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第109号Schneider Electric Good to Great~グローバル・ロジスティクス(SCM)の方向性~(2006年10月12日発行)

執筆者 Karl Bougué
シュナイダーエレクトリック株式会社 輸送・外注管理 スーパーバイザー
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • フランス国籍、26歳。
    • 2004年、フランスToursのEcole Superieure de Commerce et de Management(ESCEM)にてSupply Chain Managementの学位を取得。(同校はフランスのエリート教育を行う高等教育機関で総称してグランド・ゼコール「grandes ecoles」と呼ばれている)
    • 2002年9月から2003年8月、広島大学で経済学部に留学後、2004年シュナイダーエレクトリック株式会社入社。
      現在に至る。(当時:日本シュネデールエレクトリック株式会社)

目次

*第11回 サカタグループ ワークショップ 講演をもとに編集

1.シュナイダーエレクトリックの歴史

  シュナイダーエレクトリックは、1836年にシュナイダー氏によって創業されました。
  その後、シュナイダーは、各国で電子機器の専門会社を吸収合併して来ました。例えば、フランスでは、メランジェラン社、モディコン社やテレメカニック社等です。その他には、アメリカのブレーカー製造会社であるスクエアD社等も吸収合併し、世界的な電気会社に成長してきました。

2.シュナイダー社の概要

  EPCglobal本社は、フランスのルエイユマルメゾンというパリ郊外に位置します。社員数は9万5千人です。
  2004年の売上は105億ユーロ以上です。2003年と比べるとプラス18%になります(買収した企業を含む)。シュナイダーのみではプラス10%でした。営業利益は13億ユーロ(約1800億円)。その純利益は5.65億ユーロになります。
  シュナイダーは売上の5.2%を研究開発費に使っています。25カ国に4500人の技術開発者がおり、2004年度は全世界で720億円を開発費として投入しました。また、日本では技術開発として約50人体制を取っています。フランスの全国平均は1.5%なので、他のフランス企業よりも研究開発費を多く使っていることが分かると思います。因みに、日本の平均は約3%程度だそうです。シュナイダーは将来の製品を作るために、研究開発費は非常に大切だと考えています。
  シュナイダーは世界130カ国以上で製品を販売しており、206の工場で製造しています。主な工場はヨーロッパ・フランス・ドイツ・イギリスですが、最近では中国の工場が増えています。日本にも1つ工場があります。これはデジタル株式会社であり、2000年にシュナイダーが吸収合併しました。販売拠点は世界に13,000あります。販売拠点が多いのは、お客様のニーズを把握するためであり、直ぐに営業が出来るようにするためです。
  また、シュナイダーの扱い品目は世界中で700,000品目であり、37,000仕入先、1,500の運送会社、206工場、124ロジスティクスセンター、130国での販売、100ブランド、そして出荷のライン数は3,100,000ラインあります(ライン数は受注数です)。

3.事業分野

  2つに分けられます。電力の送配電とオートメーションです。
  もともと、シュナイダーはこのビジネスから始まりました。1940年に世界で初めてコンダクターを発明し、その後、電力配送関係の製品を生産してきました。一般の配線器具のシェアは世界でNo.2 です。そして、1kV以下の製品(低圧機器)では世界でシェア№1です。
  1980~1990年位から、新しいマーケットであるオートメーションに進出しました。これはネットワーク設備であり、産業用制御機器は世界でシェア№1になりました。
  その他には、機戒を管理するための製品ですが、シュナイダーとしてもまだ新しいマーケットであり世界でのシェアはNo.3です。

4.シュナイダーの業績概要

  シュナイダーの国別の業績は、ヨーロッパが52%、カナダ、USAとメキシコで24%、アジアとオセアニア(オーストラリアとニュージーランド)で17.5%、その他(南アメリカとアフリカ)が6.5%です。アジアでは、まだ17.5%だけですが、トレンドを見るとアジアでの売上高が一番大きくなっています。去年はアジアの売上がプラス20%でした。
  製品タイプ別だと、受配電事業は63%、オートメーションは26%、新製品・新マーケットは11%です。オートメーションの分野は利益率が高いので将来的にこの売上を増やしたいと考えています。
  世界の社員数は、55%がヨーロッパです。これは、ヨーロッパに工場があるためです。次は、アメリカで21%、アジアが18%、その他が6%です。

5.国際的な経営陣

  組織図を説明します。現在の社長はMr.トリコワといい42歳です。22歳のときに入社しました。フランスの大企業の中で一番若い社長です。
  シュナイダーは世界を4つに分けています。北アメリカ、イベリア(スペインとポルトガル)、アジアとヨーロッパです。地域ごとに、顧客とマーケット、製品、技術とグローバル化、生産の各責任者がいます。然し、物流については国や地域は関係なくグローバルで考えています。

6.シュナイダーのヴィジョン

  シュナイダーの一番のヴィジョンは質の高い製品を作ることであり、21世紀のヴィジョンは、お客様に新しい電気の世界を提供する事です。それは、製品を作るだけではなく、その製品とサービスの提供も必要だと言うことです。
  何がお客様に対して大切かというと、お客様のニーズを理解する事、お客様に製品とサービスをオファーする事が一番大切です。お客様からは、技術は当たり前で付加価値のあるサービスが必要と言われています。

7.顧客のパフォーマンスに貢献

  電気製品は安全と使いやすさが大切です。そのためには、各国のお客様のニーズを理解しないとベストなサービスをオファー出来ません。だから、そのお客様のために、製品だけではなく製品の前後のソリューションをセットで提供しています。そして、お客様の工場のために、我々はパートナーや代理店や仕入先と共に完全なソリューションをオファーし販売しています。もう1つ大切なことはカスタマーサポートです。製品の使い方が難しくなってきていますのでお客様へのサポートが必要です。

8.用途に合わせたサービスの提供、価値の創成

  シュナイダーのお客様に対する新しいサービスの一つは、日本の物流基地であるサカタウエアハウスの倉庫にある全ての在庫を、ウェブサイト上で見る事が出来るというものです。お客様自身が、そのウェブサイト上で受注の問い合わせが出来、倉庫作業のどこまでが終了したか分かります。また、配達の際には、どこのターミナルにあるか等の情報を全てウェブ上で問い合わせする事が出来ます。それによって、お客様は配達に関する不安から払拭されます。
  また、ウェブ上でのオンラインカタログサービスもあります。お客様が自分のニーズに合わせて機械のスペックを入力すると、その機械に対してどんな製品が合うかを紹介する物です。それによって、お客様がカタログで探す作業を軽減することが出来ます。

9.従業員の能力開発

  やる気のある正社員育成に大切な事は、社員のモチベーション向上と、お客様のために、いかに高レベルの営業を行うかです。そのために、正社員1人あたり年間3日間以上のトレーニングが割り当てられています。例えば、日本では英語も用意されておりTOEFLやTOEICのトレーニングを行っています。また、毎年TOEFLとTOEICの試験を行なっています。

10.持続可能な社会への取り組み

  社会貢献事業としては、インドネシアの大地震の際に、かなりの量の電気製品を寄付いたしました。

11.私たちの4つのマーケット

  4つの大切なマーケットがあります。エナジー&インフラストラクチャー、設備&工場、ビルディング、自宅の4つですが、日本では最初の3つを展開しています。自宅関連の提案を行う予定はまだありません。
  例えば、エナジー&インフラストラクチャーとしては再生可能なエネルギーソースである風力発電や水力発電です。
  設備としては、電力発電から自宅まで全てシュナイダーの製品で提案可能です。
  もう1つ大切なのは工場です。食品、自動車関係や薬関係が主要マーケットです。
  もう1つのビルディング関係としては、マンションとか空港がターゲットになります。

12.シュナイダージャパン

  シュナイダーは1962年に初めて日本に事務所をつくり、1994年からシュナイダージャパンとして日本で始まりました。そして、2002年にデジタル社を吸収合併しました。
  シュナイダージャパンは、和泉電気や名古屋にある中立電気等の複数のパートナーシップがあります。シュナイダーの考え方はパートナーシップでお客様にソリューションをオファーする事です。
  本社は東京にあります。名古屋は第2レベルでのカスタマーセンター、そして、大阪にはデジタル社の工場と物流センター(サカタウエアハウス(株))があります。

13.ロジスティクスとしての使命

  シュナイダーのロジスティクスとしての一番の考え方や目的は、客先満足です。そのためには、お客様が信頼できるような納品日が大切です。ロジスティクスとしての提案は、個々のお客様に、例えばこの製品は1日で配達できます。香港で保管しているので1週間で配達できますと言うように納品日をオファーする事です。

14.受注センター

  基本的な考え方の一つはロジスティクス・テリトリーです。例えば、日本と韓国で1つのロジスティクス・テリトリー(LT)を構成しており、オーストラリアとニュージーランドでLTを構成しています。
  もう1つはサプライチェーン・プランニングであり、営業企画、予測、工場の生産計画です。その他にはパフォーマンス・インディケータがあります。
  各国の効率を比較するとき、同じパフォーマンス・インディケータを使わなければなりません。大切なことは、戦略はグローバルで考えているためスタンダードな仕事のやり方が必要だと言うことです。

15.サプライチェーン・ロジスティクス

  サプライチェーンのチームが国境を越えてスキルネットワークを持ち、各々が自分達のやり方を提案します。例えば、オーストラリアでは在庫経営に関して良い改善を出来たので、これを全てのアジアの国々に提案し、それをスキルネットとして全ての国々でやり方を合わせます。

16.客先満足とKPI

  客先満足とKPI(Key Performance Indicator)の中で一番大切なことはオンタイム・デリバリーです。これは、お客様の指定納期を守ることです。去年の結果は95.5%でした。2008年の目標は97.0%です。日本のお客様は納期に対して非常に厳しく既に98.0%を超えています。
  また、他の国と効率化を比較するために、売上に対する配送センターコストを算出し比較しています。
  そのほかには、お客様からのクレームデータを集めて本社に報告しています。
  もう1つ大切なことは在庫回転率であり、目標は年6回転です。
  その他の指標としてOTDC(On Time Delivery on 2nd Commitment date)があります。どうしても生産の問題があるときや品質に問題があるときには、お客様の指定納期を守れないため、お客様に第2の納期回答をしなければなりません。その第2の納期回答を守れたかどうかも確認しています。また、在庫切れの問題がある場合は、事前にお客様に報告しないといけません。お客様自信の生産計画がありますので、事前に配達トラブルが発生する事が分かる場合には事前に報告しています。このようなデータも集計しています。
  また、それぞれのお客様の物流管理の質問に関して、シュナイダーの回答に満足しているかどうかのデータも集めています。配達遅れの問題があるときには7つのプロセスで分けています。例えば、在庫切れ管理、クレームを受ける等です。また、日本で解決出来ない場合はアジアHQである香港の担当に連絡し確認しています。

17.輸配送

  仕入先の仕入先からお客様のお客様まで輸送について考えています。
  以前は、フランスの倉庫からアジアのそれぞれの国へ直接配達していました。つまり、フランスからインド、フランスからオーストリア、フランスから日本というようにです。然し、これでは管理がしにくいため、去年香港に国際倉庫をつくりました。
  この香港の国際倉庫の目的は、運送コストの削減とリードタイムの短縮です。以前、フランスから1ヶ月以上かかっていたものが、今では1週間で配送可能です。
  日本の場合で言うと、以前は、三重県にシュネデールの倉庫が2つあり、デジタル社も工場が1つと、倉庫が3つありました。これではフローがややこしかったという事と、コストが高すぎたために、2004年の夏にサカタウエアハウス(株)へ倉庫を統合しました。その中に、シュナイダーとデジタル社の製品をまとめ、香港から毎週海上コンテナで輸入されるようにし、また、デジタル社の大阪工場から毎日午前と午後に入荷するように改善する事で、フローを簡素化しコストを削減しました。

18.サプライチェーン・プランニング

  サプライチェーン・プランニングの考え方は、営業、営業企画、生産計画、完成品在庫を合わせてプランニングする事です。大切なポイントは、営業と営業企画から正しい予測が必要なことであり、それらを合わせて、在庫切れの管理、在庫切れのレベル、工場のキャパシティ、利用可能な在庫、生産計画を作成しています。そして、これらを統合し、営業企画、ロジスティクスと工場が1つのチームとして仕事を行う事で、お客様の納期を守れるよう努力しています。サプライチェーンのキーポイントは、戦略レベル、戦術レベル、業務レベルの3つのレベルで分けています。

19.在庫管理

  在庫管理は、外注の仕入先から顧客まで、全てのポイントで考えなければなりません。
  倉庫サイズによって倉庫呼称が違います。RDC(Regional Distribution Center)は5000㎡程の中規模倉庫を指し、SDC(Small D.C.)は営業所にあるような小規模倉庫の事を指しています。
  仕入先が納品遅れの場合もあります。この場合もお客様への納品が遅れるので、仕入先の在庫も確認しなければなりません。
  工場で大切なことは製造プロセスです。一番短い期間で製品が生産できるかどうかのプロセスを決めないといけません。また、工場と倉庫の間のリードタイムや情報が必要です。
  その他の重要な事はロジスティクス予測です。これは、システムに予測データを入れてから安全在庫を決め、発注方法とか在庫が続けるようになってから自動配送を決めています。そのため、正しい予測が非常に大きなポイントになります。在庫の責任者になると在庫のポリシーを営業企画と一緒に決めます。これら、在庫情報は全てシステムで管理されています。次に、営業企画のところでは製品のライフサイクルを管理しています。よくあることは、営業企画が発売完了日を決めたがロジスティクスに報告しないで廃棄品になってしまう事です。そうすると会社も赤字になってしまいますから、そのような情報の連携が大切です。

20.最後に

  シュナイダーのサプライチェーン・マネジメントとして大切なことは、情報の管理とコミュニケーションです。故に、営業企画、物流、生産の間のコミュニケーションが重要になります。お客様の納期を守るために、全ての部門は一緒に仕事し、情報交換を行い、在庫量を決め、お客様の納期に備えています。サプライチェーンは営業企画と製造の間の橋の役割をはたしています。我々が持っている在庫はお客様にとっての必要在庫です。お客様が今必要としている在庫を保管しなければならない。また、それをお客様に報告しなければならないのです。

以上



(C)2006 Karl Bougué & Sakata Warehouse, Inc.

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