制度の構築なども手掛ける。
    ・物流企業の新業態として、過去10年来、米国物流業界及び3PL企業の調査を実施し、国内物流企業の3PL事業化ステップの提案活動を行ってきた。
    【荷主企業の方々に対して】
    ・製造業、卸売業、小売業といった荷主企業の物流再構築支援を手掛けてきた。特に荷主企業の物流戦略策定~アクションプランへの落とし込み~具現化支援という戦略、戦術、戦闘レベルの案件を中心に活動している。
    ・荷主企業の製造、販売、物流の調整役として、荷主企業内の構造改革を共同で進めている。
    【講演・研修などの活動について】
    ・各協会主催の研修会、物流子会社への企業内研修、物流情報システムのセミナーでの講演・研修も幅広く対応している。米国物流視察、国内企業視察なども定期的に主催している。
    【今後の活動について】
    ・2000年5月10日に船井総研の子会社として設立された「船井総研ロジ株式会社」の本来の役割である、コンサルティングの次工程業務(ロジ機能の調達、情報システム導入、現場改善導入、コスト・サービス管理など)をコンソーシアムと共同で構築支援するサービスを更に展開する。
    →コンサルティング(調査~提案)、コンストラクション(機能の選定・調達・構築)、コントロール(運営・管理)の3つのコンを船井総研ロジの事業領域とする。
    ・物流業界のIT化を推進すべく、インターネットを活用し、かつ低投資、即導入型の『物流ASPサービス』を積極的に推奨し、ロジスティクスの情報プラットホームを構築する。
    ・直接的なコストダウン(マネジメント、購買など)、ファイナンス(決済、成長資金、短期資金、MBO)などのサービスも2002年度の新サービスとして開始する。

目次

はじめに

米国3PL企業の視察をはじめて、10年近く経ちました。
たくさんの3PL企業を訪問し、また、同じ企業を定点観測してきました。訪問するたびに大きく変化する3PL企業に憧れ、また、脅威を感じてきました。物流からロジスティクスへ、そしてSCMへという米国の物流業界の進化を牽引した「3PL」という業態の最新動向を今回はレポートさせていただきます。
レポートの素材は、今年(平成14年)5月に開催した米国3PL視察セミナーです。以前は毎年2~3回、定期的に同行していましたが、私自身ちょうど2年ぶりの視察同行でした。今回は『ロジスティクス・レビュー』の主幹であるサカタウエアハウス社をはじめ、全国の物流関連企業の方々とミネアポリス、メンフィス、ロサンゼルスの3都市を訪問するハードなものでした。当レポートを通じて、米国3PLに起こった劇的な変化を感じていただければ幸いです。

1.3PLの差別化戦略が表出した!

以前、3PL企業といえば「情報システム(IT)」と「提案力」を自社の強みとして強烈にアピールしていました。ほとんど無理やり?に近い、紋切り型のプレゼンは、聞いていて違和感を持ったものです。しかし、今回訪問した各3PLのプレゼンは独自性に溢れ、以前のそれとは全く異なっていました。その特長は、
①自社のサービスの強み
②得意とする業界
を前面に打ち出し、3PL業界における自社のポジションを明快に伝えるものでした。
例えば「①自社のサービスの強み」として、コンサルティング(調査・分析・提案)に注力する3PL、世界初の情報システムを独自に構築しようとする3PL、レポーティング(結果報告及び分析)に強みをおく3PL、不動産(倉庫)をはじめとする施設・設備にはじまるプロデュースに強い3PLなど、「自社の強み」を明快にしたプレゼンテーションに、3PL業態の進化を感じました。
同様に「②得意とする業界」として、自動車関連に強い、生鮮食品に強い、コンピュータ業界に強い、通販業界に強いなど、経験豊富な「業界」に特化したアピールが目立っていました。「当社は3PLです!」では売れなくなった証拠でしょう。そこには3PL業界内の「激しい競争」が容易に想像でき、逆説的にいえば、3PL+@としての強みを打ち出さないと、顧客に選択してもらえないのです。つまり、対象となる業界やサービス(強み)を絞り込み、同時に「捨てる勇気」を併せ持ったことの表れと感じました。
日本国内でも情報システムを切り口にした3PL、構内作業や生産請負を切り口にした3PL、不動産検索及び斡旋を切り口にした3PL、コンサルティングを切り口にした3PLなど、その攻め口(強み)が多様化しています。言い換えれば、あらゆる切り口から物流サービスは侵食されつつあるということです。単に3PLというだけでなく、明確なサービスメニュー(強み)の打ち出しが、3PLを事業化するには必須であると実感しました。

2.3PLはノンアセットに急激にシフト!

船井総研グループでは3PLを分類する際に、第一にその機能面から3PLO(オペレーション型3PL)と3PLM(マネジメント型3PL)の2つに分類しています。ここではその説明を割愛しますが、この末尾の「O」と「M」は3PLをルール化する際、最も重要なキーワードであり、両者には明快な違いがあります。前者は物流業務の総合請負企業(バックヤード型)、後者は物流設計・管理まで含めた総合保証型企業(フロント型)であり、その機能が異なります。取得するISOも前者は9002、後者は9001を取得している場合が多く、ロジスティクスの設計業務の有無がキーポイントとなります。
例えば、当社の定期訪問先であるミネアポリスのC社は3PLMの典型です。2001年度の売上は約4,030億円(1$=130円)、ここ2年で135%の伸長率を誇り、3,800名の社員を擁しています。しかしながら、請け負った物流現場のオペレーションに従事する社員は、わずか10名程度です。同社の強みはオリジナルの受注~倉庫管理~配車(傭車)システムと人的なつながりです。その徹底ぶりは百見の価値があると感じます。
第二に自社資産の持ち方を軸にした、アセット型(資産あり型)、ノンアセット型(資産なし型)という分類です。アセット型3PLは倉庫や車輌などの自社資産(固定資産)を豊富に持ち、自社所有だからこそ実現できるバーゲニング・パワー(低単価勝負)をアピールしていました。実際、ほとんどの3PLがアセット型であり、それに比べてノンアセット型3PLは自社資産を持たず、情報システムやコンサルティング(人材)に投資・注力してきたという経緯があります。
しかし、このアセット・ノンアセットという分類基準は見直す必要があります。財務会計的には、今回視察した企業にアセット型は皆無でした。正確にはアセット型からノンアセット型に急激に転換したということであり、その方向性とスピードの劇的さには感嘆せざるを得ません。
ノンアセット化の第一要因は「財務健全性の追求」です。荷主企業の3PL選択理由は「財務的な強さ」が第一なのです。3PLは財務状態が不健全であると受注できないのです。なぜなら3PLの受注形態は全勝か全敗しかないため、委託した3PLの経営状況が重視されるのです。米国の経営観はストック(固定)よりフロー(流動)重視であり、小さい資産を高回転させる、身軽でフローの多い企業の評価が高くなります。アセット型3PLであった企業は、その資産を売却し、スリムな貸借対照表を実現しようとしているのです。
第二の要因は3PLが契約し、業務を依頼する輸配送企業(企業や個人)に対しても、財務上の安定=安定した支払保証という評価を受けるからです。結果として低コストの輸送サービスの仕入を実現し、高収益を残しています。
第三の要因は、米国3PL企業の拡大スピードの速さにあります。自社所有の資産を増やしながら業務を拡大すると、資金調達スピードが企業成長スピードに間に合わないのです。したがって3PLOも3PLMも利用する施設のほとんどがリース物件であり、固定資産と長期負債の増加を極端に避け、その財務内容を荷主企業と契約キャリアにアピールしているのです。従来の物流企業のバランスシートとは全く違ったモデルを目指して、総資産の軽量化を目指しているのです。
上記3つの要因を考えると、今後はアセット・ノンアセットの分類を自社資産の有無という視点ではなく、主にアセット・オペレーションを提供する企業をアセット型、システムやマネジメントを提供する企業をノンアセット型と定義したほうが良いと感じました。従来の分類基準で判別すると、全ての3PL企業がノンアセット型に分類されてしまうのです。

3.「可視化」の徹底!

「可視化」とは個人的に、2002年に掲げた物流キーワードです。「可視化とは目に見えるようにすること」とはいえ、一体何を可視化するのでしょうか?
可視化の第一は、数値によるアウトプットです。伸びている3PL企業の共通点として、数値による可視化提案を明快に実施している点が挙げられます。3PLが受託する業務のコスト・サービスを徹底して数値化し、改善前後の評価を数値で測定します。現状把握にはじまる一連の改善手法の合理性、そして未来を数字で語る現実性、最終的に現場を構築する信頼性という「型(プロセス)」を持つ企業が強い、という当たり前を愚直に追求している結果といえるでしょう。
可視化の第二は、企業ノウハウの集約化です。ややもすると個人に依存しがちなノウハウを全社で共有する仕組みを持っています。当社にも相談が多い「物流企業としてのナレッジ・マネジメント」のルールを徹底して運用しています。3PL各社のナレッジ実態を私なりにルール化すると、業界別、企業規模別、業務別という縦軸と、営業、提案、注意点、クレーム情報といった横軸をマトリックス化し、会社の形式知として集約していました。このノウハウの集約がいかに役立つかは、読者の皆様なら容易にご理解いただけると思います。
可視化の第三は、手段(ツール)としてのISOの活用です。日本の3PL業界でも、再度、ISOの有効活用の波が来たと感じています。目に見えないサービスの質をアピールするには、現時点では最も効果的な手段なのかもしれません。社内においては、ISOを通じて業務レベルの均一化を図り、社員の改善意識を高め、定期的に内部・外部からの監査を受けるというサイクルが確立されます。社外においては、ISOがサービスレベルの保証と認識されています。業務手順やチェック項目を可視化するという意味で、ISO効果をフル活用しているのでしょう。

4.最後に

今回の視察のポイントを3つの視点からお伝えしましたが、その他に3PL企業の組織(機能)形態の変化も強く感じました。より広く(サービス・組織の幅)、より速く(スピーディーな変化と実践)、より深い(専門性を追求した)機能組織を3PLは志向しているようです。総合化を目指した成長戦略と言えるでしょう。
但し、全ての3PLが総合化を実現するわけではありません。ポイントは『単機能で突破できるサービスと場所と顧客をいかに開拓できるか』にかかっていると思います。将来的に総合化を目指すということは重要でしょうが、短期的に勝負できる自社の『売り』となる機能は何でしょうか?
集中と分散、この2つを念頭におきながら、各社の成長戦略に米国3PL企業のエッセンスをご活用いただきたいと強く念じて、レポートを終わらせていただきます。

以上



(C)2002 Shigehiro Kan & Sakata Warehouse, Inc.

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