ロジスティクス・レビュー

第10号SCMにおけるロジスティクス戦略を考える~ブロードバンド時代のSLM(サプライチェーン・ロジスティクス・マネジメント)~(2002年06月28日発行)

執筆者 大根田 秀雄    
富士通株式会社 コンサルティング事業部 担当部長
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1951年 千葉県市川市生まれ
    • 1975年 東京理科大学理学部応用数学科卒業
    • 1975年 富士通株式会社入社システム部門配属
    • 1988年 富士通システム総研(現、株式会社富士通総研)に出向
    • 1995年 富士通株式会社に復職
    • 1996年 第二システム事業部流通業ソリューション部の新設に伴い、同部部長に就任
    • 2001年 ソリューション本部コンサルティング事業部担当部長(リテイル担当)
      現在に至る。
    これまでの実績等 流通業における情報システム化構想立案コンサルティングをはじめ、各種業種パッケージ開発、カードビジネス/消費者ネットワークビジスの企画構想立案,コンセプト開発等に従事。論文・著書多数。

目次

 IT(ブロードバンドネットワーク) を核として、社会インフラが大きく変わろうとしている現在、ビジネスの要として注目され、実践されてきたSCMにも変革が求められています。あわせて、そのSCMを実のあるものにするために必要不可欠なものとして、新たなロジスティクス戦略の確立も求められています。本レビューでは、そうしたビジネス環境の出現において実践されるべきSCMのあり方について示すとともに、それを活かすためのロジスティクス戦略のポイントについて考察したいと思います。

1.ITのビジネスインパクトとビジネスにおける位置づけ

 いま、2005年を目処に世界最先端のIT国家を目指した「e-JAPAN計画」が進行しています。これは、所謂、電子政府化という行政業務の電子化という意味だけではなく、世界最高水準の高度情報ネットワーク形成と、その安全かつ信頼性の確保を実現し電子商取引の推進を図るという、今後のビジネスのあり方にとっても大きな影響をもたらす計画が推進されています。100Mbit/sを1000万世帯に、10Mbit/sを3000万世帯に普及させるという計画です。日本の総世帯数からみてもその9割近くを占めるものであり、企業ということで考えればほぼ100%といってもよい環境が整うと考えても良いのではないかと思います。

 そうした社会インフラ、ビジネス環境が整うということは、いつでも、どこでも安全、迅速、かつグローバルな情報基盤が確立されるということ、それは、企業にとってこれまでのビジネスモデル(対面中心の取引形態や、参入規制などによる制約等)を一新しえるアクセスパス、ビジネスパスを手に入れられるということを意味しています。ここで重要なことは、そうした環境になるという認識(受身的発想)をされるのではなく、そうした環境が手に入るのだということから、自らのビジネススタイルの変革を行うという、能動的な考え方をとらなければ意味がないということです。
 さらに、今後は、「あらゆる機会がビジネスの場である」という感覚を持つことが必要になりましょう。それは、取引相手(個人であっても、取引先であっても)も、好きな時に、好きなところから、好きなように(アクセスチャネル)、今、欲しい情報や、サービスを要求しえる環境を手に入れるということを意味しているからです。

よって、どのようなアクセスチャネルを、どのような形態(24時間化とか)で持つかということが、場合によっては、ビジネス上の機会損失を招きかねないことになるということです。どのようなIT装備を持つかによって、経営が大きく左右されかねない状況が出現するということです。経営へのインパクトといいますか、その選択(IT)に今、経営判断が求められるということの意味がここにあります。

2.新たな時代のSCM

 こうした環境は、流通ビジネス構造(SCM)そのものにも影響を与えることになると考えております。これまでのように、生産者から、メーカー、卸、小売、消費者といった川上から川下へ直線的に流れる構造ではなく、もっともエンドユーザに近い企業(接点を確立した企業)が、ビジネス構造の中心となり、その上流(川上)をコントロールしえる立場を獲得するという構図です。今、消費者起点のSCM、エンドユーザ起点のSCMの必要性が叫ばれている所以だろうと思いますし、この位置を獲得しえるか否かで、今後のビジネス上での利益配分までをも左右しかねないと考えております。
 新たな時代のSCM、それは、消費者を起点とした発想に基づき、これまでの企業利害を超えた枠組み作りを実践することであろうと思います。そこで、チャネル、物流、情報という3つの観点から、そうした取り組みの動向を見ておきたいと思います。

第一のチャネル変革という観点ですが、これは、とりもなおさず、経路の短縮、つまり中抜き論ということになります。川上中心の施策として取り組まれており、家電、化粧品業界や、デジタル商材関連(予約関連、写真、音楽、ソフト等々)業界などで推進が図られていくものと思います。
第二の物流観点は、中、下流層中心に取り組みが行われています。納入集約型といってもよいと思いますが、所謂、一括、共同物流(配送)という取り組みです。これは、卸、小売中心に展開が始まっており、今後ますますその比重が高まる物流コストの低減施策としてクローズアップされていくと思われます。
そして、第三の情報ですが、これは今CPFRとしてその実践が推進されようとしています。これまでも、EDI、CRPとして語られてきたわけですが、それらと根本的に異なることは、情報をキーとして、川下から、中、川上まで三位一体で事に当たるという点です。単なる、情報交換や、情報共有ということではなく、ビジネスプロセスの共有化をも含めた取り組みだと言えましょう。

このことは第一、第二の観点とも共通して言えることですが、今後のSCMに求められることは、これまでのように、単に営業との接点ということだけではなく、経営観点まで含めた全てのビジネスプロセスを共有していくことであり、それにより、相互の無理無駄は行わないという姿勢(割り切り)なのではないかと思います。そこに、その成功のポイントがあると考えております。

3.SLM(Supply-chain Logistics Management)の確立

 さて、いままで見てきましたように、ブロードバンド時代のビジネス環境や、SCMの新たな取り組みの姿を考えますと、そこに求められる物流の役割、位置づけは高まりこそすれ、低くなることはないと思います。
しかしながら、そこに求められる物流のあり方は、当然従来の姿とは異なるものが求められることになるでしょう。そのポイントについて、最後に述べておきたいと思います。

これまでの物流は、一社内の部門改善、または自社内での効率化を狙いとして構築、展開が図られてきたわけですが、今後は、新たなSCMに求められている点と共通ですが、企業間、業界間に渡る取り組みが求められるようになるということです。そこでは、ロジスティクスプロセス全体における機能の明確化、責任範囲の再設定化を行い、コスト改善、利益配分の最適化を目指すということになるでしょう。物流分野においても、企業間の枠を超えた全体の管理、コントロールの確立(SLM)が求められるということです。
 SLMにおいても、これまで同様、情報の共有化、モノの扱いの標準化、共通化をはじめ、オペレーションの拡充を求めるという点には変わりありませんが、その内容という点で、新たに取り組まれるべきポイントがでてきたと言えるでしょう。

情報共有という観点で見ますと、消費者起点のSCMを実現するとの観点からも、「顧客情報」を捉えていく必要性が高まっています。顧客特性(取引先特性)にあったサービスの創出のためにも不可欠な情報として共有化していくべきものと考えております。
また、オペレーションという観点では、予測、業務効率化(検品レス化)への寄与はもとより、新たな取り組みが求められています。それは、「決済」への関与です。これまでも、代引きといった業務代行は一部なされていたわけですが、決済インフラの整備拡充とともに、基本機能としての取り組みを考えるべきタイミングになっていると考えております。
さらに、今後は、社会的観点を意識した、環境という観点でのロジスティクス構築も求められていくものと考えております。「エコ・ロジスティクス」と呼ぶべき取り組みです。リサイクル物流、所謂、循環型物流の構築が不可避になっていくものと考えております。

 今や、ビジネスにおいては、「すみわけ」、「安定的取引」といった言葉は、死語になりつつありますし、「製販一体」という動きもさけて通れない流れだと考えております。そうした流れにあって、物流は要であり、「物流を制するものは流通を制する」と言っても過言ではないかもしれません。
流通ビジネス構造の要になる絶好のチャンスと言えましょう。それは、とりもなおさず、経営の判断が鍵となる事は言うまでもありません。

以上


【注】
  • CPFR:Collaborative Planning Forecasting & Replenishment
  • CRP:Continuous Replenishment Program



(C)2002 Hideo Ohneda & Sakata Logics,Inc.


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